◆ちかん☆プレイ◆ 7
どうやら俺は絶頂に達しながら意識を飛ばしていたらしい。
朦朧としていた意識がだんだんと覚醒してくる。
俺は目や口の拘束が解かれ、トイレの便器の上にぼんやり座っていた。
はっとして自分を見ると、服装もちゃんと整えられている。
呆けた顔で目を上げると、バニーがいつもの端正なハンサムとしか形容の出来ない顔で微笑んでいた。
「虎徹さん、もうすぐ映画が終わりますよ。帰りましょうか」
「あ…、う、うん……」
さっきまでの獣のような交わりなんか何処吹く風といった感じで言われて、俺は呆然としたまま答えた。
バニーは一分の隙もなく、綺麗に服を整えている。
少し外を窺って誰も居ないのを確認してから、バニーが個室のドアを開ける。
ついてこいという感じで目で示されて、俺はよろよろと立ち上がった。
腰から下が抜けたようで力が入らない。
まだ、さっきの激しすぎるセックスの余韻に全身浸かっている。
特に腰の辺りは感覚がなくて、とろとろだった。
なんとか立ち上がって、よろよろ半病人のように蹌踉めきながらトイレを出る。
さっさと歩いているように見えながらもバニーは俺の事を気遣ってくれているんだろう、時折後ろを振り返り俺がついてくるのを確認しながら映画館の外に出た。
バニーの後について駐車場に入り、時々休みつつなんとか這うようにしてバニーの車に辿り着く。
助手席のドアが開いていて、そこに身体を滑り込ませてドアを閉め、はあ、と背もたれに身体を投げ出し、ぐったりして息を吐く。
「どうでしたか、虎徹さん」
バニーが涼やかな声で言ってきた。
くそっ、なんでこんなに澄ましてんだよ、こいつ。
まるで俺だけまだ身体がくたくたで、バカみたいじゃないか。
元はバニーが仕掛けてきたくせに。
俺なんか今座った衝撃でまた尻の中が疼いて、びくびくってなっちまったのに。
しかもバニーはそれを見てくすくすと笑ってやがる。
ちろっとバニーを見ると、バニーが眉尻を下げ嬉しそうに笑っていた。
――くそっ。
我慢できずに俺は身を乗り出して、バニーの唇にちゅうっと鰻のように吸い付いてやった。
舌を伸ばしてバニーの口の中に無理矢理舌を差し入れ、ぐにぐにっとバニーの舌を擦ってはじゅるじゅると啜ってやる。
さっき口の中にハンカチを突っ込まれていてキスができなかったからな、お返しだ。
ちゅうちゅう吸ってもう一度舌を差し入れて、バニーの上顎の裏とか舌の付け根とか全部舌先で擦ってやる。
粘膜同士の濡れた感触を味わえば身体の中がまた熱くなってきて、はぁはぁ発情期の犬みてぇに息を荒げる。
思う存分バニーの口の中を蹂躙してちょっと満足して唇を離すと、バニーが目を丸くして俺をじっと見つめていた。
「どうでしたかじゃねぇよ。この変態…」
「おや、僕が変態なんですか?あなたじゃなくて…?」
そう言われると一言もなかった。
バニーの目線に耐えきれなくて俺は視線を逸らして目を伏せ、ちょっと瞬きをしてから上目使いにバニーを見た。
「え、いやその……、俺が変態なの?もしかして……」
「気持ち良かったでしょ?」
にこにこしてそう言われると反論ができない。
「……う、うん。すげぇ良かった。俺、あんなに感じた事ないっつうか、なんか信じられないぐらい…」
「ふふ、痴漢プレイの成果ですね。普段恥ずかしがって自制している人ほど、ああいう特殊なプレイで興奮できるようですよ?きっと今まで虎徹さんの理性が邪魔していたんですね。あなたは本当はすごく感じる事の出来る人なんですよ。気持ち良かったでしょ?」
「…すげぇ良かった。死ぬかと思った…」
「また、ああいう風に感じたいでしょ、虎徹さん」
そう言われるとその通りな気がしてきた。
すげぇ良かった。あんな快感、思い出すだけでたまらなくなる。
気持ち良くて、まぁ、いつもあれじゃ俺の身体がたまったもんじゃないけど、……たまにはいいかもしれない。
「うん……良かった…」
「ふふ、虎徹さん、可愛い。またしましょうね?今度はSMプレイとか、どうですか?」
「え、エスエム?」
「はい、また僕、いろいろ調べますから、……ね?」
爽やかな声で言われ、ちゅっと唇にキスをされる。
こんな綺麗な顔をしてすげぇ事言うな、と思ったけれど、俺の身体はぞくぞくとその言葉を聞いて震えた。
痺れたって感じか。
とにかく尻の中がまたじいんと疼いて甘く痺れた感じだった。
俺って、どうなっちまうのかな。
でも気持ちイイからいいか。
相手バニーだし。
好きな相手とこういう風にいろんなプレイをして、そんで気持ち良くなって。
どうにかなっちまうほどになるって、幸せな事だよな、ホント。
恥ずかしいけれど嬉しい。
しみじみそう思っちまった。
だから俺は顔を赤くしながらも、『またしましょうね』というバニーの言葉に思い切り頷いたのだった。