考査終了日 
《3》















不二が我慢しているのが分かって、手塚は何とも言えず腹が立った。
自分のためを思って気を遣ってくれているのが、更に苛立った。
そんな気を遣わなくても、いい。
………しなくても、我慢できてしまう程度の情熱なのか?
勿論、そんな考えは自分の屁理屈で、不二が自分を本当に好きでいてくれるのは分かっていたが、それでも手塚はそう思って、密かに傷付いた。
「不二………」
引き寄せた不二が、じっと身体を固くしたままなのに焦れて、手塚は不二のズボンに手を掛けた。
「手塚………?」
不二が困ったように声を出す。
手塚は、そんな不二におかまいなく、不二のズボンを剥ぐと、下半身で息づいている器官に唇を寄せた。
「て、……てづか!」
不二が驚いたように腰を引きかけるのをぐっと掴んで、それから、目を閉じて、不二のソレを口に含む。
そこは、ぱっつりと張り詰めて、歯に程良い弾力が伝わってきた。
火傷しそうなほど熱く火照っていて、軽く噛むと、ぴくり、と脈打つ。
口を窄めて、根元から先端まで舌で擦りあげるように扱くと、不二が身体を震わせた。
さっき、自分がしてもらった時の幸福感を思い出して、手塚は一心不乱にそれを舐めた。
不二にも、気持ちよくなってもらいたかった。
不二を喜ばせたかった。
「だ、だめだったら……」
不二が困惑気味に言う。
その声音に、快楽の色が混じっているのを感じて、手塚はぞくり、とした。
不二の声に、自分も興奮する。
「ね、いいから、もう…………ッッッ!」
せっぱ詰まったような声音がして、次の瞬間、手塚の口の中のソレが弾けた。
びくん、と数回跳ねて、その度に熱い粘液が口の中に迸る。
精液特有の匂いと苦い味が舌に広がったが、手塚は思いきって、それを一気に飲み干した。
「手塚………」
不二が泣き出しそうな声で手塚を呼んできた。
「ごめん………」
「……どうしてだ?」
「だって……その………」
不二が頬を赤らめて、視線を逸らす。
自分でしている時は大胆なくせに、してもらうのは恥ずかしいのだろうか。
手塚はなんとなく嬉しくなった。
不二の知らない一面を、見付けたような気がした。
「俺の事だって、してくれたじゃないか?」
手塚はそう言いながら、不二を見て微笑んだ。
「でも、僕の場合は、したかったし………手塚は、その………僕に気を遣ってくれたんでしょ?」
不二が困ったようにもじもじとしながら言ってきた。
「なんか、悪くて………」
「そんな事ない。俺だって、不二にしたかったから……」
「……そうなの?」
不二が顔を上げて、窺うように手塚を見てきた。
「ああ……」
断言するように頷きながら言うと、不二が顔を綻ばせた。
「夢みたい…………」
そう言って、含羞みながら、手塚に抱き付いてくる。
暖かな身体の感触が心地良くて、手塚は抱き付かれてベッドの柱に背を凭れ掛けたまま、不二を抱き締めた。
トクトク………………。
鼓動が重なり合って、一つになったような気がする。
静かな部屋に、心臓の鼓動だけが響いているような気持ちになる。
不二の熱い吐息が首筋にかかって、不二の腕が自分をしっかりと抱き締めてくる感触が嬉しくて、手塚は瞳を閉じた。
心の底からほんわりと温かかった。
屋外の雑音が、ガラス越しに微かに聞こえてくる。
不思議な気がした。
こうして不二と抱き合って、幸せを感じている事が。
-------不二が、掛け替えのない存在になっていることが。















「ねえ、…………やっぱり、したくなっちゃった………」
しばらく抱き合っていると、もぞもぞと不二が動いて、困ったように言ってきた。
「……しても、いい?」
不二の薄茶色の瞳が、欲情して濡れていた。
ぞくり、と身体の芯が疼いて、手塚は微かに頷いた。
「痛かったら、ごめんね………」
絨毯の上に仰向けに押し倒されて、不二がゆっくりと上に覆い被さってくる。
ズボンはお互いに既に脱いでいたから、すぐに秘孔に不二の熱い塊が押し付けられてきた。
さっき、口で慰めた時よりもずっと熱く硬い感触に、背筋が強張る。
不二は、円を描くように腰を動かして、先走りの液を手塚の蕾の周囲にしばし馴染ませて、それから、息を詰めて、ぐっと内部に侵入してきた。
「………………!!」
瞬時、痛みを感じたが、すぐにそれはえもいわれぬ快楽に取って代わった。
不二が入ってくる度に、うねりのように快感が突き上げてきて、全身が不二を歓迎しているのが分かる。
「………手塚、……大丈夫?」
一旦自身を根元まで埋め込むと、不二が手塚に囁いてきた。
「………痛くない?」
「………」
大丈夫だ、と言おうとしたが、突然羞恥心がこみ上げてきて、声が出なかった。
こんな状態で声を出したら、どんな声になってしまうか。
そう思ったら、恥ずかしくなったのだ。
代わりに手塚は、首を縦に振った。
「……じゃあ、動いていい?」
そんな事まで聞くな、と言いたかった。
しかたがなく更に頷くと、不二が安心したように息を吐いた。
「ごめんね………」
言いながら、ゆっくりと抜き差しを始める。
最初はやんわりと優しく、徐々に動きが激しくなって、手塚は息を吐く間もなく不二にしがみついた。
不二が内部奥深くまで入ると、ずん、と重い快感が脳天まで突き抜ける。
その衝撃に耐えていると、内臓を引きずり出されるかと思うような勢いで楔が抜け、また突き入ってくる。
「うッッ…………く………ッッ!」
深い深い海の底から、眩しい海面まで一気に浮かび上がるような感覚がする。
身体が軽くなって、ふわりと、浮かんで、目の前が一気に明るくなる。
「あ…………あッッッ…………ふじッッッ!!」
眩しい陽光が煌めいて、手塚は喉を仰け反らせて喘いだ。
一瞬、身体が宙に浮くような浮遊感が手塚を襲い、次の瞬間、手塚は二度目の精を噴出していた。
ほぼ同時に、不二も、手塚の内部に熱い欲情を迸らせていた。















「暗くなっちゃったね…………」
裸のまま、汚れを拭きもせずに身体を投げ出して放心していると、手塚の身体に覆い被さるようにして興奮を鎮めていた不二が、顔を上げて独り言のように呟いた。
「明日も学校だね…………部活、出られる?」
不二が、心配そうに自分を見つめていた。
「大丈夫だ…………」
身体のあちこちが軋んでいたが、部活に出られないほどでも無さそうだった。
不二と話をするのが妙に気恥ずかしくて、平静を装ってそう言うと、不二がふわり、と笑った。
「良かった。………また無理させちゃったかなと思って………」
「別に………気にしなくていい………」
言われると、恥ずかしい。
そっぽを向いて、ぼそっと呟くと、不二がくすっと笑った。
「いつもの手塚だね…………良かった…………」
不二が甘えるように、手塚の胸に顔を擦り付けてきた。
「キミの身体って、暖かいね………」
目を閉じて、体温を確かめるかのように顔を密着させてくる。
「手塚………好き……」
独り言のような呟き。
胸が熱くなって、手塚は目を瞬いた。
そっと手を不二の頭に乗せて、不二の柔らかな髪に指を絡める。
「好きだよ、手塚…………」
不二の甘い囁きを聞きながら、手塚は不思議な幸福感に浸っていた。


















FIN

というわけで仲直りしたのでしたv