lovesick 《2》
どきどきしながら玄関へ行って鍵を開けると、宍戸さんが立っていた。
急いで走ってきたのだろうか、息が荒く、制服がすっかり雨に濡れていた。
「宍戸さん………」
何と話しかけていいか分からなくて、阿呆のように呟くと、先輩は俺を睨むようにしながら、
「中入っていいよな?」
と言った。
「……はい……」
よく見ると先輩は、髪の毛までしっとりと濡れていた。
俺はバスタオルを引っ張り出して先輩に渡した。
先輩が押し黙ったままそれで髪の毛を拭くのを見ていると、胸の動悸が更に大きくなってきた。
濡れた髪を拭く先輩は--------色っぽかった。
細くてしなやかな首筋に雨の滴が伝って、それがまた何とも言えない風情で俺を誘ってくる。
ああ、抱きたい------!!
不意に衝動がどくん、と襲ってきて、俺は眉を顰めた。
下半身に血が集まるのが分かる。
ペニスが重く脹れてきて、ズボンを押し上げようとしている。
------駄目だっ!!
嫌われたかもと思っているのに、先輩を抱きたい衝動に駆られ、俺は唇を血が滲むほど噛み締めた。「長太郎………」
とりあえず部屋に案内して、びくびくしながら先輩を窺っていると、先輩は俺の隣に座って話しかけてきた。
「は、はい………」
緊張する。
もし、……もし『迷惑だから話しかけるな』とか、……『もう別れよう』とか言われたら…………
-------言われたら、どうする!!
俺は目を瞑って、ぎゅっと拳を握った。
「おまえ、なんか誤解してねえか?」
「……えっ?」
目を開くと先輩が俺を覗き込んでいた。
「帰りにさ、おまえのクラスに寄ったんだよ。そしたらおまえ、午後元気が無くて帰ったって言う事だからさ」
「はぁ、その………」
「もしかしてさ、お昼に俺が言った事、気にしてたのか?」
------その通りです!
でも俺はちゃんと言えなくて、俯いた。
「………長太郎」
先輩が俺の手をそっと握ってきた。
「……俺のこと、……好きか?」
「……も、勿論です!」
先輩のこと、朝から晩まで、寝た後まで考えてます!
先輩が俺の手を、微妙にさすってくる。
俺はかぁっとなって身体が震えた。
「昼間、俺が来るなって言ったのはさ……」
先輩が照れたように話し始めた。
「おまえと会うと嬉しくて、ついべたべたしちゃってさ、なんか恥ずかしいんだ。
他の奴らにばれたら、やだしな。それに授業も手に付かねぇし。
………おまえに会えないと寂しいけど、でも学校では我慢しようって思ってさ………それであんな事言ったんだ。
おまえを傷つけて、ごめんな。……そんなつもりじゃなかったんだ………。
でも、来るなとか言われたら、傷付くよな………ごめんな………」
そう言って先輩は、俺の首に手を回した。
甘く柔らかな感触が、唇に押し付けられる。
(宍戸さん…………!)
-----そうだったんだ。
俺のこと、嫌いになったわけじゃないんだ!
俺は心の底からほっとした。
ほっとしたら涙が出てしまった。
「バカ………」
先輩が含羞んで笑いながら、俺の頬に流れた涙を舐め取ってくる。
俺は我慢できなくなって、先輩をそのまま床に押し倒した。
「宍戸さん………!」
上から押し被さるようにして深く口付ける。
先輩の舌が俺を嬉しげに迎え入れてくれた。
絡め合わせて唾液を交換して激しく吸うと、嬉しさと共に幸福感がじんわりと湧いてくる。
------良かった………。
先輩に嫌われたわけじゃなかったんだ。
考えてみたら、お昼にちょっと冷たいことを言われたからって、そんな些細な事でこんなに落ち込むなんて。
------俺って………バカ。
でも、宍戸さんの事になると、ホントにバカになっちゃうんだ。
だって、俺、宍戸さんに首ったけなんだから。
宍戸さんが、好きだ。
好きで好きでたまらなくて、一瞬でも離れていたくない。
いつもこうして宍戸さんを抱き締めて、キスして…………そして、セックスしたい。
俺は激情のままに、先輩の濡れた制服を些か乱暴に脱がせ、裸の胸にむしゃぶりついた。
薄桃色の可愛い乳首を口の中で転がすように愛撫すると、先輩が身体をくねらせて声を上げた。
「あ………長太郎…………」
右の乳首を歯で噛むようにしながら、左の乳首を指でこりこりと潰してやる。
その時の俺は、なんとなく先輩を苛めたい気分になっていた。
だって、俺のこと、こんなに不安にさせて。
俺、今日は泣きたくなるほど辛かったんだ。
宍戸さんのせいで………!
