忍足の災難-不二編- 
《3》














「すごく綺麗……。ボクも、キミみたいに、こんな風に筋肉がついているといいなぁ」
不二が歌うように言いながら、忍足の裸の胸や脇腹、それから太股を触ってきた。
「………でも、ボクが欲しいのは………ここなんだ」
突然ぐい、と膝裏を抱えられ広げられて、忍足は驚愕した。
「ちょ、ちょぉッ!」
「大丈夫、痛くないようにするから」
「いや、その………」
「ふふ、キミのここ、すっごく綺麗……まだ誰もここに入ったこと、無いんだね……」
自分だって見たことの無いような、とんでもない所を不二がしげしげと見て、しかもいかにも嬉しそうに話しかけてくるので、忍足は思わず赤面した。
赤面しただけでなく、もう、どうにでもなれというような、そんな気持ちにまでなってしまった。
不二は、あらかじめ用意しておいたのだろう、ベッドサイドにおいてあったローションをとって、とろりとそれを手に垂らし、その指を忍足の後孔にゆっくりと差し入れてきた。
「ぅ…………」
「……ね? 痛くないでしょ?」
痛いとか痛くないとか、そういう問題ではないのだが-----------。
もう忍足は、何か言う気力もなくなっていた。
ただ目を閉じて、弱々しく首を振るばかりである。
そうしている間にも不二の細い指がすうっと内部に入ってきて、微妙に円を描きながら、中の粘膜を擦ってくる。
「………う………」
変な感じがした。
なんと表現していいか分からないが、焦れったいような、先ほどの射精の余韻が更に腰全体に浸透するような、………一言で言うと、もっと弄ってらいたいというような、微妙な快感だ。
不二は、慌てなかった。
ゆっくりと忍足の後孔に指の抜き差しを繰り返しつつ、周りの柔らかい襞を揉みほぐしながら、さらにローションをたっぷりとつけて、今度は中指も一緒に挿入してきた。
「ぅ………」
ぞくん、と快感が脳天まで突き上げてきて、忍足は全身をびくっと震わせた。
「……ここ、………忍足君のいいところなんだ?」
内部のある点をぐいぐいと突きながら、不二が笑いかけてくる。
「だ、だめや………ちょぉ………」
「……痛いの?」
「ちゃ、ちゃうけど………」
痛くなんかはない。
それどころか、こんな快感を感じたことはなかった。
忍足は混乱していた。
--------------どうしよう。
中に指を入れられて感じてしまうなんて、いったい俺は……………!
「……もう、大丈夫みたいだね……」
不意に指が引き抜かれたと思う間もなく、入り口に熱くく弾力のある肉塊が押しつけられた。
「ふ……じ……」
「力を抜いて、忍足君。……ゆっくり、息を吸って?」
……逆らえない。
忍足はゆっくり息を吸った。
「ゆっくり、吐いて?」
息を吐くと同時に、内部にぐっと灼熱の肉棒が押し入ってきた。
「ダメ、力を入れちゃ。……息を吐いて?」
何とも言えない圧迫感と、鋭い痛みにも似た、全身を駆けめぐる衝撃。
耐えきれずに不二の腕を掴むと、不二が忍足の髪を優しく撫でながら、囁いてきた。
「息をゆっくり吐くんだよ。……そう、上手だね……」
ぐぐっと内蔵が押し上げられ、口から飛び出るような気がした。
「……ほら、全部入った。ねぇ、忍足君……?」
下半身が、まるで自分のものではないかのように熱く蕩けていた。
しかも、ぴったりと結合しているのが忍足にも分かって、あらためて忍足は愕然となった。
「……一つになったよ? 嬉しいな……」
--------確かに。
信じられないことだが、自分の尻の穴に、不二のペニスが根元まで挿入され、ぴったりくっついているのである。
しかも、それが分かっても、気持ち悪くない。
それどころか、不二の入っているところがじんじんと疼いてきて、ぴりぴりとした痛みを感じるのにもかかわらず、もっと何かしてもらいたくなって、忍足は無意識に尻を動かした。
「ふふ、忍足君ったら……」
忍足の動きが分かったのか、不二が嬉しそうに笑った。
「やっぱりキミって、ボクの見込んだ通りだ。こういう事、好きだと思ってたよ?」
「す、好きって………」
「……ね? 好きだよね? ボクのことも、セックスも……」
言うや否や、不二が急に動き始めたので、忍足の思考はそこで途切れた。
「あ、う………うッッ……ぁ………くッ………ッッ!」
不二の動きは激しかった。
忍足は、腰を動かしつつ、必死で不二の動きに合わせる以外なかった。
不二がぐっと、肉棒が全部抜け出るほど引き抜いたかと思うと、勢いよく腰を突き出しつつ、腰をグラインドさせながら、突き入れてくる。
そのたびにがくんがくんと身体が揺さぶられ、忍足の目に映った不二の部屋の天井が激しく上下する。
固く目を閉じて、快感をやり過ごそうとすると、目の裏に極彩色の選考が点滅する。
いつの間にかまた自分も勃起していたらしい。
不二が腰を動かしながら、同時に忍足自身を握ってきた。
忍足は瞬時歯を食いしばって呻いた。
「……一緒にイこう?」
ぎゅっぎゅっと力強く握られ、容赦なく突き上げられて、忍足はもう何も考えられなかった。
目の裏に閃光がきらめく。
全身がふわっと浮き上がり、熱く蕩けていく。
「あ、う……うっ……だ、だめやッッ……あッッ……い……ッッッ!」
不二がひときわ強く最奥まで突き上げ、その奥に熱い欲情を噴出させたとほぼ同時に、忍足も二度目の精を不二の手の中に熱く迸らせていた。















