「………ッッ!」
全身から汗が噴き出している。
動かない手足が重く怠く、そして熱い。
手塚は、足を大きく広げさせられ、そしてその足を切原に抱え上げられていた。
膝裏に手を押し付けられ、そこから尻が浮くほど身体を折り曲げられる。
今まで一度たりとも他人になど見せたことのない奥まった部分が、露になって、明るい光りの元に晒け出されている・
手塚は、羞恥で目の前が眩んだ。
「よ……せ……」
必死で声を上げるが、うまく声が出ない。
どこか遠くから、他人が出しているように聞こえる。
そして、手足が動かない。
ともすれば、意識さえもふわっと浮き上がっていってしまうような、そんなおぼつかない感じ。
弱々しく頭を左右に振って、なんとか意識をはっきりさせようとするが、やはりぼんやりと霞がかかる。
「ふふ、色っぽいッスね。……目が潤んで、こっちを見てる」
切原が手塚の眼鏡を取りながら、耳元に囁いてきた。
「アンタって、最高にいい顔するッス。……ほんと、ぞくぞくする…」
ぱく、と耳を噛まれ、戦慄が走り抜ける。
小さい体躯の切原が、何倍にも大きく見え、恐怖が湧き上がる。
呆然とした目で切原の後ろの真田を見るが、真田は表情を変えなかった。
「………ッ!」
不意に、ぎゅっと局部を掴まれ、手塚はびくん、と身体を揺らした。
「……まだ勃ってないけど……でも、綺麗で可愛いッス」
切原が、まるで大切な玩具でも扱うかのように、嬉しげに、手塚のそれを手の中で弄ぶ。
指を回して強く握ったかと思うと、離して爪先でぴん、と弾く。
「……く、…ぅ……」
勿論、手塚にとってはそこを他人に弄られることも初めてだった。
自分でさえ、殆どそういう目的で触ったことはない。
僅かにある体験の中でさえ、それはひっそりと行う秘め事であって、こんな白昼堂々、しかも他人に弄ばれるなど、手塚には想像もつかなかった。
手塚は混乱していた。
混乱したままに、刺激でそこが勃起してくるのが分かる。
切原がにんまりと笑うのを見て、ますます混乱した。
「さすが手塚さん……立派なもんッスね…」
指で絞り込むように扱きながら、切原が笑う。
先端がぱっつりと張り詰めて充血し、桃色の頭がびくびくと蠢くのを、手塚は呆然と眺めた。
「ふふ、綺麗な色ッス…」
身体を屈めて至近距離で眺め、さも美味そうにちゅっと吸い上げる。
(………!)
舌の生暖かいざらりとした感触に、手塚は堪えきれなかった。
一瞬硬直し、次の瞬間、秀麗な眉を顰め息を詰めて、手塚は切原の口の中に精を吐き出した。
「へぇ………」
ごくり、とそれを飲み込み唇を拭いながら、切原がにやにやした。
「アンタ、反応いいッスね。……もしかして、淫乱系?」
「……な、にを……」
「ふふふ、まぁ、いいか…。でも、こんなに敏感な手塚さんが見られるなんてね…」
切原が歌でも歌いそうな感じで言う。
「じゃぁ、俺もやらせてもらいます…」
声がして、ぐっと腰を折り曲げられ息が詰まる。
思い切り広げられた脚の中心に、ねっとりとしたものが塗りつけられて、手塚は全身を震わせた。
「……な……」
「アンタのここ……凄く、可愛い…」
うっとりとした声で、切原が言ってきた。
「見たことないっしょ? 自分では、ここ…」
つん、と奥まった入り口をつつかれて、全身が跳ねる。
「はは、ピンク色で……ひくひくしてるッス。アンタって色が白いんですね……すっごい綺麗だ…」
つぷ、と何か異物が埋め込まれた。
「……よせっ!」
背筋に氷水でもかけられたかのように、さぁっと悪寒が走り抜ける。
切原の指が、ぐいぐいと柔らかな内壁を掻き分けて奥まで入ってくる。
「……よ、せ…」
信じられなかった。
足をこんな風に開かされ、仰向けで尻をあげた無様な格好をとらされただけでも憤死するに値するほど恥ずかしいのに。
更に、誰にも見せたことなど無い恥ずかしい部分に、他人の指が入り込んできている。
「………ぅ……」
不意に、涙が込み上げてきた。
視界が歪む。
つつ、と涙が玉になり、頬を伝って流れ落ちていくのが分かる。
「…あれ、泣いてるんスか?」
切原が含み笑いをしながら話しかけてきた。
「可愛いッスね……」
手塚は唇を噛んで横を向き、目を堅く瞑った。
「そんな顔しないでくださいよ。ますます、アンタを苛めたくなる…」
切原の押し殺したような声とともに、ぐいっと足が更に抱え上げられ、奥まった部分が切原の眼前に晒される。
(………!)
