修学旅行
 《5》












「う、うん……」
不二が頭を振って、気を取り直したように行動を起こした。
後孔に、冷たいクリームが塗りつけられ、手塚は僅かに身じろぎした。
「…大丈夫かな?」
不二が恐る恐る言いながら、指を1本、すうっと差し入れてきた。
「……んう!」
途端に、なんともいえない衝撃が手塚を襲って、手塚はたまらず呻いた。
なんと言ったらいいのだろうか。
甘くて、疼いて、体の中の中まで蕩けていくような、そんな感触。
焦れったくて、もっと奥まで入ってきて欲しくなって、手塚は自分から尻を動かした。
「ふ……じ、…もっと……」
不二が微かに頷いて、指を3本に増やしてきた。
「…どう?……気持ち、いい?」
「ああ…」
内部で指を蠢かされて、手塚は喉を仰け反らせて喘いだ。
指が内壁のある箇所に当たる度に、頭の先まで突き抜けるような快感が走り抜ける。
こんな感覚ははじめてだった。
自慰で得られる快感などとは桁の違う、途轍もない快感。
「僕も限界……入れさせて…」
不二が掠れた声で囁いてきた。
こくこくと頷くと、指が乱暴に引き抜かれ、代わりに熱く硬いものがそこに押し当てられる。
「手塚…」
承諾を求めるように名前を呼ばれる。
次の瞬間、固い異物がぐいぐいと内部に侵入してきた。
「………ッッ!!」
さすがに指とは比べものにならない大きさの肉塊が侵入してくる衝撃は、手塚の全身を震わせた。
痛みなのか、快感なのか、判別のつかない感覚が、後孔から駆け昇ってくる。
内臓を駆け上がり、喉を過ぎ、頭まで到達して、頭の中で白く弾ける。
「う、……うう……ッッ」
「ごめんね、僕、もう駄目。……イかせて…」
不二が、くっと唇を噛んで、それから激しく腰を動かし始めた。
「あ、…く、く……ッッ…う、ふじ……ッッッ!」
目の前に閃光が散ったような気がした。
思わず目を閉じて不二にすがりつく。
目の裏にも極彩色の閃光が飛び散る。
身体中が疼いて、触れると飛び上がりそうに敏感になって、不二が入っている内部が蕩けてぐずぐずになっていくような感じだった。
こんなに、気持ちがいいなんて。
俺は、狂ってしまうんじゃないか。
不意に恐怖に襲われて、手塚は身震いした。
恐怖は快感を更に倍増させた。
「あ……あッくッ…!
知らない内に、ひっきりなしに喘ぎを漏らしていた。
不二にしがみつくと、彼の爽やかな体臭と汗の匂いが混じり合って、甘い香りがした。
くらくらした。
頭がぼぉっとなって、もう、身体が自分のものではないようだった。
「……あ……あ、あ…ああああッッ!!」
突然、身体がふわっと浮き上がった。
激しい射精衝動が手塚を襲った。
身体を震わせて、腹の間に白濁した液体を飛び散らせる。
不二も僅かに遅れて、手塚の体内深くに、欲望をそそぎ込んだ。


















