first love 
《5》















「……いいっしょ?」
さっきと違ってリョーマの声は、手塚がもし拒否をすればすぐにやめるというような気弱な雰囲気を含んでいた。
手塚に許可を求めるようにちょんちょんとつつきながら、手塚の返事をじっと待っている。手塚も男だから、興奮してその状態で我慢している辛さがよく分かった。
リョーマはまず、自分を気持ちよくさせてくれたんだ。
本当は、すぐにでもイきたいだろうに。
そう思うと、そんなリョーマがたとえようもなく愛おしくなって、手塚はうっすらと目を開けて、リョーマに微笑んだ。
「ああ………分かった………」
リョーマが瞳を細める。
「部長……好きッス……」
リョーマに好きと言われる度に、身体が柔らかく蕩けていくような気がする。
「じゃあ、俯せになってもらっていいッスか? こっちのが負担が少ないと思うんで……」
リョーマが伺うように言ってきた時、手塚はなんとかしてリョーマを喜ばせたい、という気持ちになっていた。
「……こうか?」
四つん這いになって、リョーマに尻を突き出すようにすると、
「悪いっッスね、部長」
リョーマが申し訳ないというように幾分照れくさげに言ってきた。
四つん這いになった時点で、手塚は覚悟を決めていた。
が、できるだけ手塚を傷つけたくないのだろう、リョーマは、手塚の精液で濡れた指をそっと後ろに差し入れて、丹念にマッサージするように内壁を擦りあげてきた。
「ぅ………く…………ッ」
ざわざわと身体中の毛が逆立つような微妙な感覚がそこから全身に回り、手塚は歯を食いしばった。
「痛くないッスか?」
「………大丈夫だ」
体内に異物の入る感触は何とも言えず、気持ち悪いのか、それとも快感なのか、区別がつかなかった。
ただ、じっとしていいられないような疼きが腰全体を蕩かしてくる。
「あ……う………」
突然鋭い快感が背筋を刺し貫いて、手塚はたまらず呻いた。
そんな所を他人に触れられるのも初めてだったし、内部にまで指を入れられるなど、全く経験がない。
今まで排泄器官としてしか使用したことのないそんな箇所に、リョーマのものを受け入れるのだ、と思うと、とても信じられない気持ちがする。
身体中が火照って恥ずかしくて、それでいてそんな所まで既に見せてしまっているという認識が、手塚を大胆にした。
今まで押し隠してきた気持ちや、自分でも分からなかった心の奥底まですっかり露になって、もう自分を繕わなくてもいいのだ、リョーマに自分を全て見せてしまっていいのだと思うと、そんな状態がかえって心地良くてたまらなく、心が解放された気分になる。
「えちぜん………ッ」
リョーマの指がすっと内部を抉って、それから手塚の内壁を擦りあげてきた。
腰から脳天まで一瞬にして稲妻が走り、手塚はたまらずリョーマの名前を呼んだ。
「……ここがいいって?」
手塚が身体を震わせた一点を、リョーマは器用に指でくいくいと押してくる。
その度に腰がぐずぐずと溶けていくような甘い衝撃が手塚を襲って、手塚はシーツを固く握りしめてなんとかその衝撃をやり過ごそうとした。
「部長……好きッス………」
リョーマが何度も何度もそう言ってくる。
「アンタのこんな姿見られるなんて、俺、感激ッス。部長………俺にも言って下さい。俺のこと好きッスよね………」
「あ……越前………好きだ………好きだ、越前……」
内部で指を蠢かされて、手塚は無意識のうちに何度もリョーマに向かってそう呟いていた。
リョーマが満足そうに笑い、
「部長、……もういいッスか?」
そう言って、手塚の体内から指を抜き取る。
後孔にびたり、とリョーマの熱い肉塊が押し当てられたのを感じ取って、手塚ははっと目を見開いた。
思わず振り返ってリョーマを見ると、リョーマが手塚に許可を求めるような目で手塚をじっと見つめてきた。
かあっと頬が熱くなって、手塚は視線を逸らして微かに頷くと、目を固く閉じてシーツを千切れるほど摘み、次の瞬間に備えた。
「…………ッッ!!」
リョーマは一気に手塚の中に入ってきた。
身体が二つに裂けて、その中にリョーマが入ってくる。
内蔵がぐっと押し上げられて、なんと表現していいのか分からない衝撃が胃を迫り上げてくる。
激しい痛みと、脳を蕩かすような刺激がないまぜになって手塚を襲って、手塚は声も出せなかった。
ひたすらシーツを握りしめて、肩を震わせてリョーマを深く受け入れる。
「部長……一つになったッスよ?」
リョーマがさすがに感激を抑えかねるような声で、手塚に囁いてきた。
「痛くして悪いッス。すぐに済ませるッスから、ちょっと我慢してッス」
そう言うとリョーマは震える手塚の腰をしっかりと掴んで、それから堰を切ったように動き始めた。
手塚にできるだけ負担をかけさせまいとするのか、性急な動きで手塚を追い立ててくる。
「う……あ……く………ッッ」
焼けた火箸が、容赦なく柔らかな肉を割いて突き入ってくる。
火傷でもしたような、ひりひりするような、それでいて全身を蕩かすような甘い快感に、手塚は我を忘れて喘いだ。
内部の感じる点を刺激されて、手塚の性器も先程イったばかりだというのにまた勃ち上がっている。
それに気付いたリョーマが手塚のそれをぎゅっと握りしめ、扱きながら動いてきて、後ろと前の両方の刺激に、手塚は息も絶え絶えになった。
「あッ……く……う……ッッ!」
リョーマの荒い息づかいや、しっかりと掴んでくる手の感触、自分の内部を抉ってくる熱い楔など、そんなものが全てたとえようもない幸福を感じさせ、手塚は我知らず切れ長の目から涙を溢れさせていた。
ずっとリョーマと会わずに過ごしていた月日とか。
久しぶりにリョーマと会った時のざわざわした心のときめきとか。
リョーマと会う前の自分とか。
そんなものが一度に心の中に思い浮かんで、制御ができなくなる。
こんなふうにリョーマと過ごすことができるなんて。
今こうして愛を確かめ合っているというのに、まだ信じられない。
………本当なんだろうか?
身体中が熱くなって蕩けて、痛みやら快感やらもう訳が分からなくなっているというのに。
手塚は何度も何度も今自分を抱いているのがリョーマなのだという事を確認したくて、泣きながら振り返った。
「好きッス……」
そのたびにリョーマが手塚に言い聞かせるように言葉を伝えてくる。
「越前……ぅ……ッッ」
「俺、……もう我慢できないッス」
眉を少し顰めてリョーマがそう言って、一層激しく動き始めた。
手塚も目を閉じてリョーマが与えてくれる快感に没頭した。
















