◆After a storm comes a calm.◆  4






戸惑いながらも久し振りに味わう快感に、虎徹はすっかり溺れてしまった。
あっという間に絶頂に達しそうになる。
しかし、そこをぐっと握られる。
「いってぇっ!」
目の前に、火花が散ったような気がした。
「…バニーちゃんっ、…なんでっ?」
虎徹の勃起したペニスの根元を強く握って、バーナビーが顔を上げて虎徹を覗き込むようにしてきた。
虎徹は、と言えば、快感とその後に来た痛みに目尻から涙が零れてしまった。
涙目でバーナビーを見ると、バーナビーが瞳を細めた。
「虎徹さん、勿論初めてですよね?」
「そ、そりゃあ勿論っ、です。…したことねーし…ってか、イきたいんだけど…?」
「…もうちょっと待ってください」
バーナビーが、形の良い唇を微かに緩ませてそう言った。
美しい微笑が少し怖い。
顔だけ上げてバーナビーを見る。
するとバーナビーが、先程用意したジェルを取り出して右手の指にたっぷりとつけ、その指を自分の股間の下、奥の方へと伸ばしてきた。
「や…は、ァ…っ」
肛門にその指の感触を感じて、虎徹は戦慄した。
無意識にきゅっと括約筋を締める。
と、それを宥めるように指が襞を這い回り、それからトントンとアナルを叩き、ゆっくりと指が体内に侵入してきた。
「んっ……!」
男同士のセックスでそこを使用するというのは勿論知っていたが、まさか自分がそういう羽目に陥るとは。
しかもこの体勢。
自分の恥ずかしい部分を、余すところなくバーナビーに見られている。
まるで観察するかようにじっと、自分のペニスや陰嚢、それに肛門をバーナビーが見てくる。
虎徹は情けないやら、でも気持ちが良いやら、頭の中がぐちゃぐちゃになって、ついでに鼻水まで出てきた。
「んっ…バ、バニーっ、――あっ、……い、ちょ、……っとっ!」
ずずっと指が奥まで入って、内臓がぐりっと引っ掻き回される。
表現しようのない違和感なのに、同時にたとえようもなくぞくぞくっと気持ちが良かった。
今までに、一度も経験した事の無いような快感だった。
指が中でぐっと曲げられたらしく、ぱぁっと一瞬目の前が明るくなった。
全身が震える。
激烈な快感が、鋭く虎徹を襲う。
目を固く閉じて、唇を噛み締めて虎徹は耐えた。
ペニスは先程から根元を戒められていて、イく事ができない。
後ろからの刺激と、ペニスの堰き止められた快感が身体中を巡って、全身がどくんどくんと波打つ。
「あっあっっ、……いっっ、バニーっ、ちょ、っとっ、も、―――っっ!」
「まだですよ。虎徹さん」
括約筋がぐっと押し広げられたのが分かった。
「虎徹さんのナカ、赤くて綺麗ですね…。すごく可愛いです…」
「そ、そんなとこっ、見るなってっっ」
とは言ったものの、肛門を思い切り広げられて中を見られているらしい。
じわっと涙が滲んで、虎徹はもうどうにでもなれ、という気持ちになってきた。
とにかく、バーナビーとセックスをする、と決めたのだから、どうせなら自分も楽しんでしまった方が勝ちだ。
いい加減、覚悟を決めないと。
そう思って、覚悟を態度に表すように、思い切って脚を大きく広げてバーナビーの腰に巻き付ける。
開き直って、アナルをバーナビーの眼前に晒す。
バーナビーがくすっと笑った。
「可愛いです、虎徹さん」
「い、いいから、ほらっ……も、もう来いよ…っっ」
「分かりました」
虎徹が両手を伸ばすと、バーナビーがアナルから指を抜いた。
そして彼の勃起したペニスにコンドームを装着し、その上にもたっぷりとジェルを塗りつけて、その立派なものをアナルにひたりと押しつけてきた。
「……いきますよ?」
「んっ……」
もうなんでもいい。
とにかくできればいい。
バーナビーが、みちっ、と体内に侵入してきた。
引き裂かれるような痛みに思わず腰が逃げかけるのを堪え、できるだけ挿入しやすいようにと深く息を吐きながらアナルを緩める。
「い、いてぇ………っっいでででーっっ!」
でも、情けない悲鳴が出てしまって、虎徹は思わず自分の口を手で覆った。
バーナビーは、慎重にゆっくりと体内に侵入してきた。
少しずつ入り口を押し広げ、入っては少し引き、小刻みに腰を揺らしながら進んでくる。
最初の亀頭の部分が体内に入ってしまえば、後はそんなに痛くはなかった。
それよりも、容積の大きなモノが腸内に充満する感触と、動く度に絶妙に擦られる前立腺とおぼしき箇所からの衝撃に、全身ががくがくと震えてきた。
瘧にでもかかったようにかぁっと熱くなって、ぞくぞくっと震えては頭の芯が痺れるような疼きが脊髄を走り抜ける。
こんなに凄い快感が、自分の身体の中に隠れていたとは。
「あっ…い、っっは、―――あ、……あァっっ!!」
バーナビーがぐっと身を進めて来た瞬間に、ぐわん、と爆発するような衝撃が体内を走り抜けて、虎徹は呆気なく射精してしまった。
白濁を互いの腹の間に飛ばして、ふわっと酩酊した後に全身が弛緩する。
はぁはぁと激しく息を吐いていると、バーナビーが身を乗り出して虎徹を抱き締めて、それから一気に律動を始めた。
「ひっっ……あっ―――あっ、っっっうッッ!!」
身体が揺さぶられる。
射精したからか、いい感じにアナルも解れて、もうバーナビーに何をされてもいいような、そういう気分になってきた。
熱く滾った肉棒が、ずっと中に入ってきては、ずずずっと腸壁をめくりあげるようにして抜かれる。
その繰り返しで内部が摩擦され前立腺が刺激され、自分のペニスもすぐにまた勃起してくる。
「ひっ、あっ、…あっあっ――!!は、ァー…っくっっっ! ば、にっ…や、ァッッ!」
喘ぐことしかできなかった。
過去、自分がしてきた性交は、自分でコントロールができ、時間も短いものだった。
しかし、受け身のセックスは自分でコントロールが利かないばかりか、激しすぎる快感を与えられて溺れて、自分がどうにかなってしまいそうなものだった。
「い、ぁ…あーっっっ!ぁ、ばにッッ、―――も、もうっっっ!!」
きつく抱き締められて泣きながらそう叫ぶと、バーナビーがラストスパートを掛けてきた。
激しく内部を抉られ脳天まで突き刺さるような甘い痺れが走る。
目の前がすうっと暗くなり、そのまま意識がふわっと飛ぶ。
身体がゆさゆさと揺さぶられ、全身がそのリズムにシンクロしていく。
虎徹の意識は速やかに混濁していった。




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