忍足の災難−出会い篇− 《3》
「ぅ………ぁ……やめ……ッッ」
どうしてこんな事になったのか。
快感に霞んだ頭で忍足は泣きそうになりながら考えていた。
ソファに身体を押し付けられ、両脚は思い切り開かされている。
そして、信じられないことに、自分の性器をジローが口に含んで舐め上げているのだ。
びちゃびちゃと淫猥な音が響いて耳を塞ぎたくなるのに、腕を縛られているせで身動きが取れない。
「ジロ……やめ……ッ」
「だーめ、忍足っ、こんなになってるくせに、言ってることが違うよ?」
ジローがくすくす笑って、勃起した忍足のペニスをピン、と指で弾いてきた。
「ぅあ……ッッ」
「おいジロー、そろそろいいだろ?」
隣で焦れったそうに見ていた向日が、ズボンを下ろしながら言ってきた。
「俺もう我慢できないって」
「そうだね……こっちも結構解れたかな?」
そう言ってジローは、忍足の後ろに埋めていた指を動かした。
「………ッッ!!」
「忍足って感度いいよね……」
ジローが嬉しそうに笑う。
「こっちもでっかいし、後ろも敏感だし……」
埋め込まれた指を動かされて、忍足は上半身を突っ張らせた。
稲妻のように、鋭い快感が背骨を駆け上がってきて、脳を蕩かしてくる。
こんな事をされているのに快感を感じてしまう自分が情けなくて、自然と涙が出てきてしまう。
「忍足でも泣くんだ……可愛いなぁ……」
ジローがにこにこした。
「忍足っていっつも落ち着いてるから、かえって新鮮!……もうそろそろいいかな?」
「そうだよな! じゃあ、俺、最初な!」
向日がもう我慢できないという感じで言って、忍足の脚の間に割って入った。
「ジロー、ちゃんと脚もっててくれよ?」
「うんッ」
「ガクト…やめッッ!」
「やだよ!」
向日が元気良く言ったかと思うと、次の瞬間、忍足は目の前に閃光が散った。
「………………ッッ!!」
小柄な向日なのに、入ってきたものは自分の身体を切り裂くかと思うほどの衝撃だった。
針が何千本も一気に突き刺さったような痛みが、脳に襲いかかる。
全身から冷たい汗が噴き出した。
「忍足、痛がってるよ……?」
ジローが少々不安げな声を出した。
「ま、しょうがねえって……いくら解したって少しは痛えよ……悪い、侑士!」
ぐっと根元まで忍足の中にペニスを突き入れて、向日が息を吐いた。
「でもさ、俺、侑士の最初のオトコだぜ! やったね!」
「ちぇっ、オレがなりたかったのにッ……ガクト、早く代わってよな!」
「まぁまぁ、ちょっと待てって。俺だって今感激してるんだからさ。…少し侑士を味わわせてくれよ」
(勝手なことばかり、言いくさって……!!)
痛みで死にそうになりながらも、忍足は心の中でそう悪態を吐いた。
一体、どうして、こんな…………ガクトに犯されたりしているのか?
どう考えても変だ。
だって俺なんて、………犯して楽しいんか?
こんな図体もでかい、むさいオトコを犯して何が楽しいんだ?
