◇僕とボンゴレ  4   






「大丈夫ですよ…随分解しましたから……。僕の指をあんなに歓迎してくれていたじゃないですか…?さ、ボンゴレ…力を抜いて…」
って、そんな優しげに言われても困る!
「──く、あ、あぁぁぁぁッッッッ!」
骸の熱く堅い灼熱の肉棒が、ずぶずぶ、と容赦なく侵入してきた。
背中を海老のように反らして、ツナは目を見開いて叫んだ。
ずうん、と重く鈍い痛みが、鋭い快感が、一緒になってツナの脳髄を直撃する。
「あ、あっあっ………い、たッッ……あ、ッッt……も、っっ、だ、めッッあ、や、い、やダッッ」
「クフフ…大丈夫ですよ、ほら、きちんと入りました。…それに血も出ていませんしね…?僕と君は相性ぴったりなんですよ…」
そんなわけないだろー!と頭の奧で叫んだが、それより骸が動き始めたので、ツナの理性は吹っ飛んだ。
熱く焼けた鉄の棒が、そう、まるで骸の持っている槍の棒の部分みたいに、堅いものが、ツナの柔らかい体内へとめり込んでくる。
膝裏を押さえ付けられ、身体を折り曲げられて、その上から骸が覆い被さっているので、息も吐けない。
「─ンく…っ、んふ、はっ…はぁっ、……あ、あっあっ……!」
骸が前後に動くたびにベッドの上で引きずられ、グチュグチュと湿った粘着音が部屋に響き、骸が腰を進めるたびに脳内まで犯されて、どうにかなってしまいそうだ。
先程指でも弄られた感じる部分を骸の切っ先で執拗に抉られて、閉じた目蓋の裏に閃光が走る。
「もっっっ!───あ、っあ───!!!」
自分の身体の中にこんな快感が生まれる元があったとは知らなかった。
自分の身体じゃないみたいだ。
熱くて、下半身は既にぐちゃぐちゃにとろけていて、骸と繋がってしまったような気がする。
(あぁ、これって乗っ取られる感じ……?)
「ボンゴレ……ッッ!」
骸が軽く呻いてぐぐっと一瞬強く体内に押し入ってきた。
(……………!!!)
感じる部分を刺激されて、ツナのペニスから少し薄くなった精液が再び迸る。
脳内で小さな爆発が起こって、ツナの意識はふうっと落ちていった。








「おはようございます、ボンゴレ…さ、学校行く時間ですよ…?」
身体が、重い…。
誰かが自分に声を掛けている。
(えっと、誰だっけ?この、ちょっと不気味なしゃべり方っていうか、妙に丁寧なしゃべり方っていうか…こんな人、うちにいたっけ?)
「…ボンゴレ。起きなさい」
「……うわぁー!」
「どうしたんですか?随分と元気の良い起き方をするんですねぇ、君は」
そうだ、骸だった!
ばっと起きあがってツナは後退った。
昨日の出来事が頭の中にはっきりと思い出される。
昨日は何故か居候をする事になった骸と一緒に学校に行って、まぁ、学校ではなにもなかったけれど、家に帰ってきて寝ようとしていたら──。
「わ、っわ……っっっ!」
───ズッキーン。
勢い良く後退ったら、尻から鋭い痛みが頭まで突き抜けた。
「いたぁー!」
思わず尻を押さえて、前屈みになって顔を顰める。
「おや……お尻、痛いですか?優しく抱いたつもりだったんですが…君だって昨日は随分気持ちよさそうによがっていましたよねぇ?」
「わ、わっ、そういう話、なしっっ!」
「もし痛いんなら、お薬入れておきましょうね…ちゃんと用意してきましたよ?」
「え、えっ?」
骸にぐいっと俯せにされて、つるん、とパジャマのズボンが剥かれる。
「ちょ、ちょっとやめてよっっ!あああっ!」
尻たぶをぐい、と左右に割り広げられて、骸が後ろからアナルをマジマジと見つめているのが分かった。
羞恥で顔が真っ赤になる。
なんで朝からこんな恥ずかしい思いを…!
「うーん…確かにちょっと赤く腫れてますね…。じゃ、座薬入れておきましょうね?」
ぬぷ……。
「ぅう……」
冷たい座薬がアナルに押し入ってきた。
俯せになって枕に顔を押しつけて、ツナは呻いた。
「はい、これで大丈夫ですよ。今日は体育は見学していた方がいいかもしれませんが…。さ、着替えて一緒に学校に行きましょうね、ボンゴレ」
涙の滲んできた目を上げて骸を見ると、今日も骸は並盛中のブレザーをきっちりと着こなして、ネクタイもきりっと結んでいる。
見るからに真面目な優等生、という感じだ。
「お母さんが下でご飯作って待ってますから。さ、行きましょう?僕が着替えさせてあげましょうか?」
「え、い、いいからっ!」
慌てて起きあがると、また尻がずううんと痛んだ。
顔を顰めながらなんとか制服を着ると、骸と一緒に階段を降りる。
(なんで、こんな事に……)
ダイニングに行くと、尻を庇いながら朝ご飯を食べて、学校に向かう。
母は全く自分の身体の異変に気付いていないようで、今朝も機嫌良く骸と話していた。
骸はどうやら年上に受ける性格らしい。
(そう言えば、先生受けも良さそうだったもんなぁ…)
昨日一日で転校生ながらすっかり先生達には優秀な学生と思われているらしい事も分かった。
(あーあ……)
「さ、ボンゴレ…痛いときは僕につかまっていいですからね?」
(って、お前が痛くした元凶だろうが!)
……と、そこまで考えて、ツナは骸を見上げた。
「なんで、オレの事……そ、その、あんな事したわけ…?」
そう言えば根本的な疑問を聞くのを忘れていた。
歩きながら骸がにっこりとオッドアイを細める。
「それは勿論、君が好きだからですよ、ボンゴレ。…君の事ずうっと手に入れたいって思ってましたからねぇ…」
「そ、それは、憑依してって事じゃなかったの?」
「最初はそうでしたが、それは途中であきらめました。今は僕も平和主義者になりましたので…クフフ…なんてまぁ冗談ですが…とにかく、僕は君には一目惚れなんですよ。憑依しなくても、君を手に入れたい、というわけです。君を僕のものにして、可愛がりたい、とね?」
「な、なんで、オレ…?」
「さぁ、一目惚れなんですから、理由はないですね……でも、昨日の君は本当に可愛かった。僕も夢中になってしまいました。昨日、気を失った君の身体を拭いて、綺麗にして差し上げましたが、その時の無防備な君と言ったらまるで天使みたいに可愛かったですよ…?僕と君は、もう他人ではありませんしね……」
ぞくぞくっと背筋が冷たくなって、ツナは後退った。
そうだった。
昨日の夜、骸と…せ、………セックス、してしまったのだ。
(って、オレ、なにやってんだー!!!)
ツナは自分を呪った。
今までセックスのセの字どころか、キスさえもしたことのない奥手の自分が……しかも、男とセックスなんて…
しかも、気持ちが良く敵を失ってしまったらしい、なんてー!
「君の身体は本当に敏感で、反応が良くて、この僕も余裕がありませんでしたよ…。可愛いボンゴレ…」
「うわッ、や、やめてっ…」
「おや、いけませんか?本当に君は可愛いんですよ?」
骸に言われても全然嬉しく無いどころか、怖い。
(あー、どうしよう……はぁ…)
ツナはがっくりと肩を落とした。