激しい交歓の時間が過ぎて、部屋に穏やかな時間が戻ってくる。
手塚はぼんやりとセックスの余韻に浸りながら、リョーマが自分の身体を優しく濡れタオルで拭くのに任せてベッドに沈み込んでいた。
「越前…………」
自分よりもリョーマの方がずっと大人なように感じて、手塚はふとリョーマの名前を呼んだ。
「なんスか、部長?」
リョーマが手塚の額に軽くキスをしてきた。
「いや、なんでもないんだが……」
リョーマにキスされて、手塚は胸が詰まった。
「好きだ………」
リョーマのことが好きだという気持ちが胸にふつふつとこみ上げてきて、それからリョーマと一つになったのだという事実が今更ながらに胸にしみて、手塚は自分がわけもなく感激していることに気付いた。
「越前………」
「なんスか、部長?」
リョーマが瞳を細めて笑う。
「まさか、今更後悔してるなんて言わないでくださいよ。俺、もう部長のこと絶対離しません」
そう言って頬にキスされて、手塚は頬を赤らめた。
「いや、そんな事はないのだが、その……」
うまく言葉が出ない。
リョーマのことが好きで好きで、こんな関係になれて、リョーマよりも自分のほうがずっと嬉しいのだ、という事を言いたいのだが、いざ言おうとするとなかなか適切な言葉が見付からない。
それでも何か言いたくて、リョーマを見上げると、リョーマがくすっと笑った。
「分かってるッス、部長の言いたいことは。だから無理に言わなくていいッスよ」
そう言ってなだめるように髪を撫でられて、手塚は目の下を赤くした。
「部長……もう、俺達、恋人なんスからね。俺には我が儘とか言って甘えて下さい。俺もいろいろ部長に我が儘言うッスから」
そう言って何度も髪を撫でられる。
「部長の事ずうっと好きで、やっと手に入れたんスから、俺欲深いッスよ。我が儘いっぱい言うッスよ?」
リョーマが苦笑しながら言ってきた。
「越前……」
「まずは、とりあえず毎日部長のこと抱きたいッス。いいッスよね? 部長がいやっていっても、俺部長のこと抱くッスよ?」
「ば、ばか……そんな事、どこでやるんだ?」
「どことか聞いてくるって事は、やるのはOKって事ッスね?」
「……越前!」
リョーマがくすくす笑った。
「部長………」
優しく口付けされて、手塚は目を閉じた。




(好きだ…………)
心の中で小さく言って、手塚もリョーマの唇に自分から唇を合わせていった。





















リョーマが大人すぎな感じですねー^^