ズボンを脱がせ、中心で半勃ちしている先輩のペニスを思い切り掴む。
先輩が眉を寄せて叫んだ。
「いてぇ…………ッッ!! 長太郎っ!」
------そりゃあ、痛くなるように握りましたから。
俺は乳首を舐りながら、先輩のペニスを乱暴に扱いた。
「あ………あッあッ! 駄目だッ………長太郎ッッ!」
--------駄目じゃないでしょう?
駄目とか言われて、意地になってペニスをぎゅっぎゅっと扱くと、どくり、と肉棒が蠢いて、次の瞬間暖かな粘液がどくどくと迸った。
その粘液を手の平に溜めて、俺は先輩の両脚を大きく開かせると、その奥でひくついているピンク色のアナルの周囲に、それを塗り込めた。
「や………あ………ッッ!」
イった後の余韻で頬を上気させて、先輩が微かに喘ぐ。
ああ、可愛い-----------!!
俺は急に胸が詰まった。
こんなに可愛くて愛しい人、他にいやしない。
嫌われなくて良かった…………!
でも、俺のことを翻弄する宍戸さんに、腹が立ったことも事実。
俺ばっかり、こんなに不安になったり切なくなったりして………なんだかムカつく。
俺は先輩のアナルを指で解すと、自分のいきり勃ったモノを一気に突き込んだ。
「ううッッッ!!」
挿入が乱暴だったせいか、先輩が身体を震わせて歯を食いしばった。
熱く柔らかな内壁を掻き分けて、奥の奥まで貫く。
「あ…………あ…………ッッ!」
時折痙攣しながら俺にしがみついてくる先輩の、固く閉じた瞼とか、きゅっと唇を噛み締めている表情とか、震える指先とか、そういう仕草を見ていたら、俺はどうしようもなく泣けてきた。
俺、宍戸さんが好きだ…………!
------ああ、………どうしてこんなに好きなんだろう…………!
「……宍戸さんッ!!」
ぞくぞくと快感が背筋を駆け抜けて、俺はもうちょっとも我慢ができなくなった。
先輩の身体をぐっと引き寄せて、激しく腰を動かし始める。
「あ………くッッ………ちょ……たろ………ッッッ!!」
先輩の切れ切れの喘ぎが、俺を更に追いつめる。
もう…………限界!
俺はペニスを先輩の奥深くまで突き入れると、熱い腸壁に欲望を噴出させた。
痺れるような快感が全身に伝わり、俺は先輩の身体を力一杯抱き締めて、その快感を味わった。先輩とセックスをしたら、嘘のように不安が消え去って、俺は反対に得も言われぬ幸福感に包まれた。
「宍戸さん………」
俺の腕の中でハァハァと荒く息を吐いている先輩を優しく抱き締めて、汗の滲んだ額や首筋に軽いキスをする。
「長太郎…………」
掠れた吐息と共に先輩が俺の名前を呼んできて、俺はぞくぞくした。
「今日、おまえ、ちょっと乱暴だった………」
「あ、すいません…………あの、辛かったですか?」
もしかして、痛くさせてしまっただろうか?
心配になって先輩の顔を覗き込むと、先輩が顔を真っ赤にした。
「いや、………今日みてぇな長太郎も、いいなって思った……」
「宍戸さん………?」
「じょ、冗談だぜ……」
先輩がふい、と顔を逸らして俺に抱き付いてきた。
------も、もしかして、乱暴に抱かれるの、宍戸さん、好きだったりして……?
途端にぞくぞくっとなった。
恥ずかしがっている先輩の顔を無理矢理上げさせて覗き込む。
「…なんだよ………?」
頬を真っ赤にして目を逸らす先輩を見ていると、俺は先輩が可愛くてたまらなくなった。
噛み付くように口付けをする。
一瞬驚いたような先輩が、身体の力を抜いて俺の背中に腕を回してきた。
「ん……………」
甘く鼻に抜ける喘ぎ。
俺は何度も何度も先輩に口付けながら、幸福を噛みしめていた。
二人で一生イチャイチャしてなさいって感じですね(笑)