◆オジサンのバレンタイン☆デー◆  5





「虎徹さん……さっきの言葉、本当ですよね?」
不意にバニーが俺の言葉を遮るようにして言ってきた。
「………え?」
「さっきあなたが言った言葉です。僕の事、好きだっていう言葉…」
「………う、うん…」
バニーがすげぇ真剣な顔をしているので、俺は困惑した。
冗談ですませようって言うんじゃねぇのか?
だとしたら……もしかして、怒ってるのか?
……怒ってるとしたら、どうしよう。
どうしよう、謝った方がいいのか?
心臓がばくばくする。
「それはその、冗談じゃねぇよ。俺は本当にお前の事が好きなんだ。でもほんと告白してすっきりしたからさ、もうこれからは言わないし態度にも出さないようにするし、な、もし怒ってるなら、ごめんな…?」
「虎徹さん……顔を上げて?」
バニーの落ち着いた低い声が聞こえた。
やっぱり怒っているんだろうか。
急に怖くなってしまった。
おどおどとして目を上げる。
(……………)
バニーは怒っていなかった。
そうじゃなくて、笑っていた。
いつもハンサムで格好いいけれど、今はそれ以上に笑顔が眩しくて本当に綺麗で、一瞬俺は呆けてしまった。
「怒ってなんかいませんよ、虎徹さん…。そうじゃなくて、嬉しいんです」
――え ?
嬉しい?
嬉しいってどういうこと?
頭の中が混乱する。
「虎徹さんはなんか誤解しているみたいですけど、僕、あなたと同じ気持ちなんですよ」
「……ん?」
「だから、虎徹さん……あなたのことが好きなんです、僕」
「……え?………マジ?」
突然思ってもみなかったことを言われて、俺はきょとんとした。
バニーが俺の事を好き?
まさか…!
自分はバニーの事が好きで、チョコを作ってこうして告白までしてみたけれど、その反対のバニーが俺の事を好きだとかそんな事、今まで考えたことも何も無かった。
そんな事があるはずがないからだ。
「バニーちゃん、俺の事、やっぱりからかってる?」
思わずおずおずとそう聞いてしまった。
バニーが肩を竦めて眉尻を下げた。
「虎徹さんって結構疑り深いんですね。…違います。真面目に言ってるんです。僕、あなたの事が前からずっと好きでした」
「好きってその、……俺の言ってる好きの意味、分かる?」
「えぇ、分かりますよ。僕と同じでしょ?こうしてあなたにキスをして抱き締めて…そんな事がしたいっていう好きですよ」
バニーの緑の瞳が俺をじっと見つめてきた。
見つめられて思わず頬がかぁっと熱くなって、俺はおどおどと目線を逸らした。
――どうしよう。
なんか頭の中が混乱してよく分からない。
「キスをして抱き締めて、それで……それ以上のことがしたいっていう気持ちです。虎徹さん…」
「……うそ……だろ?まさか……って、おまえ。…俺、こんなおじさんだぜ…?冗談…」
「冗談なんかじゃないですよ、虎徹さん。あなたが好きなんです。好きだって言う気持ちに相手の性別も年齢も関係ないでしょ?」
バニーが掠れた声で囁いてきた。
いや、その、バニーが言ってる事は分かる。
分かるけど、でも、……本当なのか?
俺の空耳、とかじゃねぇのか?
でも、バニーは俺を抱き締めてる。これは、嘘じゃねぇ。
だったら、好きって言葉だって、嘘じゃねぇ、って事か。現実なのか…?