しばらく失神していたようだった。
霞んでいた視界が明瞭になって、ぼんやり見上げると、優しい笑顔に迎えられた。
「大丈夫、手塚?」
「……不二……」
そっと目尻を舐められて、手塚は自分が涙を流していたことに気付いた。
「ごめんね、乱暴にしちゃった。……でも」
不二が頬を染めた。
「僕、すっごく幸せだよ、今…」
「…俺もだ……」
手塚の返答に、不二がにっこり微笑んだ。
「でもさ、突然、どうしたの?」
不二が手塚の頬に何度も口付けを落としながら、聞いてきた。
「今までさ、手塚って絶対興奮しなかったのに。…いっつも額に皺寄せて、嫌そうにしてたのに……なんか、今日の手塚って、手塚じゃないみたいだった。僕、今でも夢見てるんじゃないかって思うよ。僕さ、自分の夢の中で、今日みたいに積極的な手塚とか、勝手に妄想してたから……」
あ、でも今日のキミ、僕の夢よりずっとずっとすごかったけどね、と苦笑する不二に、手塚は赤面した。
どうしようか、言ってしまおうか。
でも、言ったら不二はがっかりするかもしれない。
不二が心から喜んでいるのが分かるだけに、手塚は逡巡した。
でも。
「不二、…実は俺は…」
やっぱり黙っていることは出来なかった。
手塚は、自分のバッグの中から、薬の箱を取り出した。
「……なにこれ?」
不二が首を傾げた。
「…薬?……どうしたの、これ?……買ったの?」
「……あ、ああ。……その、台湾で見付けて買ってきた。…それで、その……飲んでみた…」
「手塚……」
不二が目を見開いた。
まじまじと見つめられて、手塚は俯いた。
「……がっかりしたか? 薬で興奮できたようなもんだから、俺は…」
「ふふふふ…」
突然不二が笑い出した。
「…不二?」
「ふふふ、あ、ごめんごめん。…でもさ……」
不二が身を捩らせて笑う。
「…どうしたんだ?」
「だ、だって、手塚ったら……これ、自分で買ったんでしょ? しかも修学旅行の最中に? こういうの買う中学生っている?」
「…そう言われても……」
「しかもさ、今日帰ってきた所なのに、もう僕んち来るなんて…。よっぽど試したかったんだね、手塚?」
「……俺は、…別に…」
「あ、ごめん、違うんだよ…」
手塚が俯いたままなので、不二が慌てて言葉を繋いだ。
「僕、嬉しかったんだ。だって、キミったら、修学旅行でこういうの買ってくるほど、僕のこと考えていてくれたって事でしょ? 僕さ、手塚とエッチできないのすっごく辛かった。手塚がしたくないんだったらしかたないけど、でも、僕の事、そんなに好きじゃないんだなって、そういう風に思っちゃって。……ごめんね……」
「不二…」
「で、そういう事悩んでるのってきっと僕だけなんだろうなって、思ってたから。僕だけ、キミとエッチしたくて、キミはそうでもないんだなって、そう思ってた。でも、キミもすっごく僕のこと考えてくれてたんだね。キミが恥ずかしいの我慢して、こんなもの買ってくるなんてさ………嬉しいよ…」
「……しかし、薬なんか使って、いやではなかったか?」
手塚が気に掛かったいたことを恐る恐る聞くと、不二が破顔した。
「いつも薬じゃ僕もちょっと情けないけど、でも慣れるまではいいんじゃないかな? だって、今日の手塚、……」
そこで不二は赤面した。
「すごかったもん……僕さ、びっくりだよ。キミって、ものすごく乱れるんだね…」
「…不二!」
「ふふ、ごめんごめん、あんまり嬉しくて、キミが感度が良くて最高だったから…」
「そう言うこと、口に出して言うな…」
頬がかぁっと熱くなって、手塚は口ごもった。
「……ね、気持ちよかった?」
「……だから、そんな事聞くな…」
「なんで? 僕はすっごく良かったよ、もう、死ぬかって思っちゃったぐらい。……ねぇ、キミって……もしかして、エッチ好き?」
「ば、ばか言うな!なんで俺が」
そこまで言ったところで、手塚の言葉は中断した。
不二が唇を押し付けてきたからだ。
「ん……ん……」
歯列を割られて、唾液を送り込まれて、舌を絡め取られる。
頭の芯がぼぉっとした。
甘くて、ぞくぞくする。
「……ね、……もう一回、していい?」
勃起した下半身を擦り付けられて、手塚は自分も固く漲っていることに気付いた。
「……聞くな……」
羞恥と喜びがないまぜになって、なんともいえない心持ちがした。
でも、不快ではなかった。
不快どころか、幸福感が溢れてきて、手塚は不二にぎゅっとしがみついた。
温かな体温と、荒い息づかいを聞いていると、眩暈がしそうだった。
こんなに、心が満たされるなんて。
「不二……」
微かに囁いて、手塚は自分から脚を広げた。




「手塚、好き……」
二度目に入ってきたときの、不二の甘い声が、手塚の耳にいつまでも響いていた。





















すごいバカップルっぽい(汗)