急に指が引き抜かれ、無意識に息を吐いたのも束の間、その部分に熱く硬いものが押し当てられたのを感じ、手塚は戦慄した。
「…いや、だ……」
「手塚さん、好きッス…」
次の瞬間、手塚の目の前が真っ赤になった。
「………ッッッ!」
身体を二つに引き裂かれるような痛みが、全身を凌駕する。
叫ぼうとしたが、声が出なかった。
灼熱の楔が、自分の柔らかな体内に容赦なく打ち込まれる。
全身を戦慄かせ、手塚は喉を詰まらせて呻いた。
「……きついッスね…」
切原も声を上擦らせている。
「でも、全部入れたッスよ」
がんがんと頭の中で痛みが反響する。
切原の声も反響して、自分に襲いかかってくる。
手塚は唇を血が出るほど食いしばった。
「…痛いッスか? ごめんッス、でも…」
アンタが可愛いのが悪いんですよ、と言い捨てて、切原が動き始めた。
「…くッ………う、……ううッ……!」
身体をきつく抱き締められ、折り曲げた身体ごと揺さぶられる。
熱く堅い凶器が容赦なく出し入れされる。
その度にガンガンと脳が叩かれ、全身が凍り付き、汗がどっと吹き出てきた。
内臓が喉まで押し上げられるような耐え難い不快感と、それに混ざった形容しがたい快感……。
「……う…あッ、…くッッ…」
手塚は何も考えられなかった。
堅く閉じた瞼の裏で、極彩色の閃光が明滅する。
ぱっと輝いては消え、激痛が全身を駆け抜け、そして爆発する。
「は、……う、あ、あ……ッッ」
切原が身体を揺さぶり、内部に凶器を突き入れる度に、全身が震え血流が逆巻く。
「……う……うぅ……」
無意識に、少しでも痛みを和らげようと、切原の動きに合わせて腰を振る。
「ふふふ……」
切原がにやりとした。
「アンタ、……いいッスよ…」
抽送を繰り返しながら、切原が満足げに笑い、手塚の内部を堪能するかのように腰を回して、性器を奥深くまで叩き込む。
しばしのち切原が低く呻いて、次の瞬間、手塚の最奥に欲望を迸らせた。
深く息を吐きながら、手塚の身体の上に覆い被さってくる。
手塚は動けなかった。
ただ、切原に蹂躙された格好のまま、赤ん坊がおむつを買えるときのような無様な姿のままで、呆然としているだけだった。
頭の中に周囲の音が反響し、どんどんとその音が大きくなっていく。
あぁ、何も考えたくない。考えられない。
これは夢だ。
意識が混濁してくる。
視界がぼやけ、薄暗くなる。
いつの間にか、手塚は意識を手放していた。
「手塚…」
低い声が聞こえる。
ぼんやりと目を開けると、薄暗い天井と、それから色の濃くなった夕方の空が、窓越しに見えた。
(俺は……)
自分の状況が把握できず、ただぼんやりとそれらを眺め、それから声の聞こえた方に顔を向けると、真田が自分を覗き込んでいた。
「………さなだ…………ッッ!」
突然、さっきまで自分がされていた事を思い出して、手塚は飛び起きた。
「く……ッッ!」
ずきん、と鋭い痛みが身体の中心を走り抜け、思わず呻き声が漏れる。
「大丈夫か、手塚…」
眉を強く寄せ、顔を振って目を開くと、自分が衣服をきちんと身に着けてベッドに横たわっているのに手塚は気付いた。
「……なぜ…」
手足は既に自由に動くようになっていた。
ほっとして、それから強烈に羞恥と憤怒が込み上げてきて、手塚は無意識に真田を睨め付けつつ問を発した。
