もどかしげにブーツを脱ぎ、隊服のズボンを下着もろとも脱ぎ捨てるとフードの着いた上着も一気に脱ぐ。
冷えた身体に暖まった部屋の空気が心地良く、勢いに乗じてスクアーロはザンザスの服も一気に脱がせた。
間接照明が仄かに光る寝室に、ザンザスの精悍な逞しい、傷跡の諸処残る身体が浮かび上がる。
それを見るとますます情欲が高まって、スクアーロはごくりと唾を飲み込んだ。
「ボスっ……」
再び唇を押し当てて舌を伸ばす。
ザンザスの肉厚の唇が開いて、スクアーロの舌を絡めるように吸い込んでくる。
舌を差し入れると、軽く噛まれた。
自分より体温の高い咥内はぞくぞくする程興奮する。
夢中で吸い合って、たまらずに硬くなってきた股間を擦りつける。
「ボスぅ、あけましておめでとうよぅ!」
開け放ったままの寝室の向こう、執務室の方から微かに声が聞こえた。
ぎく、として動作を止めると、スクアーロは執務室の方を窺った。
「あらぁ、いないのかしら?」
「ウシシ、二人でしけこんでんじゃん?」
「んもう、そういう下品な事言わないのっ」
「でもスクアーロが夜食持ってったままなんだろ?」
「まぁそうだけど…っボス、スクちゃん、もし居たらあとで談話室来てくれない?新年のごちそう作ったのよ。じゃあ待ってるわねぇ!」
どうやら執務室の扉の向こうからインタフォンを通して叫んでいたらしい。
帰って行ったらしい気配にほっと息を吐く。
―――と…。
「ゔお゙ぉいっ!」
不意に身体を反転させられた。
「――ドカス……」
低く湿った色気のある声で耳元に囁かれ、一瞬息を飲む。
そのまま耳朶を舐められて、びく、と首を縮める。
「あ゛……ん゛ん゛ッ……」
体重が掛かってくる心地良い重みと、股間に当たるザンザスの怒張に陶然となる。
擦れ合うだけでもペニスがじんじんと痺れ熱く火照り、硬く漲って噴火しそうになる。
堪えようとぎゅっと奥歯を噛み締めて、眉を寄せる。
「う……」
ザンザスの節くれ立った大きな手が、無造作に股間を掴んできた。
一瞬身体を強張らせ、火傷しそうな熱い手に股間を擦り付ける。
根本から強く握られ、絞るように先端まで扱かれると、それだけでもうどうにかなってしまいそうになる。
気持ちが良い。
熱くて、とろとろに蕩ける。
ザンザスの手の熱に、自分の冷えた身体がすっかり火照って、しっとりと汗を掻いていく。
「ボ、ス……」
限界まで足を開いて、ザンザスを歓迎するように足を上げ、奥まった部分まで露わにする。
前を弄られるだけでは足りない。
後ろに、ザンザスの熱い硬いものが欲しい。
ぶち込んで掻き回して欲しい。
先程見た花火みたいに、自分にも火を点けて欲しい。
「なんだ、もう我慢できねぇのか? 年が明けたっていうのに代わり映えしねぇやつだな…」
ふっとザンザスが笑う気配がして、スクアーロはぎゅっと瞑っていた目を開けた。
「ゔお゙ぉい、ボスさん…、新年早々意地悪はなしだぁっ…」
ぐりぐりと股間を擦りつけながら、開いた足をザンザスの腰に巻き付け、勝手知ったるベッドということでベッドヘッドの引き出しを開けると、そこからクリームのチューブを取り出す。
ザンザスが肩を竦め苦笑した。
「自分でやってみろ?」
身体が離れるのには一瞬寂しい思いをしたが、深紅の目で射るように見られて、心臓がどくん、と跳ねる。
「お、おお…」
チューブからクリームをたっぷりと絞り出す。
右手の指先に乗せて、胡座を掻いて見物と決めこんだザンザスの前で再度大きく足を開く。
アナルがよく見えるように腰を浮かせ、ひくつく淡い蕾に指をぐっと突っ込む。
「ううっ…」
冷たいクリームに一瞬身体が竦むが、すぐにそれが体温に慣れて温かくなり、腸内で溶けてくる。
「舐めろ……」
胡座を掻いていたザンザスが膝立ちになって、スクアーロを跨いできた。
「ん゛っ……ん゛ん゛っっ!」
むしゃぶりつくようにザンザスの巨大なペニスを口に含む。
えらの張った亀頭に舌をぬるりと絡みつかせ、ひとしきり舐めてから唇を大きく開いて咥え込む。
そうしながら指を2本、3本と増やして、ぐちゅぐちゅと肛門をほぐしていく。
いつもながら、この瞬間は焦れったくてたまらない。
焦れったいのに、でもこのどきどきするような興奮を長引かせたくて、矛盾した気持ちに囚われる。
ザンザスのペニスはじゅっと音がしそうな程熱かった。
それを頬張っていると、それだけでイってしまいそうな程幸福になる。
だが、それだけでは足りない。
身体の芯がずうんと重く疼いて、体内にその熱い愛情の証が欲しくなる。
深く繋がって、二人で一つに溶けてしまえる、あの最高の瞬間が欲しくなる。
「ボ、ス…も、……欲しいっっ…」
途切れ途切れに喘ぐと、ザンザスが唇を歪めて笑った。
「相変わらず貪欲だな、ドカス……悪くねぇ…」