絶頂に達したあとの心地良い疲労感に、全身が包まれる。
忍足はぼんやりとしたまま、不二が自分の体液や汗で汚れた身体を綺麗に拭いていくのに任せていた。
「ごめんね、初めてなのに、……でも、できるだけ痛くしなかったつもりなんだ……」
不二に、頬に軽くキスをされながら囁かれ、忍足は一気に羞恥心が込み上げてきた。
-------なんてことだ。
いったい俺は……どうしてこんな事、してしまったんや………。
考えただけで……いや、考えることなど、恥ずかしくて情けなくてできやしない。
………男と寝てしもうた。
しかも、よりにもよって、青学の不二や。
さらに、なんと抱かれる側になってしもうた。
男の面目、丸つぶれや。
忍足は頭を振って眉を顰めた。
「……痛かったの?」
不二が不安そうに囁いてきた。
「や、……痛くはなかったけどなァ……」
痛く無いどころか、気持ちよくてどうにかなりそうだったのは事実なので、忍足は急いで言った。
「ねぇ……ボクのこと、嫌い?」
「…………」
「ボク、キミのことが好きなんだ。……忍足君は………?」
不二が心細そうに言ってきた。
-------どうして、そんな声出すんや………。
忍足は心の中でつぶやいた。
そんな声出されたら、嫌いだと言えるはず、ないやん。
「………忍足君?」
「……嫌いやないよ……」
「………ほ、ほんと?」
ぱっと花が咲いたように、不二の表情が明るくなる。
「良かった。忍足君に嫌われたらどうしようって……」
そういう割には、結構無理矢理ヤられた気もするが……。
忍足はうさんくさそうに不二を見上げた。
不二が、薄い茶色の瞳を細めて、にっこりと笑いかけてくる。
「ボク、すごく幸せ。………忍足君、好きだよ……」
そっと唇が降りてきた。
忍足は拒めなかった。
どうしてこんな事に……とは思うものの、なんだか、どうでもいいような気もしてきた。
不二がこんなに喜んでるし。
それに、俺も………悪くなかったしなァ…………。















心の中で軽く溜息を吐きつつ、降りてきた不二の唇に、忍足は自分からも唇を合わせたのだった。
















FIN

突発ものでした^^