◆すれ違いあっちこっち◆ 7
「んっ……んんっ…」
舌が積極的に絡まってきて、それだけでもくらくらする。
我慢できなくて深く唇を合わせながら、バーナビーは虎徹のシャツのボタンを外し、胸に手を這わせた。
虎徹が切なげに瞳を揺らし、股間を絶妙に擦り合わせてくる。
琥珀色の瞳が、まるで水面が揺らめくように濡れて光って自分を見上げてくる。
ぞくり、と全身が震えた。
こんな蠱惑的な目で見つめられて、平常でいられるわけがなかった。
どうしてこの人はこんなに色っぽいのだろうか。
無意識な痴態なのだろうか。
誰にでもこんな瞳を向けるのだろうか。
「……虎徹さん…っ」
込み上げてくる激情を抑えきれず、虎徹を背骨が折れる程に強く抱きすくめる。
シャツのボタンを外すのももどかしく、殆どボタンを毟り取るようにしてシャツをはだけさせると、バーナビーは虎徹の胸にむしゃぶりついた。
「……ひぁっっ、バニー、ちゃん、ちょっとっっ!」
虎徹が上げる狼狽した声も、自分を煽る起爆剤にしかならない。
股間が熱く火照り、身体中の血が其処に流れ込んでいく。
くらっとして目の前が暗くなって、貧血に襲われるような気がした。
無我夢中で乳首を舐め、ねぶって吸い上げる。
「や、ぁっっ…っいたっっ!」
虎徹が身を捩って逃げようとする仕草にさえも煽られる。
手を下ろして虎徹のズボンのベルトを乱暴に外すと、下着毎一気にずり降ろす。
「うわっっ!」
驚いた声を上げて虎徹が身体を強張らせるのにも委細構わず、バーナビーは露わになった虎徹の性器をぎゅっと握り込んだ。
「――ひっっ!」
喉奥で締め上げられるような声を上げ、虎徹が喉元を晒して仰け反る。
顔を上げて、その表情や赤く腫れた乳首、震える肌を見下ろすと、自分もぞくぞくと全身に震えが走った。
はぁはぁと猛獣のように息を荒げて、虎徹の膝に絡まっていたズボンを引き剥がす。
下半身を全裸にさせてぐいっと両足を広げさせ、膝裏を掴んで折り曲げれば、彼の密やかに奥まったアナルがバーナビーの眼前に晒け出された。
其処はココア色に可愛らしく窄まっており、皺もなく張り詰めた陰嚢と、その上の半分勃起したペニスと、二つの器官の下で、ひくひくと時折ひくついている。
見た途端、頭の中が沸騰した。
ぶわっと一気に身体が火照り、全身が瘧にでもかかったかのように震える。
ごくりと無意識に唾を飲み込んで、バーナビーは血走った目を周囲に走らせた。
自分が飲んでいたワイングラスを引き寄せ、ぐっと口に含むと、その口をアナルへ押し当てて、ワインを肛門の中へ注ぎ入れるように流し込んでいく。
「ひぁっっ、あ、あっ、――バニー、ちゃん、や、なんか、あついっっ!」
ワインのアルコール成分が直に腸粘膜から吸収されて、即座に虎徹の脳神経へと伝わったのだろう、虎徹が狼狽した声を上げた。
「やっ、な、んか、熱いってっっ…あ、あっ、変になるっ!」
肛門の襞全部にワインを染みこませ、周囲も濡らして顔を上げる。
ひくひくと蠢くアナルは開いたり閉じたりしている。
開いた時に垣間見える紅色鮮やかな腸壁が、ぬめぬめと光って蠢いてバーナビーを誘ってきた。
「………っ!」
その強烈な誘惑に、勝てるはずもなかった。
息も吐く間もなく、バーナビーは自分のズボンのベルトを外し下着の中から既に勃起しきっているペニスを取り出すと、ひた、とワインまみれのアナルに押し当てた。
虎徹の腰骨を痣がつくほどに強く掴みながら、容赦なく一気に、柔らかな粘膜に包まれた器官へと自分の凶器を突き入れていく。
「――っ、っっ、ぁ、―あぁぁっっっ!!」
ぐん、と背中を弓なりに反らし、ソファをぎしぎしと軋ませて、虎徹が喉を嗄らして叫んだ。
グチュッと粘膜同士の擦れ合う音が響く。
今日で、虎徹とセックスをするのは2回目だ。
十分にほぐさないと虎徹が痛いだろうという事は分かっていたが、堪えきれなかった。
深々と根元まで隙間無くペニスを埋め込んで、そこで漸く息をする。
はぁはぁと胸を膨らませて息をし、酸素不足でくらくらしていた脳を立て直す。
「…ぁ、あ…バニーっ……も、俺っ……」
自分の身体の下で、虎徹が弱々しく呻く。
可哀想に、と一瞬思った。
