薬のせいで、すっかり身体が熱いのだろう。
しなやかな肢体が仄かに色づいている。
大きく上下する胸では、桃色の乳首がすっかり勃ち上がっており、シャマルは薄笑いを浮かべてその一つに手を伸ばした。
こりっとした感触のそれを、指で押しつぶすと、獄寺が眉を顰めて顔を左右に振る。
「…気持ち、いいだろ?」
「………」
もう何も答えない。
すっかり快楽の虜になったようだ。
はぁはぁと胸を大きく動かしながら息をする様子が年相応で、少し気の毒な気もしたが、そんな痛々しい様子にもそそられる。
白衣の下の、自分自身も既に張り詰め、ズボンを押し上げる勢いで存在を主張していた。
シャマルは獄寺の下半身に目を移した。
獄寺の其処も、すっかり勃起し、銀色の柔らかな陰毛の中でそそりたち、ぴくぴくと脈打っていた。
普段のシャマルなら、男のそんなものを見てもなんとも思わないどころか、気持ち悪いとばかりにそっぽを向くところだろうが、今は違う。
ごくん、と唾を飲み込み、獄寺を貪りたい、という欲望を抑えるのに必死である。
が、そんなに自分も保ちそうになかった。
ズボンの前をくつろげて、中から自身を引き出す。
(おっと、これじゃ、裂けちまうか…)
興奮のあまりすぐに行為に及ぼうとして、シャマルは苦笑した。
ベッド脇の棚からクリームタイプの塗り薬を取ると、指にたっぷりとつけ、その指を獄寺の尻の間に差し入れる。
奥まった秘所にたっぷりと塗り込んで、それから獄寺の両脚を肩に担ぎ上げる。
ぼんやりとしていた獄寺だが、さすがに何をされるか分かったのだろう、潤んだ眸を大きく見開いて、シャマルを見上げてきた。
先程のように睨んでくるのではなく、どこか不安げな、それでいてすっかり興奮してしまったからか、その眸の中には情欲の色も混ざっていた。
丸い虹彩がすっと狭まり、長い睫を頻りに瞬きさせ、半開きにした唇を微かに動かしてくる。
「……シャ、マル………な、んか、へん、だ……」
自分でも自分の身体の変化に戸惑っているのだろう。
舌足らずな言葉が、可愛いかった。
(可愛いな、コイツ……)
身体の中心が一気に熱くなる。
血流が下半身に流れ込み、性器に集まっていく。
今まで感じた事のない、凶暴な興奮だ。
自分の意のままに、相手を翻弄し、いたぶり、可愛がって、鳴かせたいという欲望。
名前を呼ぼうかと思ったが、やめた。
今は、名前など呼ばずに、ただ動物のように激しく貪りたかった。
コイツの泣く所が見たい。
自分に犯されて、泣き、すがり、悶える所が見たい。
シャマルは手探りで自分自身を獄寺の後孔に押し当てると、クリームの助けを借りて一気に挿入していった。
「………!!!」
途端に獄寺の背中が反り返り、綺麗な灰翠色の瞳が限界まで見開かれる。
「……き、ついな…」
先端を埋め込むと、入口がシャマルを痛いぐらいに締め付けてきた。
眉を寄せ、獄寺の身体をきつく抱きしめて、容赦なく腰を進める。
締め付けられた先端から痺れるような快感が襲ってきて、シャマルはすぐにでも射精しそうになるのを必死で堪えた。
逃げを打つ身体をベッドに押さえ付け、獄寺の身体を押しつぶすぐらいに折り曲げさせて、無理矢理自身を押し進めていく。
深々と突き入れると、もうそこからは我慢できなかった。
「すまねぇ、お前も気持ちよくなってくれねえとな…」
言い訳程度に言って、獄寺の性器も掴んで扱きながら、シャマルは一気に自分の快感を追求した。
激しく腰を前後に動かし、狭い内部を抉れば、脳髄が溶けるような快感に我を忘れる。
「…………くっ!」
絶頂はすぐに訪れた。
セックスをして、こんなにがつがつと貪ったのは、いったいいつ以来だろうか。
少年の頃、初めて経験した頃に戻ったようだった。
いつもの、女の扱いに慣れた自分などどこかに行ってしまったようだ。
まるで初めてセックスするみたいに、興奮し、相手の身体の負担や快感など考えるゆとりもなく、自分自身で精一杯になる。
身体全体が震え、悦び、汗が噴き出る。
獄寺の体内に思う様射精して、シャマルは漸くいつもの自分を取り戻した。
「………あーあ…大丈夫かな、隼人……」
我を忘れたセックスなど、本当に何年ぶりだろうか。自分が情けない。
