◆すれ違いあっちこっち◆ 4
「あ…んっバニーちゃん、ここっ…こっちも、…だよな?」
ペニスをいじることで快感が生じるのだろう、虎徹が切なげに眉を寄せ小さな喘ぎを漏らしながら脚を大きく開いた。
すらりとした引き締まった細い長い脚が開く。
引き締まった色の薄い内股と中心の黒い茂み、そこからそそりたつ濃い色の艶々としたペニス、その下で形良く膨らんでいる陰嚢が見える。
更にその下は虎徹が意図的にだろうが尻を少し浮かせてきたので、バーナビーの目には可愛らしく揃った襞を窄ませている、ミルクココアのような色をした肛門も見えた。
胸がどきん、と跳ねて、バーナビーは心臓が喉元から飛び出てしまうような気がした。
虎徹のそこを見るのは勿論初めてだ。
妄想の中ではバーナビーは自分のペニスをそこに突き立てては彼をゆさぶって快楽に泣かせていたものだが、さすがに夢の中でも虎徹のアナルを実際に見るという場面は無かった。
想像がつかなかったというのもある。
なんとなくぼんやり、ぼやけたままのアナルに自分のペニスを挿入するぐらいの妄想だった。
それが実際リアルに目の前に晒け出されると、想像など及びもつかない程そこは淫靡で可愛らしかった。
よく見ればひくひくと蠢いて自分をまるで早く欲しい、と言っているようだ。
食いつくようなバーナビーの視線に気が付いたのか、虎徹がくすっと蠱惑的に笑った。
はっとしてバーナビーは我に返ると頭を振って虎徹の方ににじり寄った。
こういう風に疑いもせずに積極的に誘ってきている虎徹ではあるが、実際には自分たちは何の関係も無く、当然セックスもキスもした事が無い。
虎徹の中では自分たちは何度もセックスをしているから当然アナルに挿入する事も容易だと思っているかもしれない。
が、このまま自分が挿入したら虎徹はかなりの痛みを感じるはずだ。
やや狼狽してベッドサイドの引き出しから、いつか使えたらと思って用意しておいたローションを取り出す。
戦慄く手で蓋を開けてそれを指に垂らす。
人肌に温めてとろりとなった指をゆっくりとバーナビーは虎徹のアナルに近づけていった。
ぴた、とアナルの襞に指をつけると、指が彼の皮膚を感じてぴりぴりと電気が走るような気がした。
「ぁ……っんんっ…バニーちゃん、っ…焦れったい、入れて…?」
そう簡単に入れろと言われても、ここは慎重にしなければ。
心臓がばくばくと破裂しそうだった。
「はい、虎徹さん…」
表向き淡々と返事をしながらも、バーナビーは震える指をゆっくり虎徹のアナルに挿入した。
「ぁ…んっ!」
弾力のある筋肉の輪が指をきゅっと締め付けてくる。
そこは指を蕩かすほどに熱く濡れて、やわやわと指を締め上げてきた。
指先が痺れ、その甘い痺れが瞬く間に股間にダイレクトに突き刺さって、バーナビーのペニスはすっかり勃起した。
慎重に中を探りながら指をゆっくりと埋めていく。
「ぁ…あっ…」
虎徹が眉を寄せ、切なげな声を上げる。
痛みは感じていないようだった。
――どうしよう。
こんな……こんな事、本当はしたことがないし、彼の反応だって実際に見るのは初めてだ。
けれど、慌てたり、いかにも初めてです、という態度を見せたら、ばれてしまう。
もしかしたら催眠が解けてしまうかも知れない。
こんな所でそんな事態になったら、とんでもない。
バーナビーは必死で平静を装いつつ、人差し指を根元まで埋め込むとゆっくりと抜いた。
「ぅ……んっ…っ」
虎徹がくぐもった呻きを漏らす。
眉をきゅっと寄せて目を閉じ、睫を震わせ少し唇を歪めている。
左手で虎徹のペニスを握り締めると、バーナビーはその左手を上下に動かし始めた。
