◆Daisy◆ 5
白く水を弾くように艶やかな肌。
美しくついた筋肉。
引き締まった腹。
虎徹は上から順々にまじまじとバーナビーの身体を見つめた。
目線を下に降ろしていけば、バーナビーの少し開いた脚の付け根に、濃い金色の茂みに縁取られた彼のペニスがある。
そこは色の白いバーナビーにふさわしく、柔らかなふわふわとした金色の巻き毛に包まれて、鴇色をした茎と、その上の濃い桃色の形の良い頭を上品に揺らしている。
ごくっと唾を飲み込んで、虎徹はそこを眺めた。
男の股間を見て興奮するなど想像もしていなかったが、実際バーナビーのそこを見ても、同じ男だから気持ち悪いとかそんな風には全く思わなかった。
それより、目が引きつけられ、見ているだけでぞくりと表現しようのない興奮が身体を熱くしてくるのが分かる。
肩からバスローブを滑り落とすと、バーナビーはそれをベッドサイドに置き、それから虎徹の方に向き直った。
そのまま近寄ってきて、虎徹の肩に手を掛けると、ゆっくりと虎徹をベッドに押し倒してきた。
あれ、と思う間もなく、上からバーナビーのしなやかな肢体が虎徹の身体に重なってくる。
自分よりも少し体温が低いのか、バーナビーの肌はほんの少しひんやりとしていて、それでいて興奮しているせいか、しっとりと汗で湿ってバーナビーの仄かな体臭が匂ってきていた。
身体が重なると素肌同士が触れ合って、こそばゆいような総毛立つような甘い刺激が密着した部分から生まれる。
触れ合った部分がくすぐったく焦れったい。
もっと触れ合いたい、もっと密着したいという気持ちにせかされ、虎徹はバーナビーの背中に手を回してぐっと抱き締めた。
「どうですか、このまま続けて大丈夫ですか?」
柔らかな声でバーナビーが聞いてくる。
「あぁ、全然大丈夫みてーだ」
全然大丈夫だという自分に少し戸惑いながらそう答えると、バーナビーが深い碧色の瞳を細めた。
「ちょっと意外ですけど、嬉しいです…」
そう言って唇がふんわりと食まれる。
バーナビーの両唇で下唇を挟まれ、やわやわと噛まれる。
それからするるりとぬめった舌が虎徹の咥内に入り込んできた。
「ん……っ…」
ぴちゃ、と微かな水音がする。
自分の咥内でしている音なのだろうか、それが耳にダイレクトに突き刺さってきて、小さな音なのにとても大きく頭の中で反響する。
暖かな自分と同じ体温の粘膜に触れ合っているだけで、ぞくぞくと堪えようのない興奮が背筋を駆け上る。
キスをしているうちにたまらなくなって、虎徹はバーナビーの身体を抱きすくめたまま、体勢を入れ替えてバーナビーを仰向けにした。
今度は自分が上からバーナビーを抱き締める形になる。
真っ白いシーツにバーナビーの金髪が広がって、いつもは隠れている額が露わになる。
そうすると眼鏡が無いのも相俟ってやや雰囲気の違う、妖艶でそれでいて無垢な美しさを感じさせる彼が現れた。
「すぐに挿れても大丈夫ですよ?準備してありますから」
初めての虎徹に気を使っているのだろう。
バーナビーが自分からそう言うと、虎徹の頭の後ろに手をやって髪を撫でながら、ゆっくりと足を開いてきた。
開かれる足に沿って虎徹が目線を降ろすと、バーナビーが少し頬を染める。
「見ない方がいいですよ。見ると萎えちゃうかもしれないです。男ですからね…」
「いや、ンな事ねーよ、大丈夫だ。つうか、見てた方が興奮するよ。…自分でもびっくりだ…」
「…そうなんですか…?それならちょっと安心しました…」
そう言ってバーナビーが虎徹のペニスにすっと手を這わせてきた。
しなやかな指でやわやわと握り込まれる。
あっという間に、元々勃起していたソコが更にはち切れんばかりになった。
女性の場合なら、もうここまで来たらすぐに挿入してしまう所だ。
が、さすがに相手が男となると虎徹は逡巡した。
そんな虎徹の逡巡を見て取ったか、バーナビーが握り込んでいた虎徹のペニスを自分のアナルにそっと押しつけてきた。
亀頭の先端の敏感な部分が、ひくひくと蠢く粘膜に触れた、と思った途端、虎徹はもう我慢ができなかった。
「…悪い!」
そう言ってバーナビーに導かれるままにペニスをぐっと挿入する。
「………っ!!」
さすがに衝撃が来たのだろう。
その瞬間、バーナビーはきゅっと眉を寄せ、目を閉じた。
バーナビーのソコは虎徹の硬い性器を歓迎するかのように、誘い込むように粘膜が蠢く。
柔らかい粘膜を掻き分けて内部へと進めれば、熱く溶けそうな腸壁に包まれる。
一気に埋め込んでしまうと、もうそこからは虎徹も自制が聞かなかった。
こういう性的な接触を他人と持つのも久しぶりだし、ここの所疲れていて、自慰もしていなかった。
