傀儡 
《5》














「ふふふ、……うまく行ったみたいだね……」
大石の家を出て道路に出た途端声を掛けられて、手塚は驚愕した。
声のした方を振り向くと、街灯の下に、不二が立っていた。
「不、不二………どうして?」
「キミのことが心配になって、様子を見に来たんだ……どうだったかなってね?」
不二が、近寄ってきた。
「教えてよ、……どうだった?」
「……………」
不二に手を引かれて、手塚は近くの公園へ連れ込まれた。
夜の公園は人気が無くしんと静まり返り、遊具が黒く影のようにそびえ立って、不気味だった。
端のベンチへ連れて行かれて、そこに座るように促される。
そこは、木立が茂った空間で、周りから見えないようになっていた。
公園の灯りが、ぼんやりと薄暗く二人を照らしてくる。
「下、脱いで、僕に見せて?」
「……ここでか?」
「そう………誰もいないから大丈夫だよ。どうせ、僕に言われたら、どこでも脱がなくてはならないんだしね……?」
不二がくすっと笑った。
唇を噛んで、手塚はズボンを下ろした。
靴は履いたまま、ズボンと下着だけ取り去る。
「じゃあ、見せてもらおうかな?」
不二が、手塚を座らせて、脚をぐっと持ち上げてきた。
ベンチの背に片方の脚を掛けた格好で、秘部を晒け出されて、手塚はさすがに羞恥の色を浮かべた。
ここは、外である。
夜だといっても、誰が来るとも分からない。
もし、他人にこんな所を見られでもしたら。
そう思うと、身体が震えた。
「ふうん………」
手塚の秘部をしげしげと眺めて、不二が微笑んだ。
「結構乱暴だったの、大石?……ちょっと傷付いてるね……」
つぷ、と指が挿入されて、手塚はベンチの上で仰け反った。
冷たい指の感触が、痛みと共にぞくりとする衝撃を伝えてくる。
「……大石、どうだった?」
指で内部を掻き回しながら、不二が尋ねてきた。
「ど、どうって……別に……」
手塚は弱々しく首を振った。
「別に……なに?………良かった?」
ぐ、と指を突き入れられて、電流が頭まで突き抜ける。
「ここ、まだ随分大石が残ってるよ、……ほら?」
とろりとしたピンク色の液体を鼻先に突きつけられて、手塚は顔を背けた。
「ちょっと血が出ちゃったみたいだね、キミ………大丈夫かな?」
指が2本に増やされて、中に入ってきた。
「大石、キミのここを濡らすとか、そういう余裕無かったんだね?……まぁ、そうだよね………」
含み笑いをしながら、不二が言ってくる。
「大石、どうするって?……部活、来るの?」
「……明日から、出るそうだ……」
「そう、……キミの効果って絶大だね……」
くすり、と笑われて、手塚は視線を逸らせた。
「大石、喜んでた?」
「……ああ……」
「キミは、気持ち良かった?」
「…………」
「ねえ、手塚………大石のこと、好き?」














「…………!!」
不意に、指が引き抜かれ、代わりに、不二が押し入ってきた。
ベンチがきしきしと音を立てる。
必死でベンチに爪を立てて、手塚は不二の侵入に耐えた。
大石によって傷つけられた蕾が、また広がって、鋭い痛みを頭まで伝えてくる。
「くッッ…………!」
思わず頭を振って呻くと、不二が深く結合するよう、体重を掛けてきた。
「いた……ッ………ふじッッッ……!」
「ねえ、手塚…………キミは誰が好きなの?」
不二が、低く囁いてきた。
囁きながら、不二は、抽送をはじめた。
手塚の体内深くまで凶器を突き入れたかと思うと、抜け落ちてしまうほど引き抜いて、また体重を掛けて突き入れてくる。
そのたびに、目の前に火花が散り、手塚は喉を仰け反らせて喘いだ。
焼け付くような痛みと、身体の奥底から沸いてくる、眩暈のするような快感。
それらが渾然一体となって、手塚を襲う。
「あ………く………ああ………ッッ」
息を吐く間もなく揺さぶられて、必死で不二の動きに合わせて腰を振ると、不二が更に問いかけてきた。
「ねえ、手塚………誰を、好き?」
「……不二……だ………」
「………僕?」
「……おまえ、だ………」
「……本当に?」
不二が、手塚をきつく抱き締めてくる。
「本当に、……僕?」
「あ、ああ……そうだ…………俺は、……」
不二の瞳が、自分を至近距離からじぃっと見つめてきた。
黒々とした瞳が、暗く滑ったように光る。
ぞくり、と得も言われぬ快感が襲ってきて、手塚は瞳を閉じた。
「俺は、……不二…………おまえのものだ………」
「ふふふふ………」
不二が満足げに笑う。
「良く分かってるんだね、手塚………」
不二が手塚の中を全て喰らい尽くすかのように、深く入ってくる。
閉じた瞼に、極彩色の光が明滅する。
津波のように、何かが押し寄せてきて、もう、戻れなくなる。


「ふ……じッッッ!!」
手塚が絶頂に達したとき、不二も手塚の体内に、白濁した欲望を吐き出していた。














「愛してるよ、手塚………」

呆然としたままで抱きしめられていると、上から不二の優しい声が聞こえてきた。
愛していると言われたのは、初めてだった。
今まで一度も聴いたことがなかった。
胸が詰まる。
涙が溢れてくる。


涙は、後から後から溢れて、止まらなかった。


手塚は不二の胸に縋って、声を殺して泣いた。
暗い公園内に、手塚の押し殺した嗚咽だけが、低く響いていった。















FIN


というわけで相思相愛?な不二と手塚なのでした〜