体育祭 
《3》














「僕もさ、自分で自分が馬鹿だなって思ってはいたんだけど、でも、なんだか頭に来ると治まんなくなっちゃって………」
裸になった手塚を愛おしそうに抱き締めながら、不二が申し訳なさそうに言ってきた。
ベッドの上で抱き合っていると、お互いの鼓動が響き合ってきた。
「キミがエージと仲いいのは当然で、別に僕、仲良くするなとかそういう事言いたんじゃないんだよ」
「それは分かる……」
頷くと、不二が恥ずかしそうに笑った。
そして、仰向けになった手塚の上から、顔を屈めて手塚の胸に唇を付けてきた。
「…………ッ」
胸の突起を舌で舐られて、ぞくぞくする。
不二の柔らかな髪が素肌をくすぐってきて、その微妙な感触も、手塚を追いつめた。
「は………ぅッ…………!」
初めて身体を繋いでから、まだ今日で数回目だ。
まだまだ慣れない感覚に、手塚は眉を寄せて顔を仰け反らせた。
「僕、自分があんなに子どもだったなんて、ちょっと驚いた……」
乳首を舐りながら、顔を上げて不二が言ってきた。
「あんな事で拗ねちゃうなんて………恥ずかしいよ……」
「不二……」
「キミに好きって言ってもらえる資格なんてないよね………」
「……不二っ!」
自嘲するような言い方に、思わず手塚はたしなめるような口調になった。
不二が照れくさそうに笑う。
「手塚に怒られると、なんだか嬉しい……」
「なんだ、それ……」
手塚も照れくさくなって、ふい、と横を向いた。
「ふふふ………嬉しい、手塚………」
「…………ッッ!!」
不意に不二が身体をずらして、手塚の性器を口に咥えたので、手塚はびくり、とした。
鋭い快感が、不二に咥えられた器官から駆け昇ってくる。
「はッ…………う……ッ!」
熱い吐息がひっきりなしに漏れる。
快感をやり過ごそうと頭を振ると、部屋の壁に貼ってある山の写真も揺れた。
「ふ……じ……………あッッ…!」
口と手で愛撫されて、手塚は忽ち絶頂に達した。
びくん、と大きく身体を震わせて、不二の口の中に熱い粘液を放出する。
不二がそれをごくんと飲み込む音が部屋に響いて、手塚は真っ赤になった。
「……まだ、恥ずかしい?…こういう事……」
手塚が恥じ入っているようなのを見て、不二が笑う。
「………当然だ!」
顔を背けて照れ隠しに怒ったような口調で言うと、不二がくすくすと笑った。
「それにしちゃあ、早かったよね、イくの?」
「……ふじっ!」
「ふふ、ごめんごめん………」
口元を拭きながら、不二が嬉しそうに笑う。
「キミのそういうとこ、すっごく興奮する。………ねえ、後ろからしていい?」
身体を俯せにさせられる。
「不二………?」
振り返って、不二を見ると、不二が小首を傾げて笑った。
ピチャ………。
尻を高く上げさせられて、広げられた秘部に、不二が口を付けてくる。
「ぁ…………は……………ッ」
ねっとりとした舌が秘孔に入り込んできて、手塚はぞくりとした。
後ろからされるのは、初めてだった。
四つん這いの格好だと、よけい秘部が広がる。
そこを、思うさま不二に見られていると思うと、羞恥が更に高まってきた。
「ふ……じっ!」
-----クチュ………。
湿った水音が聞こえて、手塚は恥ずかしさのあまり身体を震わせた。
恥ずかしさと共に、嬉しさとぞくぞくするような快感が湧き起こってくる。
不二とこういう事をしていることが、こんなに嬉しいなんて。
身体も勿論気持ち良いが、それ以上に、心が嬉しくて、涙が出そうだった。
好きな人と一つになるという事の嬉しさが、やっと分かったような気がした。
これが、恋というものなのだ。
ほんの少しのことで不安になったり、戸惑ったり。
ほんの少しのことで嬉しくなったり。
裸で抱き合うのが、こんなにも嬉しいことだったり。
全部、初めての経験だった。
不二とこういう関係になったときは、戸惑いや切ない気持ちやら、いろいろごちゃまぜになって混乱していたけれど。
でも、………今は嬉しい。
嬉しくて、幸福で、怖いくらいだ。
「不二………もう…………」
身体の奥がうずうずしてきて、我慢できなくなった。
催促するように腰を揺らすと、不二が舌を抜き取って、代わりに熱い器官を押し付けてきた。
「好きだよ、手塚………」
いいながら、不二が体を進めてきた。
「……………ッッ!!」
ズキン、と身体の芯が甘く疼いて、その快感が脳まで蕩かしてくる。
身体も心も、熱くて嬉しくて、もう我慢できなかった。
「不二ッ………あッッ…………うッッ………はッ………!」
不二が入ってくる度、波のように快感が押し寄せてくる。
身体が溶けて、不二とすっかり繋がって、不二と心の底まで見せ合っているような、そんな感覚。
不二の前でなら、どんな自分でも見せられるような気がした。
不二も、なんでも見せてくれる。
今日のような、拗ねた不二。
たわいもないことで、機嫌を損ねる不二。
どんな不二でも愛おしかった。
「あ……………ああッッッ!!」
不二の動きが激しくなり、身体を打ちつけるようにして楔を抜き差ししてくる。
その度に瞼の裏に閃光が走り、手塚は無意識に喘いだ。
閃光がだんだんと激しくなる。
間隔がせばまって、目の前がまばゆく爆発したようになる。
「………………ッッッ!!」
不二が手塚の中で弾けたとき、手塚も二度目の精を放っていた。














「不二、どうしたんだ……?」
終わった後、不二に凭れて甘い息を吐いていると、不二がいつになくもじもじとした様子で困ったように溜め息を吐いているのに気付いて、手塚は問いかけた。
「………今日の僕、すっごくやな奴だったよね……」
不二が、眉をハの字にして、手塚を窺うように見てきた。
「……キミに意地悪しちゃって、最低だった………」
不二が萎れているのは珍しく、手塚はつい微笑んだ。
「なんだ、そんな事気にするなんて、不二らしく無いぞ」
「そうかな…………でも、僕…………」
不二にとっては、自分の行動が許せないらしい。
手塚は笑って、不二の頬に自分の頬を擦り付けた。
「俺の方こそ、不二の気持ちも考えないで、今まで悪かったと思う……」
「……えっ?」
「不二がいつも俺を大切に扱ってくれるから、それに甘えていた。自分の事ばっかり考えていて、不二がどんな気持ちでいるかとか、考えてなかった。……不二の方が年下なのに……」
「年下って、ちょっと誕生日が遅いだけだよ……」
不二が頬を膨らます。
「不二の思いやりに甘えていた。……俺の方こそ、反省しなくちゃならない……」
「手塚は悪くないよ!」
不二が慌てて言ってきた。
「悪いのは僕。手塚が反省するなんて、そんな事必要ないよ!」
「……だったら、不二だって悪くない!」
「手塚………」
お互い顔を見合わせて主張していると、なんとなく可笑しくなって、ついに不二がぷっと吹きだした。
「あはははっ、なんか気が抜けちゃった……」
言いながら、ベッドに仰向けに倒れ込む。
「不二………」
不二が笑ってくれると嬉しい。
不二が、手塚の頬にそっと手を伸ばしてきた。
「好き…………」
掠れた声で言われて、ぞくっと甘い電流が身体に流れる。
「俺も、好きだ………」
手塚は小さな声でそう言うと、頬に触れた不二の手に、そっと自分の手を重ねた。















FIN


というわけでラブラブv