「……こうしてあなたを抱き締めているだけで興奮して、僕、……ほら…」
バニーがそう言って股間をぐりっと俺の腰に押しつけてきたので、俺はびくっとした。
バニーのそこはボトムの中ですっかり硬くなっていた。
俺の腰骨にバニーのソレが当たって、ぞくぞくっと背筋が震えた。
やばい…。
じぃんと甘い疼きが走った。
ぞくっとして俺も思わず自分の股間が変化するのを感じた。
「バニィ……」
思わず興奮の滲んだ変な声を出しちまった。
「虎徹さん…」
バニーの声もいつもと違った。
興奮を抑えかねて困ってるっていう声だった。
その声を聞いただけで腰になんとも言えない痺れが起こる。
「……や、…ァ…」
噛み付くようにキスをされた。
バニーの舌がぬるっと俺の口の中に入り込んできた。
ぬるぬると口の中で蠢いて、ざらりと舌同士を擦り合わせてきた。
「ぅ……ッ…」
ちゅうっと吸われて思わず目を閉じて、俺はバニーの首筋にしがみついた。
頭の中はまだ、バニーの言葉の意味の整理がついてない。
本当なんだろうか、バニーが俺の事を好きだなんて。
そんな、……まるで俺が自分の頭の中でそうだったらいいな、とか、まぁ夢だよな、とか考えていた展開じゃねぇか。
そんなに都合良く現実が運ぶはずがない……。
でも、バニーはそう言った。
俺にキスをした。
抱き締めてきた。
バニーが興奮している。
……たまらない、俺も興奮しちまった。どうしよう……。
身体が熱い。息が荒くなる。
強請るよに舌を伸ばして、バニーの舌に擦り合わせる。
無意識に股間もバニーの腰に擦りつけていた。
「虎徹さん……っ、そんな風にされたら我慢できなくなっちゃいますけど、……いいんですか?」
唇を離して、バニーが低い声で囁いてきた。
え、どうしよう。
これ以上の事、するつもりなんだろうか…。
これ以上と言ったら……。
―――勿論、どんな事をするかは分かっている。
でも、したことはない。
痛いんだろうか。分からない。
こんなおじさんの裸とか見せて、大丈夫なんだろうか。
もし気持ち良くて喘いだらどうしよう。気持ち悪いよな……。
もし痛くて痛くて涙とか出ちまったらどうしよう。バニーに悪いよな……。
なんだかいろんな気持ちがぐちゃぐちゃに浮かんできて、訳が分からなくなってきた。
――あぁ、もう、……考えるのは無しだ。
本能の赴くままに行動しちまえ…!
俺はバニーを見つめて自分の方から唇を押しつけた。
「俺だって、こんなに興奮してんだぜ、バニー。お前の言葉が嬉しくて、なんかもう訳分かんなくなっちまった。バニー、……大好きだ…。……お前、本当に俺の事、好きなんだな?」
「えぇ、きっと、あなたが僕の事を好きになる前から好きだったと思いますよ?」
「は、嘘だろ、そりゃ…」
「嘘かどうか、身体に教えてあげましょうか?僕があなたの事をどんなに欲しかったか、あなた、気が付いていなかったでしょ?まぁ僕も、絶対あなたには見せないようにしてましたからね…」
(うゎっ…!)
身体が不意にふわっと宙に浮いた。
やべぇ、お姫様抱っこされてんのかよ…!
思わずバニーの首筋にしがみつくと、バニーがそのまま階段を上がって、ロフトのベッドに俺を降ろした。
うわ、と思う間もなく俺の気持ちが追いつかない間に、バニーが素早く行動を起こした。
俺の着ていたTシャツと短パンをあっという間に剥ぐと、バニーが着ていたジャケットやズボンも乱暴に脱いで床に投げ捨て、俺にのし掛かってきたんだ。
いつものバニーじゃなくてまるで別人を見ているようで、俺は息を飲んだ。
こんなに荒々しい行動をし、感情を抑えかねているバニーを見たのは初めてだった。
いや、感情を抑えられず爆発させているバニーを見た事は、何回かある。
元々バニーは感情表現が激しくて、普段抑えている分爆発するとすごい。
でもそれが自分への愛情という形で向けられてくるのを見たのは、初めてだった。
「あっ…は、ァっ、やッッ!」
強く抱きすくめられて全身がぞくぞくっと震えた。
……どうしよう。
バニーがいつものバニーじゃなくて、初めて見る男のようだった。
でも気持ち良い。
気持ち良くて、抱き締められて全身が蕩けちまって、ふにゃふにゃになっていくようだった。
――すげぇ。興奮している。
その証拠に、俺のペニスなんかもうびんびんに勃ち上がっちまって、こんな勃起したペニスをバニーに見せるのも初めてで、どう考えても恥ずかしい。
隠せよ、と思うのに、でもそんな事よりも興奮して気持ち良い方が勝っちまって、俺はそのペニスをバニーのペニスに擦りつけていた。
バニーのなんか、……もう、凄かった。
ヤツの勃起したのを見たのも初めてだった。
生唾が口の中にわき出ちまって、それをごくりと飲み込む。
目が、離せない。
……でかくて美味そうで、硬くびくびくして、すげぇ。
目の覚めるような綺麗な桃色をしていて、見ただけで俺はぶるっと全身が震えちまった。
どうしよう。


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