「ワオ……本当?」
雲雀が瞳を細めた。
「君がすんなりOKしてくれるとは思わなかったよ。そんなに沢田に見られるのがいやなんだ?」
「……」
綱吉の事を持ち出されるとむかっときた。
尻にトンファーをねじ込まれた間抜けな格好のまま雲雀を睨むと、雲雀がくすくすと笑った。
「まぁ、いいや。…じゃあ、折角君がOKしてくれた事だし、十分に楽しもうかな…」
絨毯の上に転がった獄寺の両脚の間に割って入って、雲雀が上から鑑賞するかのように獄寺を見下ろしてきた。
「やっぱり綺麗だね、君。…ぴちぴちしているし、やり甲斐があるよ」
「つうか、変態な事いつまでも言ってんじゃねぇ!さっさとヤれよ!」
「ふーん…そういう態度なんだ?もっと素直になってくれないとつまらないな…」
「………うぁッ!!」
雲雀が黒い眸を眇めて、いきなり獄寺の尻に突っ込んであったトンファーをぐりっと動かしてきたので、ずきっと鋭い痛みが脳天まで突き上げてきて獄寺は呻いた。
「活きのいい動物を狩るのも楽しいしね。君が大人しいなら縛った手を解いてあげるんだけど…やめとく。このままでいくよ?」
後ろ手に縛られた手が、自分の体重で押しつぶされて痛い。
それよりも、トンファーが突き刺さっているアナルが痛い。
痛いくせに、微妙にどこかを刺激しているらしく、痛い中に快感を覚えて、獄寺は密かに狼狽えた。
こんなヤツにやられて気持ちよくなんかなってたまるものか、と思うものの、そこは悲しい男の性、やはり生理的に興奮してしまうようだ。
トンファーの先が腸内の前立腺を刺激してくるたびに、身体の芯が疼いて、ペニスがむくりと頭を擡げる。
「結構慣れてるみたいだけど、経験あるの?」
「………」
「まぁ、別にどうでもいいけどね…沢田とだったりして?」
「…沢田さんは関係ねぇ!あの人の名前を出すな!」
綱吉の名前を出されると、彼が汚されるような気がして獄寺はかっとなった。
雲雀が肩を竦めて視線を逸らした。
「随分本気なんだね…。やっぱり気に入らないな……優しくするのやめとく」
一体なんなんだ、この雲雀の態度は。
(……理解できねぇ…)
自分をこんなにしておいて、どこか傷ついたような態度を取るのが解せない。
「まぁ、いいや。じゃ、やらせてもらうよ?」
雲雀の低い声がして、学ランを着た黒い姿が覆い被さってくる。
腸内に突き刺さっていたトンファーが不意に抜かれ、抜かれる際の痛みにも獄寺は呻いた。
「ちょっと血が出たね。…君の血は綺麗だ…」
トンファーの先についた鮮血を、雲雀が黒い双眸を細めて眺め、ぺろり、と舐めた。
「おい、変態な事すんじゃねぇ…」
ぞくりと背筋が総毛立って、獄寺は上擦った声を出した。
いつもは冷静沈着な雲雀だが、どこか今は危険なものを感じさせる。
雲雀は並盛り中では最強だ。自分よりも強い。
その雲雀が本気を出したら──と思うと、さすがの獄寺もぞくっとした。
「フフ、まぁ、変態かもしれないね…。君、結構変態な事されると喜びそうだし…」
「ハッ、ふざけんじゃねぇ!」
「そうそう、そのぐらい活きが良くないとさ、僕、楽しくないんだよね…」
両膝をぐいっと割り広げられ、中心を凝視されて、獄寺は羞恥に顔を背けた。
OKを出した以上、何をされても文句は言えないが、恥ずかしいのだけは我慢できない。
「ふぅん…痛いかな? でも、君って痛いのも好きそうだし…」
くすくす、と笑って、雲雀が獄寺の半勃ちしたペニスを潰すように強く握りしめてきた。
ズキン、と頭まで痛みとも快感ともつかぬ衝撃が襲ってきて、獄寺は瞳を固く閉じた。
「敏感な反応をする草食動物って好きだよ…」
カチャ、とズボンのベルトを外す音がしてはっと目を開けると、雲雀が制服のズボンの前をくつろげて、中から彼自身を取り出していた。
さすがに怖じ気づいて身体を少し後退らせると、雲雀が反対に獄寺の両脚をぐっと引き寄せて、自分の肩に担ぎ上げてきた。
「駄目だよ……君はこれから僕のものになるんだからね…?」
「オレは沢田さんのものだっ!」
「…ワオ……ここまで来てそういう事言うわけ? ふーん……じゃ、優しくしない」
「……ぐぁっっっ!!」
