スキー 
《5》















「…………っっ!」
あっという間に頭の中が真っ白になって、手塚は不二の口の中に精液を放出していた。
呆然として不二を見ると、不二の喉がこくり、と動くのが見えて、手塚は赤面した。
頭がくらくらする。
こんな事、まさか………。
------でも。
ぼんやりと呆けていると、不二が手塚の足をぐいっと持ち上げてきた。
「あ……ッ!」
バスルームから取ってきたらしいローションの瓶を開けて、不二がとろり、と液を手塚の奥まった蕾みに垂らしてきた。
「ふ、不二。ちょっと待て……」
「駄目……」
不二が手際がいいのにも、手塚は狼狽した。
「おまえっ、もしかして、慣れてるのか?」
「何言ってるのさ」
不二が憮然とした顔をした。
「キミが初めてだよ、こういう事……」
「し、しかし…………」
「……まぁ、キミとこういう事したいなって思って、いろいろと頭の中で考えてはいたけどね……?」
不二の返答に顔が赤くなる。
視線を逸らした所に、不二がくい、と指を後ろに挿入してきた。
「……っっ!」
頭の先まで衝撃が突き抜ける。
なんとも表現しようのない、初めての感覚だった。
「あ……あ……」
先程達した余韻と、後ろからの刺激が相俟って、手塚は目の前が霞んだ。
不二に、どこをいじられているのかとか、こんなはしたない格好を不二に見せているとか、考えると羞恥で死にそうになるのに、不思議と嬉しかった。
不二とこんな事をしているなんて、夢のようだったが、でも本当に今、俺は不二としているんだ。
そう思うとなぜか涙が出てきた。
「手塚……いい?」
指を何本か入れて内部をまさぐっていた不二が、押し殺したような声で手塚に聞いてきた。
「…………」
不二もせっぱ詰まっているのを感じて、手塚は微かに頷いた。
目を閉じて、足を開いて、不二が入れやすいように腰を浮かせる。
「手塚……好きだよ………」
言葉と共に、ぐっと不二が腰を沈めてきた。
「…………!!」
指とローションである程度解れてはいたが、さすがに不二自身が入ってくると、衝撃と痛みが全身を走り抜けた。
内臓がぐっと押し上げられ、身体が内部から不二に浸食されていくような、そんな感覚がする。
「う………く………」
腰全体が痛みに痺れ、思わず頭を振る。
「手塚、ごめんね……手塚………」
不二も限界なのだろうか、謝るように言いながら手塚の腰を掴むと、ベッドに押し付けて律動を始めた。
「……う……う…う………く……ッッ」
揺さぶられる度に、目の裏に閃光が走り、喉元まで胃が迫り上がってくるような圧迫感がする。
ずしん、と楔が打ち込まれ、腰全体が重く熱く、痛いのか快感なのか区別の付かない衝撃が全身を駆けめぐる。
不意に涙が溢れてきて、手塚は嗚咽を漏らした。
「好き…………手塚……」
不二の宥めるような声が、手塚の全身を更に熱く蕩けさせる。
まさか、不二とこんな風に一つになって、快感を共有する瞬間がくるとは。
今自分が不二に抱かれていることが、まだ信じられなかった。
「不二………不二……」
確認するように苦しい息の下から不二を呼ぶと、応えて不二が手塚をきつく抱き締めてくる。
「………ぅうッッ!!」
不二の熱い迸りを身体の奥に感じた瞬間、手塚は堪えきれず唇を噛んで泣き出していた。















次の日は、ホテルで朝食を取ると、すぐに東京へ向かって出発した。
車に乗って手塚は、白い山並みが遠ざかるのをぼんやり眺めていた。
「今日はスキーできなくて残念だった?」
隣の不二が問い掛けてきた。
「いや、別に……」
「もっと、今日は時間があってもスキーできそうにないよね、キミ?」
不二がくすっと笑って言ってきたので、手塚は真っ赤になって不二を睨んだ。
昨日の夜、手塚は不二と関係を持った。
そのせいで今日は、身体中が、特に不二を受け入れた箇所が重く痛んで、手塚はよく歩けなかったのだ。
「手塚君、随分スキー熱心にやったのね……」
不二の母親などは、手塚の筋肉痛がスキーによるものだと思っているらしく感心していたが、手塚は顔から火が出るかと思うほど恥ずかしかった。
「ねえ、手塚………」
ふい、と窓を外を見ている手塚に、不二がそっと話しかけてきた。
「僕、すっごく今幸せ………」
「…………」
優しく手を握られる。
胸がズキン、と疼いて、手塚は身体が震えた。
「手塚はどう?………僕とおんなじように、思ってくれてる?」
「………」
「僕、スキーに来て本当に良かったよ。……こんなに嬉しい旅行、生まれて初めて……」
そんな風に真正面から言われると、手塚はどうしていいか分からなかった。
「…………」
顔を真っ赤にして、ほんの少し不二を見て、不二がにこにこ自分の返答を待っているのに気付いて、僅かに頷く。
「ね、またスキー一緒に行こう? 今度はキミと二人きりでずっと滑りたいな……」
「あ、ああ………」
なんだか、夢みたいだ。
不二と一緒にこうやって話していて、またスキーに行く相談をしているなんて。















手塚は不二の手を、そっと握り返した。
雪国から出てきた車には、まだ真っ白な雪が残り、太陽に眩く煌めいていた。

















FIN

初体験で泣く手塚……乙女過ぎかな(笑)