その日の放課後。
痛む尻も骸が朝入れてくれた座薬のおかげか、なんとか他人に知られることなく一日過ごす事ができて、ツナはほっとして鞄に荷物を入れていた。
「10代目!」
がやがやとざわめいてクラスメイトが帰宅する中、獄寺がツナの所へずかずかと寄ってきた。
「何、獄寺君?」
「10代目は骸の事、ほっといていいんすか?オレ、どうも気に入らないんすけど!」
「……う、うん……」
困った。
確かに獄寺にとっては骸と一緒になどいたくないだろうし、雲雀に至ってはまだまだ敵だろうし…。
(っていうか、オレだって、骸が家にいるから困ってるんだけど…)
「まぁ、そう言ってもツナの父さんが決めたんだろ…しょうがねぇんじゃねぇ?」
山本がまあまぁと仲介に入った。
教室は殆どのクラスメイトが帰ってしまい、ツナと山本、それに獄寺だけが残っていた。
「骸ってどんな感じなんすか?危なくないっすか?」
獄寺が心配そうに聞いてくる。
……危ない、というか、もう、食われた……というか──。
勿論、獄寺に言えるはずがない。
俯いて溜息を吐くと、獄寺が眉を寄せた。
──ガラッ。
突如教室の扉があいて、骸が入ってきた。
どうやら先生に呼び出されていたらしい。
「おや、みなさんお揃いですか?もう帰る時間ですよ?ボンゴレ、さ、帰りましょう…」
ツナの所に寄ってきてさり気なくツナの肩に手を掛ける。
獄寺がぎょっとして目を見開くのが分かった。
(あちゃー……ど、どうしよう…)
「おい、骸っ、10代目に触れるなっ!慣れ慣れしいだろが!」
「そう言われても、ねぇ、ボンゴレ…」
クフフ、と骸が含み笑いしたので、ツナは頭を抱えた。
「いや、そのさ…」
「僕とボンゴレは、恋人なんですから、このぐらいしても別におかしくないでしょう?」
──ブチュ…。
骸が身体を屈めて、突如ツナの顎をくいっとあげて唇を覆い被せてきたので、ツナは驚いて目を見開いたまま口付けを受けた。
「ぎゃあー!!」
目の前で、獄寺と山本が固まっている。
「ボンゴレ……昨日の君は本当に可愛かった……今日も、たくさん愛してあげますからね…?」
「な、な、なんだとー!!!10代目っ、これはどういうことっすか!!」
獄寺が必死に骸を剥がそうとするが、骸はびくともしない。
それどころかどこから取り出したのか(伸縮自在なのか幻覚なのか)三叉槍を手にして獄寺をなぎ払った。
「……!」
床に叩きつけられて獄寺が顔を顰める。
「ご、獄寺君!」
「僕とボンゴレの恋路を邪魔すると容赦しませんよ?」
「は、はぁ、なに言ってやがるっていうか、10代目っ、これはどういう事っすか!!」
「お、ツナ、お前、ホントに骸と……つうか、人前でキスとか、やるなー!」
山本は変なところで感心している。
「まー、男同士でもいいんじゃねぇ?頑張れよ!」
「山本っ、お前っ!10代目ー!」






「さ、ボンゴレ、帰りましょう。……獄寺君は山本君にお任せしとけば大丈夫ですよ…」
収拾のつかなくなった獄寺を後に、ツナは骸に引きずられるようにして、教室を後にした。
(あーあ…どうなっちゃんだろう……っていうか、恋人ってなに?オレと骸が恋人なの?)
当のツナ自身も混乱して何がなんだか分からなくなっていたのだった。






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