夏祭り 《3》
「な、何言って………!」
宍戸さんが蒼白になる。
その愕然とした表情に、オレはますます苛立った。
全然その気がないんだろうか、宍戸さんは。
こんなにオレが宍戸さんを愛しているのに。
毎日宍戸さんの事を考えて眠れないほどなのに。
宍戸さんは全然そんな事、ないんだろうか?
そんなの、------ずるい。
オレばっか苦しくて。
宍戸さんは、全然、オレの事なんて、想ってくれてないんだ。
きっと、どうでもいいとか思ってるんだ。
そんなの、酷い。
許せない------!
オレは宍戸さんの浴衣の帯を乱暴に解くと、それで宍戸さんを後ろ手に縛り上げた。
宍戸さんは抵抗したけれど、でもオレの本気に宍戸さんが適うわけない。
「長太郎っ、よせっ!!」
そんな叱責も、オレには興奮を煽る喘ぎにしか聞こえなかった。
帯で手首をきつく縛り上げて、それから身体を仰向けにベンチに転がして、オレは宍戸さんの両脚を掴んで思いきり広げた。
「……わっっ!!」
宍戸さんが驚愕したような声をあげる。
構わずオレは脚の間に体重を掛けて圧し掛かると、右手で宍戸さんのアナルをまさぐった。
「ひゃっ!!」
宍戸さんが上擦った呻きを漏らした。
双果の奥のひっそりと閉じた入り口は、すぐに探し当てられた。
指を口に含んで、たっぷり唾液を付けると、その指をオレは宍戸さんのそこに突き入れた。
「うぅっ!!」
入り口は固く閉じていたけれど、そこを無理矢理突破すると、中では熱い弾力のある肉壁が、柔らかくオレの指を迎え入れてきた。
火傷するくらい熱い内部。
柔らかくて、ぬめっていて、うねうねと絡みついてくる肉襞。
宍戸さんの中なんだ--------!
オレは一気に血が下半身に集まるのを感じた。
「宍戸さん……ッッ!」
もう何も考えられなかった。
理性も何もかも吹き飛んで、オレは宍戸さんの中に入ることしか頭になかった。
浴衣をもどかしげに捲ると、オレは自分のいきり立ったペニスを引き出した。
宍戸さんが真っ青になってオレを見上げてくる。
「ちょ、たろ………」
心細そうな声。
普段のオレだったら、そこで辞めていただろう。
でも、その時はもう、宍戸さんの事なんて思いやることができないほど、オレは頭に血が昇っていた。
一刻も早く、下半身の熱を放出したかった。
宍戸さんの中に。
ペニスに唾液をなすりつけてべとべとにして、オレはそれを一気に宍戸さんのアナルに突き入れた。
熱く硬い肉の輪が、ぎゅっとオレを締め付けてきたけれど、それに構わず突き通す。
「………………ッッ!!」
宍戸さんが、背中を仰け反らせて、苦しげに表情を歪める。
そんな顔にも、ぞくぞくした。
「あ………あッ………!」
もう、宍戸さんは抵抗する気力もないようだった。
ずん、と最奥まで貫いて、オレはすぐに抜き差しを始めた。
宍戸さんのそこは、入り口は硬かったけれど、それより奥は信じられないほど柔らかかった。
オレのペニスにやわやわと纏わりついてきて、微妙に蠕動する。
「あ、………あっあっ、宍戸さん!!」
脳が蕩けて、どろどろになった。
身体中が熱く沸き立つ。
グチュグチュという接合部の淫猥な音が、更にオレを煽った。
数回抽送を繰り返すと、オレは呆気なく宍戸さんの奥で弾けた。「う……うぅ………」
遠くから聞こえてくるお囃子の音に混じって、宍戸さんの啜り泣きが聞こえてくる。
オレの腕の中で、宍戸さんは震えていた。
汗の滲んだ額に、短髪が幾筋か張り付いている。
きゅっと顰められた眉と、固く瞑った目が震え、目尻に赤く涙の跡がついている。
どうしよう----------!
理性が戻ってくると、オレは真っ青になった。
さっきの天国のような幸せがあっという間に消え去って、オレはがくがくと身体を震わせた。
--------どうしよう。
とうとう、宍戸さんを………強姦してしまった。
力に任せて抱くなんて、………とんでもない事をしてしまった。
--------どうしよう……!!
オレは強張った身体を漸くのことで動かして、宍戸さんから離れた。
ずる、と萎えたペニスを宍戸さんから抜くと、宍戸さんが痛みを堪えるかのようにひくっとしゃくりあげた。
「宍戸さん………」
こんな時まで、宍戸さんってなんて可愛いんだろう、と思わずじぃんときてしまって、オレは自分に呆れた。
本当に、どうしようもないバカだ、オレ。
こんな風に無理矢理ヤったりして、プライドの高い宍戸さんに許してもらえるはずが無い。
もしかして、もう、オレ達、終わりなんだろうか?
