法悦 《5》
「う…………ッ!」
久しぶりに不二が体内に入ってくる。
覚えのある甘い戦慄が尾蹄骨から背筋を電撃のように貫いて、手塚は堪えきれずベッドに突っ伏した。
不二が手塚の腰を抱えると、打ちつけるようにしながら激しく律動を始める。
「どう、乾………手塚、綺麗でしょ? 中もすごく熱くて気持ちがいいんだよ?」
ぐちゅぐちゅと淫靡な音を響かせながら、不二が誘うように乾に呼びかける。
「乾、こっちに来てごらんよ?」
乾がふらっとソファから立ち上がって、操り人形のようにぎくしゃくとした動きで不二の方へ近寄ってきた。
「……ね、ボクと替わる?」
不二が乾のズボンに手を掛ける。
先程と違って、今度は乾も嫌がらなかった。
どこか呆然とした表情で乾は、不二が自分のズボンを引き下ろして、中から乾自身を引き出すのを、ただ眺めていた。
外気に触れた乾のそれは、既に反り返っていた。
不二が嬉しそうに微笑む
「じゃ、……こっちへ……」
ずるり、と不二が手塚の中から自分の性器を抜き、乾に場所を譲る。
「い、いや、その………いいのか?」
乾が掠れた声を出してきた。
「勿論。だって手塚はキミに抱かれるためにやってきたんだよ。ねえ、手塚?」
呼びかけられて、手塚は顔を上げて振り返った。
快感と汗に霞んだ目に、乾の呆然とした表情が入ってきた。
「乾……来てくれ……入れてくれ、乾」
乾がまだ最後の所で躊躇しているのを見てとって、手塚は掠れた声を出した。
「ほら、手塚もああ言ってるし?」
「手塚、俺は……」
不二が乾の性器を手塚の後孔に押し当ててきた。
くちゅ、という濡れた音がして、火傷しそうに熱く硬い怒張が自分の秘孔に押し当てられるのを手塚は感じた。
「ほら、遠慮せずに……ね?」
次の瞬間、頭の先までずしんと重い衝撃が突き抜け、手塚は喉を仰け反らせて、シーツをきつく握りしめた。
乾が入ってきたのだ。
「う………ッ」
不二よりも大きなその肉棒は、手塚の最奥まで深く抉ってきた。
痛みと脳を蕩かすような快感が伝わる。
「あ……う………ッッ!」
一旦手塚を犯してしまうと、乾は覚悟を決めたようだった。
「手塚っ、手塚ッッ!」
呻くように短く言いながら、乾が手塚の内部を激しく穿ってくる。
「う………うッッ…………!」
その激しい打ちつけに耐えきれず、手塚は顔をシーツに押しつけて、喘ぎを殺した。
「ふふふ。じゃあ、データ見させてもらうよ」
「あ、ああ……」
上擦った乾の返事を聞いて、不二がくすっと笑いながら立ち上がる。
「ありがとう、乾。ボクはあっちでパソコンやらせてもらうからね?」
「ああ…」
不二の言葉も、もう乾には殆ど入っていないようだった。
不二がふんわりとした満足そうな微笑みを浮かべる。
ベッドから降りて、手塚の側を通るときに、不二がそっと手塚の耳に囁いてきた。
「手塚、……ボクの言うことを聞くキミが、……好きだよ」
好きという単語に、身体中が燃え上がる。
「我が儘言わないよね、もう?」
乾に後ろから激しく突き上げられながら、手塚は夢中で頷いた。
「そう……」
不二が愛おしげに手塚の額に張り付いた髪を掻き上げてくる。
「好きだよ、手塚……。キミのこと、愛してるよ……」
そっと呟かれた言葉は、甘く手塚の全身を蕩かせた。
嬉しくて、涙が溢れてきた。
嗚咽が堪えきらない。
パソコンデスクに座る不二の後ろ姿が、涙で滲んだ。
パソコンが立ち上がって、淡いディスプレイの光が不二を包む。
「不二………不二………」
不二という言葉を頭の中で呟くだけで、身体中が戦慄いて、涙が更に溢れてくる。
不二………愛している。
俺はお前を愛している。
たとえ、お前にどんな仕打ちをされようとも、傷つけられようとも。
お前が………好きなんだ。
パソコンの静かな動作音と、淫靡な性交の音が、奇妙な不協和音を作って、部屋の中にいつまでも響いていた。
相思相愛…。