どう考えても分からなかった。
「ぅ………ッッ!」
もっと考えようとしたが、向日が動き始めたので、忍足の思考は中断した。
「うわぁい最高!!」
向日の感激したような声がする。
痛みと疼くような変な感覚とに身体を支配され、忍足は無意識のうちに向日に合わせて腰を振っていた。その後、どのくらい犯されていたのだろうか。
向日が忍足の中で達して身体が離れたのをほっとしたのも束の間、すぐに向日よりも大きなジローが入ってきた。
ジローは向日より長かった。
息も絶えるほど揺さぶられて、もう忍足は思考力など吹き飛んでいた。
痛みなのか快感なのか、身体の感覚もおかしくなっていたし、ただただ身体が熱くて、その熱を逃がしたくて、ジローに合わせて動いて、自分も射精した。
こんなに長い間、しかも激しいセックスをしたことなどなかったので、忍足は疲労困憊していた。
「ごめんね………」
満足して離れたジローが首を傾げながら謝ってきたときも、忍足はぼんやりと重い瞼を開けてジローを見るだけだった。
「ちょっとやりすぎかな……」
「いくら侑士でも、二人同時は無理なのかな?」
向日とジローがぼそぼそ話しているのを頭の片隅で聞きながら、ソファに脱力していると、そっと冷たいタオルが押し当てられた。
「拭いてあげるから、忍足、ちょっとそのままでいてね……」
縄も解かれ、向日とジローの二人がかりで綺麗に身体を拭かれる。
驚愕とか、憤慨とか、その他もろもろの情けない感情がせめぎあってぐちゃぐちゃに乱れていた忍足の心だったが、向日とジローが自分を申し訳なさそうに伺いながら、丁寧に身体を吹いてくれるのを結構心地よく感じていると、だんだん憤慨もおさまってきた。
何度も何度もタオルを替えて、二人が身体を拭いてくれる。
「忍足………ごめんね?」
ジローがふわふわした髪の間から申し訳なさそうに覗いてきたとき、忍足はなんだかどうでもいい気になっていた。
別に、犯された言うても、俺オトコだし。
まぁ、ちょっとびっくりはしたけれど、でもそんな大した事じゃあらへんし………。
きっとこいつらもちょっとふざけただけやろうし……。
忍足は、肩を竦めて溜め息を吐いて起きあがった。
「つ……ッ」
「……痛い? 忍足?」
「……まぁ、大丈夫や………」
蹂躙された箇所がずきっと痛んだが、忍足は頭を振って立ち上がって、衣服を身に着け始めた。
「侑士、怒ってる?」
向日がこわごわ忍足を覗き込んできた。
自分より頭半分低い向日のつぶらな瞳を見ていると、忍足はばかばかしくなってつい笑い出してしまった。
「あはは、もうええよ。……なんや、気ぃ抜けたわ……」
「怒ってねえ?忍足?」
「怒るもなんも、なんや、よう分からん。……さっきは驚いたけどな……もうええよ……」
「良かった! 怒ってないんだ!」
ジローが歓声を上げる。
「じゃ、じゃぁさ、忍足っ、俺たち、忍足の特別な友達だよね!」
「……そうか?」
「だって、もう俺たち、他人じゃないもんね!」
「オレ、忍足とセックスしたし!」
「……ちょっと待ち……」
「おい、ジロー、言っとくけど、侑士の一番は俺だぜ! なぁ、侑士! 侑士と最初にやったの俺だよな!」
「最初って……あのなァ……っていうか、もうおまえら喧嘩するなって!」
二人がまたつかみ合いでもするような雰囲気になってきたので忍足は慌てた。
「ええやんか、……別にそんなの」
「そんなのって事ねえぜ! やっと侑士をものにできたのに、ここでジローに取られたくねえよ!」
「忍足を最初にやろうと思ったの、オレだって、ガクト! オレ!」
「…………」
忍足は頭に手をやって溜め息を吐いた。
「もうどっちでもええやん………」
忍足は、他人が諍いするのを見るのはあまり好きではない。
できたら冷静に、穏やかに話し合ってもらいたい。
この時も、目の前の二人の剣幕に少々頭痛がしていた。
しかもその原因が自分なのだから、一層だ。
「どっちでもって、忍足は俺たち両方相手にしてくれるのかよ!」
「……分かった分かった……そうするわ……」
「えっ、本当? 本当に俺たちの両方?……両方とセックスしてくれんの?」
「……な、なんでセックスって……」
「セックスしてくれなきゃやだっ!」
ジローが駄々をこね始めた。
慌てて忍足は言った。
「分かったって、するわ!……ちゃんとするから……な?」
「やった-----!忍足っ、大好き〜!」
ブチュ、と唇にキスされて忍足はぞぞっとした。
「侑士………ホントだな?」
「あ、ああ……」
言ってしまった手前、今更否定もできない。
頷くと、向日が苦笑した。
「ジローと共有かよ、まぁ、しょうがねえか! おいジロー、良かったよな!」
「えへへ、まぁ、しょうがないね。ガクトと一緒で3人で楽しめるし」
…………3人………?
……っていうか、どうして俺が……オトコ相手するんや………?
更に頭痛がしてきた。
しかも尻もしくしく痛む。
「ほな、俺帰るわ………」
よろよろと立ち上がると、ジローと向日ががしっと忍足の腕に縋り付いてきた。
「一緒に帰ろう!」
「俺、カバン持ってやるよ!」
二人にまとわりつかれながら、忍足は頭を振りつつ、部室を出た。こうして忍足は、外見に似合わず、やられまくるセックスライフに足を踏み入れる事になってしまったのである。
FIN
忍足の素敵な生活の始まりでしたv