love affair 《8》
「こんな、セックス目的だけの場所で、しかも全部脱いでするなんて、初めてだったからだ。
跡部とは、道路とか、部室とか、そういう所でしかしたことなかったから。
跡部の裸を見るのも初めてだった。
均整の取れた、ギリシャ神話の男性神みたいに完璧な身体だった。
筋肉も美しく付いてるし、バランスが良くて、足が長くて、本当に綺麗だった。
オレがぼけっとして跡部に見とれていると、跡部が眉を吊り上げて笑った。
「なに見てんだよ、そんなにいいか、俺の身体?」
「うん、すごい、綺麗………いいな、オレも跡部君みたいになりたいな……」
素直に讃美すると、跡部がくすくす笑いながら、オレをベッドに押し倒してきた。
「テメェだって、結構いい線行ってんだろ?」
「オレは……だめ、脚が短いよ」
「バーカ……俺様と比べるから悪いんだ」
跡部の身体はひんやりと冷たくて、肌が触れ合うと、オレはぞくぞくと戦慄が走り抜けるのを感じた。
身体の奥底が疼いてきて、焦れったいような、甘い痺れが広がる。
「跡部君………」
深く口づけられて、オレは目を閉じた。
跡部の舌が口腔内に入ってきて、オレの舌に絡みついてくる。
「ん……ん………」
こんな風にキスされるのも初めてだったので、オレは感激して夢中になった。
深くキスされると、愛されてるみたいな気になる。
錯覚だって分かってるけど、でも、今だけ夢見ててもいいよね。
「舐めろよ……」
キスの余韻にうっとりと浸っていると、突然目の前に勃起したペニスを突き出されて、一瞬ぎょっとする。
跡部が膝立ちで、オレの顔にペニスを擦り付けてきた。
「ん………」
両手を添えてそれを口の中に頬張り、先端まで歯と舌で扱きあげる。
跡部が感じてくれるように、一生懸命オレは跡部のペニスを扱いた。
それはすぐに硬く張り詰めて、先端からのほのかに苦いような、甘いような液体がオレの舌を痺れさせた。
「もういい……おい、用意しろ」
不意に跡部が離れて、洗面台の方からローションの瓶を持ってきた。
「これで自分で準備しろ」
「う、うん……」
跡部がにやにやしながらオレを見ている。
オレは赤面して、でも跡部によく見えるように脚を広げて、手の平にローションを垂らすと、指を濡らしてアナルに差し入れた。
「…う……ん………」
昨日使ったばかりだったから、アナルはすぐに解れた。
ぐちゅぐちゅ、と音をさせて指を出し入れして、跡部に見せる。
跡部が唇の端を上げてあざ笑うかのような顔をしてオレを見ている。
恥ずかしい------けどいいんだ。
跡部君が楽しんでくれるんなら。
「あ、跡部君、……もう大丈夫だよ……?」
「じゃあ、後ろを向け」
跡部が言ってきたので、オレは身体を起こしてベッドの上で四つん這いになった。
「……こう?」
「尻を上げろ」
できるだけ尻を上げて、跡部にアナルが見えるようにする。
「千石、テメェもほんと、恥じらいがねえな……丸見えだぜ?」
跡部がくすっと笑って、それから、
「じゃあ、行くぜ」
と言って、おもむろにオレの中にペニスを突き入れてきた。
「……う………!」
ローションと指で十分解れていたから、痛みは全くなかった。
ただ、重い衝撃と、内蔵が押し上げられる圧迫感、それから切羽詰まったような快感が突き上げてきた。
ああ、…………気持ちがいい。
跡部君が入ってきてるんだって思うだけで、もう、身体全部が蕩けそう。
それに、跡部のペニスが、オレの感じるところを容赦なく突いてきて、そのたびにオレの身体はがくがくと震え、快感で脳が沸騰した。
「あ、う……ぅ…く………んん……ッッ!」
跡部がオレの腰を掴んで、激しく抽送を始めた。
「あ……ああ………あっあっ……駄目………跡部くんッッ」