が、それよりも、瞼を固く閉じ長い黒い睫を震わせ、半開きの唇から涎を零して呻いている彼の顔に、情欲が更に猛った。
ぐっと腰を引いて、ペニスが殆ど抜け落ちてしまうぐらいに引き抜けば、ワインと腸液に濡れた自分の性器に捲り上げられるようにして鮮紅色の粘膜がやわやわと蠢く。
腰を撓めてずぶ、と突き入れれば、身も世も無いというように虎徹が震える。
セックスをしてこんなに興奮するとは、とバーナビーは今更ながらに驚いていた。
今まで、複数の女性とそれなりに経験を重ねてきたけれど、いつもセックスをしながらどこか冷めていた。
相手の女性のよがる姿や喘ぐ声を聞いても、ある程度は興奮するものの、それだけだった。
セックスが終わってしまえば、もう相手の顔も見たくなかった。
そんなセックスしかしてこなかったのに、今、信じられないほどに興奮している自分がいる。
「虎徹さんっ、…も、イきます…っ!」
彼の身体を揺さぶりながら数度抜き差しをすればもう、我慢できなかった。
虎徹のアナルが裂けるのではないか、と思うほどに深くペニスを挿入して、ぐりぐりと内部を抉りながら、堪えていた衝動を解放する。
「―――っっっ!」
虎徹がく、っと喉を詰めて呻きながら、弱々しく首を振った。
ぱさ、とソファに乱れた黒髪が当たる。
長い睫に縁取られた目尻から、涙がつつっと頬を伝う。
虎徹の中に射精しながら、右手で虎徹のペニスを握って扱いてやれば、そこはびくびくっと脈打って呆気なく弾けた。
とろりとした白濁が手をしとどに濡らす。
はぁはぁと全身で息をしながら、バーナビーはその虎徹の狂態を深い満足とともに眺めた。
次の日、バーナビーは朝から上機嫌だった。
会社にいても、隣の席を見て心が躍る。
昨日は情事の後、ぐったりした虎徹と共にシャワーを浴び、そのまま一緒に寝た。
すっかり疲れたらしく、虎徹はバーナビーにされるがままだった。
アナルから精液を掻き出し、身体を洗い、髪を乾かして寝かせた。
自分の腕の中に虎徹を抱き締めて寝ても、彼は嫌がらなかった。
キスも大人しく受け入れてくれた。
今朝は、一度自分のアパートに戻るというので、起きてすぐに彼をブロンズステージの彼の家まで送っていった。
その後自分は自宅に戻り朝食を食べ、出社した。
出社するとすぐ取材の仕事で呼び出されて虎徹に会えなかったが、午後になってヒーロー事業部に戻ってくると、虎徹が所在なげにデスクで事務仕事をしていたのだ。
隣の自分のデスクに座って、パソコンを立ち上げながら虎徹を見る。
「虎徹さん…」
名前を呼ぶと、ちら、とバーナビーを見て、虎徹が『よっ』、という感じで左手を挙げた。
腫れた瞼が重たげで、そこがまた可愛い。
昨日、随分と激しく求めてしまった。大丈夫だろうか。
考えると、昨日の虎徹の様子が脳裏に思い浮かんだ。
自分の愛撫に乱れ喘ぐ表情や、快感を堪えて震える身体。
目尻に涙の粒をいっぱいにためた睫。
半開きの唇。
硬く膨れた乳首。濡れた陰毛。
絡みついてうねる内壁……
思い出すと、身体が火照る。
体温が上昇した気がする。
心臓がどくん、と鼓動を刻んで、どきどきと脈拍が脳内にまで響いてくる。
甘く幸せな感情が溢れてきて、バーナビーは思わず立ち上がると虎徹に近寄った。
「虎徹さん、昨日は大丈夫でしたか?」
背後から虎徹の肩を抱いて、顔を近づける。
そのまま虎徹の頬にキスをしようとして、
「……あー、ちょっと…」
困ったような口調の虎徹にさりげなく避けられた。
(………え?)
虚を突かれてバーナビーは身体を堅くした。
虎徹が困ったなぁ、というように後頭部をがしがしと掻きながら、バーナビーを見上げてきた。
「ここ、会社だし、……っていうかさぁ、バニーちゃん、…その…」
「あ、そうですよね。…仕事中ですしね。ごめんなさい、虎徹さん」
今は誰も人がいないとはいえ、ここは仕事場だ。
バーナビーが身体を離すと、虎徹が更に後頭部の髪をくしゃっとかき混ぜながら言ってきた。
「あ、その、今日の夜もさ、バニーちゃんち、行っていい?」
「え、えぇ、勿論です」
虎徹の方から来たいと言ってくれるとは。
ぱっと機嫌が直って、バーナビーは微笑を浮かべて返答した。