そういう肉体的なものに加え、自分でも不思議なほどの激烈な興奮が視覚から呼び起こされる。
自分の同僚で相棒で同じ男だと言うのに、こんなに興奮できるなんて、虎徹自身も不思議だった。
しかしバーナビーを見ていると、どんどんと身体が熱くなる、
「あっ…んんっっ……ぁ、す、ごく、いいっ、ですっ…」
興奮に任せて注送すればバーナビーがそれに合わせて腰を振り、眉を顰めあえかな声を上げてくる。
真っ白い身体が全身桜色に染まり、色の薄い乳首がぴんと立ち上がって目の下で動く様。
どこか苦しげながらも明らかに快感を感じているらしい、バーナビーの表情。
そんな顔を見るのも初めてだった。
瞳が潤んで目尻からは涙が零れ、半開きになった赤い唇から桃色の舌が見え隠れする。
白い喉が淫靡に蠢き、すがるように伸ばしてくる手と自分を捉えて離すまいと絡みついてくる彼の内部。
どこを取ってもどこを見ても興奮を誘われるばかりで、虎徹は我を忘れてバーナビーを貪った。
はっきり言って自分の快感に無我夢中で、バーナビーを労ったり彼が気持ち良い用に気遣ったりとか、そんな余裕はなかった。
女よりもずっとずっと狭くきつく絡みついてくる内壁に、すぐにでも絶頂に達してしまいそうになって奥歯を噛み締めて耐えるが、それでも堪えきれない。
「……悪い!!」
これ以上我慢ができなくなって一言声を掛けると、虎徹はラストスパートを掛けた。
「いっ、あっあっ、は、ぁ――あっ、すごく、いいっ、…あ、おじ、さんっっ、す、ごいっっ!あ、あ――っ!」
バーナビーが普段だったら絶対出さないような声を出してきた。
その声を聞いた途端、身体の内部がかっと熱くなって、爆発するように全身の血が一カ所に集まった。
バーナビーの奥深く更に直腸を押し広げるようにして、虎徹は熱い白濁を放出した。
久しぶりの、しかも激しすぎる射精にすっと目の前が暗くなって、どこかに落ちていくようだった。
虎徹はそのままバーナビーの身体の上に倒れ込んだ。
はぁはあと全身で息をしながら、暫く射精の余韻に浸る。
たとえようもなく心地良い。
セックスがこんなに純粋に気持ち良かったのなんて、もしかして思春期の頃以来なんじゃないか、と思うぐらいだった。
漸く顔を上げると、すっかり自分の事しか考えていなくて自分の快楽だけを追っていたことに気付いて、バーナビーを労るようにそっと覗き込む。
バーナビーもはぁはぁと全身で息をしてくたりとなっていたが、ゆっくりと顔を上げて間近に視線を合わせてきた。
緑の目が快感に蕩けて、柔らかく潤んでいる。
「っと、重いか…」
バーナビーの身体から刺激を与えぬように慎重にペニスを引き抜くと、虎徹はベッドの上に身体を横たえ、バーナビーを抱き寄せた。
バーナビーが大人しく虎徹の腕の中に入ってくる。
はっきり言って虎徹は些か驚いてはいた。
全く抵抗もなく平気で男とセックスが出来た。
しかもものすごく気持ちが良かった…。
そのことに虎徹は半ば呆然としていた。
バーナビーがふっと微笑んで、気怠く蕩けた視線を送りながら、虎徹の唇にやんわりと唇を触れ合わせてきた。
「すごく、良かったです…」
しっとりと濡れた声でそう言われて、思わずまじまじと相手を見つめる。
「お、おお、俺もすっごく良かった…」
「うまい具合にできたみたいですね…?」
「…ホントだな…」
「おじさんが大丈夫なら、これからおじさんとセックスしてもらって、いいですか…?」
緑の目が愛らしく揺れる。
お願いの言葉を耳にすると、それだけでも虎徹は身体がふたたび熱くなってしまうのを感じた。
いい年なのに、どうしたんだ一体、と思うぐらいだった。
「おお、もちろんだぜっ……」
思わず力強く言ってしまって、はっと恥ずかしくなって頬を赤くする。
バーナビーが瞳を細めながらくすっと笑った。
「ありがとうございます。助かります……」
「いやいや、俺だって、その…こんな気持ちイイセックスできるならもう喜んでっていうかな…」
本当に気持ち良かった。
男とのセックスがこんなにいいとは、新境地だ。いや、でも―――。
虎徹は考えた。
男だからってわけじゃなくて相手がバニーだから気持ち良かったのか?
どうなんだ?
その辺は分からないが、とりあえず目の前の若者が可愛くて十分にセックスの対象になり得て、しかも気持ち良くて最高なのだけは分かった。
なんだろうなこれ…。この年になってこれって…
この、せき立てられるような気持ちとか、わくわくするような感情とか…
でも、なぜか嬉しかった。
身体も満たされていたが、心もなぜかわくわくとしている自分に気付いて、首を傾げつつ、吸い寄せられるように虎徹はバーナビーに再度口付けをした。