「駄目じゃねえだろ、千石。……もっとだろうが? あァ?」
跡部が笑って、一層激しく突いてくる。
「あ、も、もっと………うッッ!!」
急に跡部が、オレのペニスをぎゅっと掴んできた。
目の前に火花が散って、オレは喉を詰まらせて呻いた。
「あ、……あッ……あとべ………くん……う………く……ッッッ!」
前と後ろから責められて、オレは何も考えられなくなった。
ここはラブホだから、いくら声を出しても大丈夫だし。
せっかく気持ちいいのに、我慢するのもばかみたいだし。
そう思うと、オレはあられもなく泣き叫んでいた。
「あ、跡部君ッ……い、いいッ………ああ……イく……イくよ………ッッッ!!」
一瞬、目の前が真っ白になって、頭の中がぱぁんと爆発した。
下半身から全ての血が出ていってしまうような流出感がして、オレは跡部の手の中にどくどくと精液を放出していた。
ぐっと一際深く突かれて、オレの中の中に、跡部の熱い粘液が流し込まれるのを感じながら。
「やっぱ、テメェは最高だぜ……」
ぐったりとベッドに突っ伏して、はぁはぁと肩で息を吐いていると、満足そうにそう言って、跡部がオレの頭をこづいていきた。
「そ、そうかな……」
跡部がそんな風に手放しで褒めてくれるなんて思いもよらなかったので、オレは思わず赤面した。
「跡部君が上手だからだよ…」
「まぁな、それは言われなくてもそうだがな」
跡部が上機嫌で言いながら、オレを抱き込んできた。
「千石………」
耳元で甘く低い声で囁かれて、首筋の毛が逆立つ。
やっぱり、オレ、跡部君の事、涙出るほど好き。
こんな風にちょっと優しくしてもらえるだけで、もうどうなってもいいっていうぐらい嬉しい。
冷たくされても、酷いことされても、それでもやっぱりオレ、跡部君じゃなくっちゃ駄目なんだ。
「跡部君………」
なんだかそう考えたら、自分が可哀想になってきて、オレは涙が出てしまった。
これって、自己憐憫ってやつ?
いやだな、自分が可哀想で泣くなんて、バカ丸出し。
「おい、何泣いてんだよ?」
跡部はよっぽど機嫌がいいらしく、オレがべそべそ泣いているのを見ても怒らず、優しく抱きしめてきた。
「まるで、処女喪った女みてえだぜ、千石……?」
------そうかも。
だって、オレ、初めてなんだ。
こんなに誰かを好きになったのなんて。
胸が締め付けられるように切なくて、跡部君のなにげない仕草に傷付いて。
跡部君に翻弄されて。
どうしたらいいか、分からないんだ。
「千石………バカだなテメェ……」
跡部がそぉっとオレに頬をすり寄せてきた。
「俺の気持ち、分からねえのかよ?」
「……跡部君……」
涙を舌で舐め上げられて、くすぐったくて首を竦めると、跡部が耳を柔らかく噛んできた。「言わなくちゃ駄目なんかよ?」
「……だって…………」
「バーカ……」
耳に甘く息が吹き込まれる。
「テメェが嫌いなわけあるかよ……誰よりも好きなんだぜ、千石………分かったか?」
「………跡部………くん………」
まさか-------。
跡部君が、そんな事言うなんて。
「分かったら、泣くの止めろよ」
「う、うん……」
でもオレはやめるどころか、一気に涙が溢れ出してきてしまった。
「ごめん、ごめんね……」
跡部君にまた怒られちゃう。
必死で肩を震わせて堪えていると、跡部にぎゅっと抱き締められた。
「ホントにバカだな、テメェはよ」
「うん………」
本当、バカだよね。
だって、………こんなに嬉しいのに、涙が止まらないなんて。
ごめんね、跡部君……。
でも、今だけ許してね。
今だけは、オレ、涙が止まらないんだ。
嬉しくて、感激していて。
「ごめんね………」
何度も小さく言うオレの頭を、跡部はずっと優しく撫でていてくれた。
というわけでラブラブでした。忍足がちょっとかわいそうなのでした(汗)