忍足の災難 《3》
「てめえら、いー加減にしろよ」
鳳が絶頂に達して、満足げに息を吐いて忍足から離れたとき、後ろで呆れたような低い声がした。
「あ、跡部さん………!」
鳳がぎょっとして大きな声をあげる。
部室のドアのすぐ側の壁に腕組みして寄りかかって、跡部が眉を顰めていた。
「す、すんません、すぐに帰ります!」
さすがに部長の跡部に見られて、鳳も宍戸も狼狽した。
「オレも帰るぜ、長太郎、ほら!」
宍戸が慌てて服を着替える。
「跡部が出てきたんじゃ、俺たちも帰ろうぜ?」
「忍足っ、また明日っ!」
岳人とジローの二人もそそくさと出ていって、数分後には部室には、まだ荒く肩で息を吐いて、足をソファの上で広げたままの全裸の忍足と、跡部だけが残った。
「忍足………またやられたのかよ……」
跡部がふうっと深く溜め息を吐いて、額を押さえた。
「ははは、跡部……見てたんか……?」
忍足は力無く笑った。
「しかも、あの宍戸にまでやられるとはな……」
「俺もびっくりしとるんやけど……」
「しかし、あいつらもひでえよな。おまえ、一回もイかしてもらってねえだろ? ただ突っ込まれてただけじゃねえか?」
「あ?……あ、ああ………そうやな………」
忍足も頷いた。
そう言えば、鳳や宍戸に突っ込まれ放題で、自分はイってなかった。
跡部が溜め息を吐きながら、忍足に近寄ってきた。
「忍足は、ジローや岳人に甘過ぎるんだよ。あいつらの我が儘許してるから、こういう事されんだぜ?」
「そうなんやけど………あ、跡部っ!」
突然、跡部が忍足のまだ勃ったままのペニスをぎゅっと握り込んできたので、忍足は驚いた。
「オレが抜いてやるよ……」
「……え、ええって……」
「遠慮すんなよ、オレぐらいには我が儘言ったらどうだ、忍足?」
「……跡部、優しいんやな……」
ジローや岳人とは全く違って、自分の身を労ってくれている跡部に、忍足はじーんとなった。
「おまえがあんまりお人好しだからよ……」
優しい、と言われて恥ずかしかったのか、跡部が頬を少々赤らめた。
「あ……とべ………は……ッッ」
さんざん後ろから前立腺を刺激されていたせいか、忍足のペニスは跡部に扱かれて、あっという間にびくびくと脈打ち、先端からとろりと涙を流し始めた。
「あ………とべ………ちょ、ちょぉ待ってや………!」
すぐにでもイきそうに昇り詰めて、忍足は慌てて跡部の手を押さえた。
「……なんだよ?」
「オレ、跡部と一緒にイきたいねん………な、ここ、つこて?」
ここ、と言って忍足がさっきまで鳳や宍戸を受け入れて赤く熟れているアナルを指で示してきたので、跡部は秀麗な眉を顰めた。
「痛えんじゃねえのか? おまえに痛い思いとかさせられねえよ……」
「跡部だったら大丈夫や。……な? オレだけイくの、ちょぉ寂しいし………跡部も一緒に、イコ?」
「忍足………」
跡部が目を瞬きながら忍足を見て、それから自分のハーフパンツを下ろしてきた。
「痛かったら、すぐやめるからな……」
「大丈夫やって………はよ、来てや……」
後孔に、跡部の滾ったものが押し当てられる感触がして、忍足は息を詰めた。
「…………!!」
宍戸や鳳の放った粘液でとろとろに解れていたそこは、跡部のものをすんなりと受け入れた。
「痛くねぇか?」
跡部が腰を突き入れながら、身体の下の忍足に聞いてきた。
「だ、大丈夫、ええ気持ちや……跡部だからかいな……」
「バーカ………」
跡部が照れくさそうに言う。
同時に、激しく抜き差しを始めた。
「……く………う……あ、とべ…………ッッ!」
跡部のペニスが、忍足の感じる点を何度も突いてくる。
先程手淫されて十分に興奮していた身体は、あっという間に絶頂の階段を駆け上がった。
「あ………い………ッッ!!」
身体ごと波に浚われたような、そんな浮遊感がして、次の瞬間、忍足は跡部と自分の腹の間に、白濁した粘液を勢いよく迸らせていた。「……で、どうするんだ? ジローや岳人にちゃんと言うのか?」
欲望を吐き出して、満足した身体をシャワーで流してさっぱりして、帰り支度をしている忍足に、隣で着替えていた跡部が話しかけてきた。
「うーん、そうやな………なんか言いにくいんや……」
「おまえって、ああいう性格に弱いよな……」
「そうかもしれんな………なんや弟みたいで……」
「弟があんな事するかよ……」
「まぁ、そうなんやけど………」
「……あのな、忍足」
着替えを終えた跡部が、忍足の方を向いてきた。
「オレはおまえを心配してんだぜ? 今のままじゃ、絶対身体壊すって!」
「………でもなぁ」
「でもじゃねえだろ! それともなにか、忍足、テメェは突っ込まれるのが好きなんかよ?」
「…………」
跡部に詰め寄られて、忍足は困惑した。
「そ、そやな………好きかも……」
「テメェ、バカかよ!」
跡部が盛大に溜め息を吐いた。
「……あ、でも、オレなぁ、跡部に突っ込まれるのが一番気持ちええみたいや……」
跡部の機嫌を損ねたかと思って、忍足は慌てて付け加えた。
「そういう事聞いてんじゃねえだろ。……おまえって、黙って立ってれば、すっげぇ格好良くて女どもの憧れの的なのによ……」
そう言って、跡部が額に手を当てる。
「なのに、どうしてこんな性格なんだか……」
「ヘンか? オレ?」
「……十分、ヘンだよ……」
「そうかなァ?」
「……まぁ、いい。………じゃ、忍足、今度ジローや岳人がちょっかい出してきたら、こう言えよ。『オレは跡部と付き合うって約束したので、やりたかったら跡部に言ってこい』ってな」
「…………」
「……いやかよ?」
「や、嫌やないけど………そうしたら、跡部、オレとずっとやってくれるんか?」
「……やってほしいのか?」
「そうやな……」
忍足は考えた。
跡部は優しいし、何より自分を気遣ってくれる。セックスも巧い。
「やってくれるんなら、是非頼むわ」
「……忍足……」
跡部が肩を竦めて複雑な表情をして溜め息を吐いた。
それから、一言、
「じゃ、やってやるよ、これからずっとな」
と言って笑ったのだった。
FIN
跡忍だったりしてv