獄寺は失神していた。
初めてだったろうに、あれだけ激しく容赦なく犯してしまったのだ。
意識を失っていてもおかしくない。
身体を離し、シャマルは獄寺の固く閉じた瞼や、蒼白な頬、動いて擦れたからだろう、赤く痕のついた痛々しい手首や、脚を開いたままあられもない格好で横たわる肢体を眺めた。
自分が射精したのとほぼ同時に獄寺もイったようで、扱いていた右手は獄寺の精液で濡れていた。
口元に持っていって舐めると、青臭く少年の味がした。
開いた両脚の間、奥まった蕾は、と見ると、密やかに窄まったそこは赤く腫れており、切れてはいないようだが、自分の蹂躙の痕が伺える惨状だった。
(当分痛むだろうな…)
自分のした事とはいえ、些か罪悪感が湧いてきた。
丁寧に拭って煮沸したタオルを持ってきて身体を拭いてやり、ついでに尻も手当してやる。
それにしても、男相手でもこんなに興奮して、しかも今までにないほど気持ちよかったとは。
(まさか、オレ、このまま男好きに転向しちまうわけじゃねぇだろうな…)
さすがにシャマルは心配になった。
いくら気持ちよかったとはいえ、やはり自分は女性好きでいたい。
可愛い女性や綺麗な女性を追いかけ回すのが、シャマルの生き甲斐でもあるのだ。
ぐったりとした獄寺に服を着せてやり、治療用のベッドから奧の休憩用のベッドに抱きかかえて移動させる。
(ま、隼人ぐらい可愛い男の子なら……いやいや、やっぱり女性だ、女性…)
などと益体もない事を考えながらベッド脇の椅子に座って獄寺を眺めていると、
「……ぅ…」
微かに呻いて、獄寺がゆっくりと瞳を開いた。
けぶるように長い睫が震え、潤んだ灰翠色の瞳が暫く焦点を合わせずにシャマルを見つめ、やがて覚醒したのか、焦点が合って、一気に睨み付けてくる。
「テ、テメェ!」
(あーあ……可愛かったのにな…)
「…いててててて!」
「おい、すぐに動くと痛いぜ?」
「痛いぜ、じゃねぇだろ、テメェ……!!」
シャマルを見た途端起きあがってつかみかかってこようとしたので、シャマルは苦笑して獄寺を抱き留めた。
「ほら、まだ寝てろ。…肩だって腫れてるだろうし、…尻もな?」
「し、尻……ッッッ!!」
獄寺が瞬時頬を赤くして、ぎりっと唇を噛んだ。
「テメェ、ッッ…殺すっ!」
「はいはい、ほら、まだ痛いんじゃねぇのか?」
威勢の良い事を言いながらも、痛いからだろう、顔を顰め、唇を歪めている様がおかしくて、シャマルはついくすっと笑った。
「笑ってんじゃねー!」
「まー、そういきりたつなって。お前だって気持ちよかっただろ?オレの蚊は性能いいからな?」
「つうか、テメェは女専門じゃなかったのかよっ!」
「……人生、たまにはアクシデントもあるって事だな…」
肩を竦めて手を上に向けてひらひらとして見せると、獄寺が盛大に溜息を吐いた。
「今日はたまたま男が良かったんだよ、そこにお前が来たってわけだな?」
「………すげぇ運悪いのかよ、オレ…」
「まー運が悪いんじゃなくて、運が良かった、と思ってくれよ。気持ちよかっただろ?」
「……そういう問題じゃねぇ…」
ぼそっと呟いて、痛む尻と肩を庇いながら、獄寺がベッドから降りる。
「もう大丈夫なのか?」
「………頭痛くなってきた。うち帰って寝る…」
「保健室だぜ、ここで寝てけばいいのに」
「テメーと一緒にいたら、何されっかわからねぇだろがっ……この、クソ医者っ!」
ふらふらと蹌踉めきながら出て行く後ろ姿を見送って、シャマルはやれやれと息を吐いた。
身体はすっかり爽やかに満足して、いつになく充実した気分である。
(それにしても、隼人があんなに色っぽくて可愛いとはなぁ…)
もう二度と身体を許してはくれないだろう。
一度だけのアクシデント。
そう思うと、少しだけ惜しい気がした。
(………って、マジになったら困るしな…。オレの蚊も結構罪深いヤツだよなぁ…)
「さて、休憩するか…」
肩を竦め苦笑して、シャマルは紅茶を煎れるために立ち上がった。
夕方の淡い光が、シャマルの姿をふんわりと包んでいた。
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