荒々しく口から引き抜かれ、両足首を掴まれて引き裂くように足を広げられる。
間髪を入れず体内が真っ二つに裂かれる。
「ゔあぁぁぁっ!」
この瞬間が、好きだった。
自分が自分でなくなる。
ザンザスのものになる。
何もかも忘れてしまう程の、熱く滾った情熱に翻弄される。
大声を上げて叫んで、快感に身悶えする。
離れていた長い時間が、その間に降り積もった寂しさや辛さが、雲散霧消する。
こうして今、ザンザスと繋がっている。
その認識が脳を席巻する。
「あっ……あっあっ……ボスっ……も、っと深くっっ!」
「うるせぇッッ!」
バシ、と頬を叩かれる痛みさえ、ぞくぞくと快感を促進する。
もっと、と頬を差し出すようにすればザンザスの苦笑が耳に響く。
頬を撫でられて思わず目を見開くと、思いの外優しい視線にどきっとする。
「ボス……」
胸が詰まって、両腕をザンザスの首に回して抱きつくと、力強い腕で抱き締め返された。
―――嬉しい。
幸せで、胸が痛くなる。
「ボスっ……ボス……ッ!」
ベッドがぎしぎしと軋む。
繋がり合った箇所がすっかり溶けて一つになって、そこから全身に熱が回って、身体中が熱くて堪らない。
揺さ振られて、深い部分から電撃のように快感が脳を襲って、堪えきれなくなる。
「あっ、ああァッッ!」
ひっきりなしに声を上げながら、与えられる快感を貪欲にむさぼる。
腰を振り、ザンザスに合わせて身悶えし、ザンザスが入ってくればそれを逃すまいと腸壁を絡みつかせ、引き抜かれれば後を追うように腰をくねらせる。
その度に湿った水音と、肉と肉のぶつかり合う淫靡な音が寝室に響き、窓の外から微かに聞こえる新年の爆竹の音をかき消した。
「あ、ゔーっ、ああァッッ……ッッく、……ん゛ァッッ!」
冷えた身体はすっかり熱を持って、これ以上無いほど熟れている。
理性もすっかり放棄して、スクアーロは身体全部が性器と化したようになった。
気持ちが良くて、疼いて、たまらない。
もっと、掻き回して欲しい。
身体の内部をザンザスの熱い楔で。
貫いて、全部熱くして欲しい。
何もかも。
「あ、ボスっ、…ボスッッッ!」
堪えきれずに、スクアーロは背中を仰け反らせながら咆哮した。
ぐぐっと前立腺を抉られて、目の前が真っ白になる。
身体が宙に浮いて、自他の区別がつかなくなる。
全身を硬直させながら、勢いよく精を迸らせると、ほぼ同時にザンザスもスクアーロの体内に熱情を放出した。
「……ボス……談話室行くのかぁ? オレぁべたべただが…」
「そのままでいい」
「そりゃ……いくらなんでもよぉ…」
「構わえねぇだろ、テメェとオレの関係なんざカスどもはみんな知ってるだろうが」
「そりゃぁそうだが…」
知られているのと、情事の痕を付けたままで談話室に行くのはちょっと違う。
終わった後、気怠い身体をごろりとベッドに横たえて情事の余韻に心地良く浸っていると、そのまま寝てしまいたくなる。
が、先程ルッスーリアが新年のご馳走を用意して待っている、と言ったいたからには、彼らはザンザスが来るまでは食べずに待っているだろう。
ザンザスがそういう事を放り投げて寝るはずがない。
起き出して乱れた黒髪を無造作に撫で付け、タオルでおおざっぱながら身体を拭いて衣服を身に着け始める。
それを見てスクアーロもだるい身体を起こした。
「うお……」
起きると尻からザンザスの残滓がとろりと漏れ出る。
慌ててティッシュで取り敢えずの処理をし、床に脱ぎ捨てた隊服を身に着ける。
乱れた銀髪は手櫛で直したが、それでもどう見ても情事の後です、という感は否めない。
ザンザスが口端を歪めて笑いながら見ている。
「ゔお゙ぉい、こりゃどうしようもねぇぞぉ!」
「構わねぇだろ、行くぞ?」
「……テメェは羞恥ってもんがねぇのかあ…?」
ぼそぼそと呟きつつ、それでもザンザスに逆らえるわけもなく、スクアーロはザンザスの後について部屋を出た。
恥ずかしい事は恥ずかしいのだが……でももしかしたら嬉しいのかも知れない。
ザンザスは自分のもので、自分はザンザスのものだ、と仲間に知らしめる事ができるのだから。
(……って、ゔお゙ぉい、ンな事自慢してどうするんだぁ!恥ずかしいにも程がある……)
自分の考えに改めて赤面しつつ、新年を迎えた静謐な古城の廊下をスクアーロはザンザスと共に歩いた。
ザンザスの少し後ろから、彼の艶やかな黒髪が、時折廊下の縦長の格子窓から漏れ来る星の光に照らされるのを見つめながら。
窓の外からは微かに、遠くの花火の音が聞こえた。
廊下の向こうからは、仲間の賑やかな声が聞こえる。
(新年かぁ……)
こうして二人で年を重ねられる幸福を、スクアーロはしみじみと味わっていた。
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