そんな事…………でも、宍戸さんは…………。
オレは眩暈がした。
背中に冷水でも浴びせかけられたかのように背筋が凍った。
どうしよう、………宍戸さんに嫌われたら。
宍戸さんなしで生きてくなんて、できない。
でも、こんな事してしまって…………。
「……宍戸さん………」
オレはおずおずと宍戸さんに声をかけた。
袖に入れていた汗拭きのタオルを水道で濡らして、宍戸さんの汗と精液で汚れた身体を拭く。
宍戸さんはしゃくりあげながら、じっとオレにされるがままになっていた。
殆ど肩にひっかかっているだけの浴衣をそっと着せかけ、帯を締めてやると、宍戸さんは鼻を擦って乱暴に涙を拭いて、ベンチに座り直した。
「長太郎………」
「は、はい……」
全身が強張った。
そのまま宍戸さんの前に立ちつくしていると、
------バシッ!
盛大に頬を張られて、オレは目から火花が飛び散った。
思わず蹌踉けて、地面に尻餅をつく。
「この、馬鹿野郎っ!!」
宍戸さんが大声を出した。
「てめっ、よくもっ!!」
「す、すんません………!」
ちかちかする目とひりひりする頬を押さえて、オレは涙ぐんだ。
やっぱり、怒っている。
そりゃ当然だよな。
あんな酷いことされて、怒らない人、いるはずない。
オレ、最低なことしたんだもんな。
「おい、立てっ!」
「はいっ!」
ふらつきながら立ち上がると、
-------バシッ!
今度は反対の頬を張られて、オレは地面に派手に倒れ込んだ。
あぁ、終わりだ……………!
地面に仰向けに転がったので、夜空が目に飛び込んできた。
木立の間から、明るい満月が見え隠れしている。
それをぼんやり見ていたら、不意に涙が溢れてきた。
「う………うく………っっ!」
我慢しようと思ったのに、駄目だった。
涙が後から後から溢れてきて、オレはとうとう堪えきれなくなって、身体を丸めて泣き出した。
「う、うぇっ………うぇぇっ……!!」
「おい、長太郎……」
宍戸さんが呆れたような声を出した。
嫌われただけじゃなくて、軽蔑されたかな。
でも、涙は止まらないし、宍戸さんには嫌われてるし、…………もう、どうでもいいや。
頭を抱えて地面に寝転がったままで、オレはひたすら泣いた。
泣いている間に、宍戸さんが立ち去るだろうと思っていた。
もう、こんなオレの事なんて、見限って。ところが。
「おい、……長太郎……」
不意に、耳元で宍戸さんの低く囁く声がして、オレはびくっと顔を上げた。
宍戸さんがじっとオレを見ていた。
「……宍戸さん……?」
ふ、と宍戸さんが笑った。
それは、すっごく自然な、ちょっと恥じらうような笑い方で、オレは胸がドキン、とした。
なんて、可愛いんだろう--------!
ああ、オレ、やっぱりあきらめきれない!
「……バカ……」
唇に、温かな感触がした。
宍戸さんの、ちょっと震えている唇。
サクランボみたいに柔らかくて、赤くて、甘い唇。
「宍戸さん………」
オレは呆然として、宍戸さんを見上げた。
「バーカ………何駄々っ子みてえに泣いてんだよ」
「だ、だって……オレ……」
「ほら、起きろよ」
宍戸さんがオレに手を伸ばしてきた。
その手に捕まって立つと、宍戸さんが肩を竦めた。
「もう怒ってねえからさ……泣くの止めろよ」
「は、はい……でも……」
「なんだよ、長太郎、後悔してんのか?」
「い、いいえ、宍戸さんとやれて、オレ、本望です! 後悔なんかしてません!……で、でも……」
「まぁ、オレもついさっきまでは怒ってたんだけどよ……」
宍戸さんが苦笑した。
「でも、おまえがさ、さっきはあんな事したくせに、今は全然子供なんで、なんかどうでもよくなっちまった。……おまえって、大人っぽいかと思うとそうでもなくて、よく分かんねえや」
「す、すんません……」
「なんだよ、謝るなよ。……したかったんだろ?」
「はい!」
「元気良く返事するんじゃねえ」
「あ、……すんません……」
「ま、でもよ……ベンチってのは勘弁してほしいな。やるならベッドの上とか……」
とそこまで言って、宍戸さんは顔を真っ赤にした。
--------えっ、ベッドの上って?
オレ、耳が変になっちゃったのかな?
オレが驚いたのが分かったんだろうか。
宍戸さんが恥ずかしげに視線を逸らした。
「ちえっ、オレまで変になっちまったみたいだ。……おい、長太郎、帰るぜ」
「……は、はい!」
「おまえ、オレのことおぶってけよ。おまえのせいで、ケツが痛くて歩けねえ」
「……すんません!」
「謝るのはもういいからさ……」
宍戸さんがくすっと笑った。
良かった………………!!
宍戸さんが怒ってない……どころか、今度はベッドの上でだなんて-------!
こんな幸せあっていんだろうか?
オレは信じられなかった。
でも、オレの背中におぶさった宍戸さんが、オレの首に腕をしっかりと巻き付けてきて、甘い吐息までオレに吹きかけてくる。
「宍戸さん、痛くないですか?」
「バカ。変な事聞くな……」
宍戸さんの掠れた恥ずかしそうな声が、耳に甘く響いた。
嘘みたいだ。
なんか、オレ、夢見てるんじゃないだろうか?
------いや、違うよな。
オレ、本当に宍戸さんとセックスして、そんで宍戸さんがオレを許してくれて、そんで今度はベッドの上って---------!!
ああ、オレ--------!!オレはうきうきした足取りで、宍戸さんをしっかりとおぶって家路についたのだった。
FIN
チョタには甘い宍戸v