先程までトンファーの鋭い金属の切っ先に抉られて血まみれになっていたアナルに、何の準備もせずにいきなり雲雀の堅い楔が打ち込まれる。
全身が震え、頭に針が何千本も打ち込まれるような痛みが走る。
喉を潰して悲鳴を上げ、獄寺は顎を仰け反らせた。
「血が出てるから、結構やりやすいね…君のその痛そうな顔もそそるし…」
ぐい、と顎に手を掛けられて上向かせられる。
痛みに生理的に涙がにじみ、視界の霞む目で雲雀を睨むと、雲雀が顎を上げて獄寺を見下ろして笑った。
「やっぱり君は楽しいな…じゃ、遠慮しないよ?」
ぐぐっと深く抉られ、腸内奥深くまで雲雀の堅い切っ先で貫かれる。
過去に随分と暴力的な事は受けてきたし、大抵の痛みには耐えられる獄寺も、男に犯される、という経験は初めてだった。
屈辱と悔しさが入り交じって、更にそこに純粋な身体の痛みと、認めたくないが快感が混ざり合う。
「くっ、……て、めぇ……ッッ、あ、─う、ぐッッ……!」
応接室の絨毯の上で揺さぶられて、獄寺は必死で声を抑えた。
痛みでともすれば声をあげてしまいそうになる。
それを堪えると、今度は雲雀が内部をぐりぐりと抉ってくる。
前立腺を刺激されて痛みと相俟って名状しがたい情欲が湧き上がる。
血の匂いが応接室に広がって、それにも背徳的な興奮を覚えてしまう。
「く、そっ……い、てぇッッ…!」
「痛くなくっちゃ、つまらないよ……でも、君、こっちは勃ってるけど?」
ぎゅ、とペニスを握りつぶされて、獄寺は白目を剥いた。
「まだまだ、こんなのじゃつまらないよ…もっと君と遊びたいんだから…」
「……うぐっっ!」
先程尻に突っ込まれて先に血の付いていたトンファーを今度は口に突っ込まれる。
ぐりぐり、と喉奧まで突っ込まれて獄寺は痛みで霞む目を見開いて雲雀を睨んだ。
その間にも、容赦なく犯され、内部を抉られ、痛みが全身に広がる。
更にはペニスをきつく指でいましめられてイくこともできず、獄寺は全身を痙攣させた。
「もっと反応してよ、獄寺……もっと、僕の満足するように」
いきなりもう一つのトンファーで腹を殴られた。
初めに頭を殴られていただけに、既に全身が火が点いたように痛みで火照り、身体がどうにかなってしまいそうだった。
激しく揺さぶられて頭痛が酷い。
血流と共にずきずきと頭が割れるように痛み、口に突っ込まれたトンファーが喉を傷つけ、腹から胸にかけてもトンファーで殴られて、全身傷だらけだ。
更に尻は裂けて血が床に滴り、意識が遠のく。
雲雀が動きを速くした。
一気にラストスパートを掛け、獄寺の体内を蹂躙する。
「………ッッ!!」
雲雀が獄寺の中で射精したのとうっすらと感じた瞬間、雲雀の手で拘束されていたペニスが解放され、行き酔いよく白濁が飛び散るのを感じつつ、獄寺は意識を手放した。
獄寺が意識を取り戻した時、応接室には既に誰もいなかった。
どうやら意識を失っている間に雲雀がある程度手当などをしてくれたらしく、服も着ていたし、少なくとも表からは傷を受けたようには見えなかった。
「くそ……」
しかし、顔を上げると、ずきずきと頭が痛んだ。
それとともに、尻も鋭く痛む。
「めちゃくちゃやりやがって…」
痛む頭を抱え、身体を引きずって応接室を出る。
雲雀は影も形もなかった。
気が済んで出て行ったんだろう。
一体自分に何の用だったのか。
喧嘩や抗争は日常茶飯事とはいえ、こういう形での喧嘩はしたことがない。
雲雀の真意を測れず、獄寺は眉を寄せた。
男にヤられるというのも初めてだった。
何もかもが訳が分からない。
「くそっ、好き勝手やりやがって…」
先程の事を思い出すと屈辱感に身体が震える。
しかし、なぜ雲雀が自分にあのような行為を強いたのかが分からなかった。
手懸かりになるものといえば、綱吉の事を持ち出した途端に不機嫌になった、という事だ。
(……沢田さんに何かあったらただじゃおかねぇ…)
──という獄寺の不安は、実のところ全く見当外れなものでしかなかったのだが。
その時の獄寺は、雲雀の標的が自分である、という事には全く気付いていなかったのだった。
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