部室には、俺と宍戸先輩だけが残った。
gambler 《3》
「……おい長太郎……」
「……はい?」
「怖い顔してんじゃねえよ……」
「は、はい、すいません……」
宍戸先輩のことまで睨んでいたんだろうか。
先輩が困ったように言ってきた。
俺は慌てて顔を弛めた。
「長太郎………」
先輩が囁きながら、俺の肩にそっと顔を寄せてきた。
「宍戸さん………」
誰もいない部室。
ほんのり暖かな体温。
宍戸先輩の身体はまだ火照っていた。
俺は背筋がぞくぞくした。
「俺、ホントのとこ、すっげえ怖かった」
「……宍戸さん?」
「負けたらどうしようって思った。あんなタンカ切っちまって……引くに引けなくなっちまって………でも、俺……」
先輩が顔を上げて俺を見つめてきた。
焦茶色の瞳が潤んでいた。
「俺、おまえ以外のヤツなんて、絶対いやだ………絶対………絶対やだ。……おまえ、サーブ入んねえし、どうしようかって思った……」
「宍戸さん……」
「俺があんなつまんねえ約束しちまって、おまえにも迷惑かけて………でも、おまえ全然サーブ入んねえし………俺、忍足にヤられるしかねえのかなって思って………でもどうしてもやだった………あん時、俺、死にそうだったんだぜ……」
先輩のつぶらな瞳から、涙がぽろり、と流れた。
「本当にどうしたらいいかわかんなくて………もし、忍足なんかにヤられたら……おまえに嫌われたらどうしようって思って……他のヤツにヤられた身体じゃ、おまえに抱いてもらえねえんじゃねえかって思って………でも、元々は俺が巻いた種だから、俺がなんとかするしかねえって思って………でも、おまえ、サーブ入んねえし………」
「……………」
先輩がしゃくりあげた。
涙が先輩の頬をつつっと伝い落ちる。
「俺のせいだよな……俺のせいで、おまえ集中力落ちてんだな、俺がおまえを苦しめてるって思ったら、すごい辛くて………俺、ホントに駄目な先輩だなって思って……」
「………宍戸さん!」
俺は我慢できなくなって、先輩をぎゅっと抱き締めて、それからむしゃぶりつくように先輩に口付けた。
唇を押し付けて、歯列を割って舌を入り込ませて、強く吸い上げる。
口腔内で縮こまっている先輩の舌を探し当てて、絡め合わせて唾液を送り込んで内部を掻き回す。
「……ん………んん………」
先輩が鼻に抜ける甘い喘ぎを漏らした。
「……宍戸さんのせいじゃないです!」
思うさま先輩の唇を吸って、離した時、俺は間髪を入れず先輩に話しかけた。
「俺がもっと集中力つけてれば良かったんです! すいませんでした、宍戸さん。……俺、ほんとにヘタレで………」
「おまえは悪くねえよ! 悪いのは俺だ……」
「違います! 悪いのは俺です!」
先輩が睨みながら言い張ってくるので、俺も意地になって言い返した。
至近距離で見合っていると、先輩の瞳が揺れた。
「……長太郎………ごめんな………」
下半身がズキン、と疼いた。
------ああ、駄目だ。
俺、宍戸さんが可愛くてどうしようもない------!!
「……宍戸さんっ!」
叫ぶように言いながら、俺は先輩をソファに押し倒した。
「宍戸さん、宍戸さん………ッッ!」
折角着替えた所だけど、先輩の制服を俺はボタンを引きちぎるようにして剥いだ。
ズボンを引きずり下ろし、露になった尻をぐいっと引き上げ、中心の窄まった桃色の部分を舐めて唾液を送り込む。
もう、全然余裕がなかった。
すぐにでも先輩の中に入りたかったから、俺は唾液で先輩のアナルをべたべたにすると、自分の勃起したペニスをズボンから引き出して、一気に突き入れた。
「……ううッッッ!!」
先輩が歯を食いしばって身体を震わせた。
痛がっているのが分かったけど、我慢できなかった。
俺はきつい肉襞をぐいぐいと掻き分けるようにして奥までペニスを埋め込んだ。
「宍戸さん……!」
ぴったり密着して、先輩の乳首を噛んだり、汗の浮かんだ首筋にキスしたりしながら、俺は抽送を始めた。
俺が突き入れた刺激で勃ち上がっている先輩のペニスを右手で掴むと、腰の動きと一緒にそれを扱く。
「あ……あっあっ、ちょ……たろッッッ!!」
先輩が突き上げられて息を切らしながら、掠れた悲鳴を挙げる。
日焼けした艶やかな肌に汗が浮き出て、顰めた眉とつんつんと立った短い髪が揺れる。
ああ-------可愛い!!