「ぁ……あ、…んっ…。す、げぇ…っバニーちゃん、あっ…――っっ、俺っ、もっ!」
実際には虎徹はどのぐらいこういう事に慣れているのだろうか。
どのぐらい弱いのだろうか。
感じているのだろうか。
分からない。
虎徹の様子をじっと観察しながらバーナビーは左手でペニスを扱き、右手の指をもう1本増やしてアナルに埋め込んだ。
腸粘膜を擦るように指を入れては前立腺があるべき部分を探る。
指を入れて内部で少し折り曲げる。
粘膜越しにこりっと指に当たる器官を見つけ、バーナビーはそれをくりくりと擦ってみた。
「ひぁっ!!あ、あっあっ!そこっ、うっっっ!」
途端に虎徹が高い声を上げながら全身を突っ張らせる。
指が千切れそうに成る程強く締め上げられ、その下の彼のペニスがぐぐっと脈打つ。
(ここか…)
途端に自分もどきどきして、身体がかぁっとなる。
どうしようか。
でも、彼が乱れるところがもっと見たい。
「虎徹さん、イっていいですよ…?」
そう言いながら右手の指を3本に増やして、慎重にアナルに埋め込む。
痛いかと思ったが、痛みを感じている様子は無いようだった。
ゆっくりと指を差し込めば、指に合わせて肛門が柔らかく綻ぶ。
とろとろとしたローション塗れになったその穴は、鮮紅色の粘膜をバーナビーに見せつけながら濡れ光り、蠢く。
視覚と手の先の感覚、それから彼の息づかいや喘ぎ、それらの刺激が相俟って、バーナビーは目の前が眩むほどの興奮を覚えた。
興奮のままに顔を下げて虎徹のペニスの先端、ぬるぬると濡れた丸い亀頭をぱくりと咥えこむ。
「うぁっ!」
虎徹が細い声を上げ、括約筋がきゅっと締まった。
アナルを押し広げるように指を進め、こりっとした部分を3本の指で交互に抉ってやる。
同時にペニスを搾るようにしながら鈴口に舌先を差し込んで吸い上げれば、
「う…あ、あぁっっ!」
虎徹の全身がびくびくっと痙攣し、彼が切ない甲高い声を上げながら達した。
口の中に熱い生臭い粘液が流し込まれ、喉奥を叩く。
ごくり、と飲み込めばそれは男の精液そのもので、決して気持ちの良いものではなかったが、虎徹のだと思うとバーナビーには途轍もなく甘い味に思えた。
「や、も、もう…バニーちゃん、俺……も、気持ち、よくて…、ナカに、バニーちゃんの、欲しい…」
虎徹がとろりと濡れた琥珀色の瞳を瞬いて、甘えるようにバーナビーを見た。
震える手を差し伸べてバーナビーの頬を撫で、バーナビーの唇から白い粘液が零れ落ちているのを目にしてふっと笑う。
艶やかな笑いだった。
赤い唇を舌が舐めて、舌なめずりでもしているようだ。
くらくらした。
もう、我慢できない、と思った。
息を詰めて立ち上がる。
バーナビーの動作で次に彼が何をするか分かったらしく虎徹が口元に更に笑みを浮かべながら、脚をゆっくりと開いた。
バーナビーの頬を撫でていた右手で、陰嚢を掬い上げ、その下、ローションに濡れそぼりすっかり解れたアナルを見せつけるように人差し指と中指で肛門を開いてきた。
「………虎徹、さん」
虎徹がそんないやらしい仕草をするなど、全く予想していなかった。
あまりにも予想外で、想像もしていなかった彼の痴態に頭の中が沸騰する。
もうほんの少しも我慢できなかった。
バーナビーは虎徹にのし掛かるようにして彼の膝裏を掴んで引き上げると、露わになった濡れたアナルに、硬く熱い砲身を押し当てた。
「…………っ!!」
一瞬の間を置いて、一気にズブズブ、とアナルを貫いていく。
「あ゛ぁぁぁ、っ、ばに、ちゃんっ…や、ぁ…い、たぁっっ!」