真田が、気まずそうに横を向く。
「……すまん。…だが……」
「………」
何か言おうと思ったが、あまりの激昂に言葉も出なかった。
ただ、きつい眼差しで真田を睨み付ける。
「おまえには許しを請う言葉もないが…」
真田が暗い目つきで言ってきた。
「だが、赤也は…」
---------ビクン。
自分を犯した人間の名前を聞いて、手塚は震えた。
「もういない。俺が帰らせた」
「………なぜ…」
「なぜ、と言われてもな…」
真田が口元を歪めた。
「なんでだろうか、俺にもよくわからん。だが…」
そこで一瞬唇を噛む。
「赤也と俺は同罪だ。俺も、おまえを犯したかったからな…」
「………どうして…」
「さぁ、どうしてだろう。…理由を言葉にすることは難しいな。ただ……おまえを見ていると興奮する。昂る。誰にも渡したくないという気持ちで自分の心がいっぱいになる…。誰かのものになるぐらいなら、自分のものにならないのなら……あぁ、おまえが俺のものにならないのは分かっているからな?……だったらどうせなら、汚してしまおう………そういう気持ちになる…」
「…・・馬鹿を…言うな……」
「おまえには分からないだろうな」
真田が自嘲気味に笑った。
「おまえは自己完結しているからな。…おまえには誰もが憧れるが、お前自身は誰をも必要としない……そうだろう?」
「…なに言ってるんだ?」
「……さぁな、俺にも分からなくなった。……許せ」
「……許せると思うのか?」
「おまえは許すだろう」
「…どうしてだ?」
「それがおまえだからだ。誰も必要としないおまえは、許す義務があると思う」
「……勝手な」
「勝手だな…」
真田がふん、と笑った。
「さて、どうする? 送っていくか?」
「……独りで帰れる」
「そうか」
「………」
「手塚、……どうか赤也を許してやってくれ」
「………」
「あいつは……あいつは本当におまえの事が好きなんだ。憧れて恋い焦がれて、こんな事をしでかすほどな?」
「………」
「すまなかった。では、下までは送ろう」
手塚が苦痛に顔を歪ませながらも立ち上がるのを待って、真田が荷物を手に持つ。
「……こんな事をしておいてなんだが、おまえと対戦できるのを楽しみにしているし、俺達はみなおまえを尊敬しているからな」
「………」
「では、またな?」
真田から別れて、手塚は重い足取りで道路を歩いた。
歩く度にずきずきと局部が痛んだ。
必死で唇の震えを噛み殺し、一歩一歩足を踏み出す。
駅まで辿りついて電車に乗るとっほとしたのか、痛みが頭まで突き上がってきた。
「………ぅ……」
ふと涙が一筋流れ落ちて、手塚は唇を更に噛んだ。
こんなところで泣くものか。
そう思ったが、涙が次から次へと溢れ出てきた。
(どうして、俺が……)
分からなかった。
切原の気持ちも、真田の気持ちも-----------今の自分の気持ちも。
だただた涙が溢れて、頬を伝って流れていくだけだった。
外は既に暗く、街の灯りがぼんやりと車窓を流れていく。
車窓のガラスに映る自分は、まるで見知らぬ他人のようだった。
手塚はやっぱり無理矢理系がいいのでしたv
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