絶対、他の男になんて、ヤらせてたまるものか!!
もしかしたら、今こうして先輩を抱いているのは、忍足先輩になっていたかもしれないのだ。
そう思うと、俺は勝って嬉しいやら、意味もなく忍足先輩に腹が立つやら、ヘタレな自分にむかつくやら、訳が分からなくなってしまった。
(くそっ!)
心の中で悪態を吐いて、それを吹っ切るように先輩の身体に激しく楔を打ち込む。
「ちょうたろ……ッあ………あッあッ………!」
先輩の苦しげな喘ぎが俺を一層駆り立てる。
ぞくぞくと全身が戦慄いて、俺は我慢の限界を超えた。
先輩の腰をぐっと引き寄せて、俺はその最奥に熱い粘液を流し込んだ。
ぎゅっと握り込んだ先輩のペニスからも、どくん、と精液が迸るのを感じながら。---------トントン。
セックスの余韻に浸って、ぐったりと宍戸先輩の身体の上で伸びていると、部室のドアをノックする音が聞こえた。
「……お、おい長太郎っ!!」
俺の身体の下で同じようにくったりとしていた先輩が、ぎく、と身体を起こす。
「……入るぜ?」
ドアの外の声は、跡部先輩だった。
「ちょ、ちょっと待てっ!」
宍戸先輩が慌てて言ったが遅かった。
ドアが開いて、跡部先輩が入ってきた。
跡部先輩は、ソファの上の俺達を見て、眉を盛大に顰めて、それから肩を竦めて溜め息を吐いた。
「な、なんだよ………!」
宍戸先輩が怒気を含んだ声で威嚇したが、全然効果がなかった。
なぜなら、ソファの上で俺達はまだ繋がったままだったから。
「いや、別に……まぁ、いいけどよ……」
ちらちらと俺達を見ながら、跡部先輩が着替えを始めた。
「その椅子、俺も座るんだから、よーく拭いとけよ、宍戸。……しっかし……おまえらってホント、場所選ばねえんだな。忍足から聞いてたけどよ。……一年中発情期ってか?」
「な、んだとっ!!」
「突っ込まれたままでいきがってんじゃねえよ、宍戸……」
跡部先輩の言葉に、宍戸先輩は顔を真っ赤にして唸った。
「さっさと出てくから、まぁちょっと待ってろよ。……なんなら、もう一回やってけば?」
跡部先輩がくすくす笑いながら言う。
「しかし、宍戸ってイイ声で啼くな………忍足の話はホントだったんだな……」
「……跡部っ!」
「じゃあな、鳳にようく可愛がってもらえよ、宍戸?」
バタン。
ドアが閉じて跡部先輩が出ていく。
「くっそ〜! おい見られたじゃねえか、長太郎っ!」
跡部先輩にさんざんからかわれて、宍戸先輩はすっかり怒っていた。
「どうするんだよ、長太郎!」
「どうするって言われても……」
顔を真っ赤にして怒る宍戸先輩が可愛くて、俺はついにやけてしまった。
「長太郎、てめえ露出狂か!」
「そう言われても……だって、シたかったんだから、しょうがないじゃないですか。そんなに怒っても、可愛いだけですよ、宍戸さん……」
俺は先輩を宥めるようにちゅっちゅっと何回もキスをした。
「おい、誤魔化してんじゃねえ!」
先輩は相変わらず怒っていたが、俺はなんだか嬉しくなって、先輩が嫌がるのも構わず、先輩の顔中にキスの雨を降らせたのだった。FIN
跡部にまで言われちゃあおしまいですな(笑)