虎徹が顎をがくん、と仰け反らせて、喉奥から絞り出すような悲鳴を上げた。
いかに彼が催眠術によってこの行為に慣れていると錯覚していても、身体は正直なはず。
今まで一度もアナルセックスをした事のない身体は、ぶるぶると震え、内股がきゅっと引き攣る。
もしかして、この経験した事のない痛みによって、彼の催眠が解けてしまうのではないか。
バーナビーは一瞬そういう恐れを抱いた。
が、このこの期に及んでそう思ったからといって、もうこの勢いを止める事など出来ない。
虎徹の引き締まった太腿を指の痕がつくぐらい強く掴んできつく二つに折り曲げると、バーナビーは己の猛りきった凶器を深々と根元まで突き刺した。
「――ぁ、あ、あっ……っっっ!バ、ニ、ちゃんっ…あーっっ!」
切れ切れに、今まで一度も聞いた事のないような高いトーンの声が耳に響く。
こんな声を彼が出すなんて。
驚きと共に、堪えようのない興奮が一気にバーナビーを包んだ。
今こうして、自分は現実に虎徹を貫いている。
夢でもなんでもなく。
自分の身体の一部分が確実に虎徹の熱い体内に侵入している。
その衝撃によって彼が悲鳴を上げ、身体を震わせ自分にしがみついてきている。
繋がっている。一つになっている。
堰を切ったように感動が押し寄せてきた。
「虎徹さんっ……!!」
虎徹の体内に入った部分が溶けて、原型を留めずとろとろになっていくようだった。
それでいて、そこは硬くびくびくと脈動して、虎徹の柔らかな粘膜を押し広げ抉っているのも分かる。
熱く濡れて纏わりつく腸壁の感触に、バーナビーは目の前が眩んだ。
本当に今、自分は彼を抱いている。
自分の腕の中で身悶えよがり、自分を受け止めて喘いでいる彼がいる。
腰をぐっと回せば、彼が、あぁ、と眉を寄せて呻きながら、自分の首に両手を巻き付けてしがみついてくる。
耳元に熱く掠れた吐息と荒い息づかいが聞こえる。
彼の興奮した汗の匂いがする。
「や、ぁ――あ、っ、俺、もっ、なんかっっ!」
虎徹がいやいやをするように顔を振りながら、鼻に掛かった声を出してきた。
ズクンと腰が疼いて、バーナビーは顔をしかめてその衝動をやり過ごすと息を詰め、虎徹の脚ごと身体を抱き締めながら律動を開始した。
「ひあっ、あーっっ…ァ…やっ…だ、めっ…す、げっ、死ぬっっ!」
初めてとは思えない蕩けた反応だ。
催眠で、脳の中まですっかり作り替えられているのだろうか。
身体はきっと痛みを覚えているだろうに、その痛覚が脳細胞に到達する時に快感に変換されているのだろうか。
焦点のぼやけた琥珀色の瞳が潤んで涙の膜が張り、それがふるふると震えて零れ落ちては頬を伝っていく。
――可愛い。
自分の愛撫に答えて涙を流す瞳も。唇を噛み締める様子も。
噛み締めても堪えきれずに声を上げては顔を振る様も。
ぶるぶると細かく震える脚も、必死にしがみつく腕も。
全てが愛らしくどうしようもないほど興奮させられる。
もう少し彼の狂態を見ていたかったが、無理だった。
もう、自分も限界だった。
ずぶっと腰を進めてぐりっと回せば、虎徹がきゅうっと括約筋を締めてくる。
「ぅ……っっ!」
その刺激にバーナビーは一瞬呻いた。
腰が抜けるほどに勢い良く、情熱の奔流がペニスからほとばしり出る。
「………っっ…っ!」
その勢いを腸内で感じ取ったのだろう、虎徹が身体を強張らせバーナビーにしがみついてきた。
「虎徹さん……」
まさか、彼がこんな風に自分に抱かれるとは………。
事が終わっても、まだバーナビーは自分が都合の良い夢を見ているのではないかと、……信じられない気持ちにただただ圧倒されるだけだった。