◆この世に貴方が◆ 4









バーナビーが小さな声を上げる。
声を上げる事に抵抗があるのか、恥ずかしがっている様子には、男としての征服欲がそそられるようでもあった。
顔を更にずらし、バーナビーの左の胸に唇を当てる。
白くしなやかな肌とその下の張り詰めた筋肉の感触を味わいつつ、小さく薄桃色をした乳首に吸い付く。
ひく、とバーナビーが震える。
その反応がまた初々しくて虎徹の欲を煽る。
「おじさん……っしつこい…っ」
彼の反応が可愛くてたまらず、執拗にそこをねぶっていると、バーナビーが虎徹の後頭部を叩いてきた。
「悪い悪い…」
顔を上げて視線を交わすと、目元を赤らめてそっぽを向く。
いつもの澄んだ冴え冴えとした碧の瞳が、より碧色を濃く艶やかにしており、その色にも彼の興奮の度合いが伺えた。
「ごめんなぁ?」
言いながら身体を更にずらし、バーナビーの形の良い臍をチュッと吸い、そこから下へと身体を動かす。
今までも何度も彼の其処を手で慰めてはきたが、間近に眺めるのは初めてだった。
太腿に両手をかけて大きく開かせるとバーナビーが羞恥からだろう、息を止める。
それでも虎徹の動きに従って足を開き、惜しげもなく恥部を晒してきた。
間接照明の淡い光に照らされて、濃い金色の茂みが柔らかくふんわりと光る。
その中心の性器は既に勃起しており、形の良い丸い先端からは透明な先走りをとろりと垂らしている。
虎徹はそれを躊躇無く口に含んだ。
「あっ…!」
バーナビーが小さく声を上げる。
男のものを口に含むなど虎徹とて生まれて初めての事だったが、不思議と不快感は無かった。
先走りの味も、それがバーナビーのものだと思えばまるで甘い蜜のように感じた。
そのまま飲み込めるだけ深く飲み込んで顔を上下に動かすと、数度動かしただけでバーナビーは呆気なく絶頂に達した。
咥内に溢れるものにも不思議と不快感はなかった。
どう考えても同じ男の体液であるのに。
ごくりと全てを飲み下して、顔を上げる。
バーナビーが困惑したように虎徹を見下ろしてきた。
「…すいません、こんな事まで…」
「俺がしたかったんだ。だから気にすんなよ。それよりこの間は痛くさせちまったから、今日はお前が痛くないようにしてーよ」
「痛くてもいいですよ?おじさんに我慢させたくないし…」
バーナビーの言葉に健気な絆される。
虎徹は肩を竦め、乱れた黒髪をかき上げて笑った。
「お前が気持ち良くねぇと俺が幸せじゃねぇんだよ。ちょっと待っててくれ」
先日使ったクリームがあるのは分かっていたので、再度ベッドサイドから取り出す。
バーナビーの両足をぐっと持ち上げると、虎徹はクリームをたっぷりと指に掬って、その指をバーナビーの密やかな入り口に押し当てた。
前日の痛みを思い出したのか、バーナビーが瞬時身体を堅くし、それから身体の力を抜き、虎徹を見上げて微笑んだ。
信頼と愛情の籠もった微笑みだった。
胸がじんと疼いて虎徹は涙が零れそうになった。
バーナビーの様子に胸が打たれる。
なんて可愛いのだろうか。
愛おしいのだろうか。
この年になって、こういう情熱を持つことができるとは。
不意に感動が全身を襲って、虎徹は彼らしくなく戦慄いた。
目を瞬き、顔を左右に振る。
バーナビーを見下ろして微笑して応えると、虎徹は指をそっと蕾の中に忍ばせた。
ゆっくりと挿入して彼に痛みを感じさせぬように慎重に内部を探る。
熱くまとわりついてくる粘膜を押し広げるようにして指を進め、内壁越しにしこる部分を探し当てる。
「ぁ……ふっ…あっっ!」
バーナビーの反応にほっと心の中で息を吐きながらそこを重点的に責めてやれば、先程達したばかりのバーナビーの雄が再び頭を擡げ始める。
彼の全身も桜色に染まって、それは匂い立つような色気だった。
指を3本まで増やして中をかき混ぜるようにして愛撫すると、バーナビーが目尻から涙をぽろりと零して虎徹に両手を伸ばしてきた。
「早くあなたが欲しい。来てください」
そう誘われて我慢ができるはずもない。
「お、おう…」
些か恥ずかしくてぶっきらぼうに答えると、虎徹はバーナビーの膝裏に両手を入れてぐっと押し上げ、その中心で慎ましやかにひくつく濡れた蕾に己を押し当てた。
息を詰めて一気にバーナビーを貫く。
瞬間、バーナビーの身体がぴんと弦を張り詰めたように反り返り、顎を仰けぞらせた。
無意識に逃げかける腰を両手で強く掴んで、反対に自分の方に引き寄せる。
「…いてぇか?」
不安になって問い掛けると、両手でシーツを千切れる程に掴んで耐えていたバーナビーが、ゆっくりと目を開いた。
「いえ、…大丈夫です。嬉しい…」
震える唇が紡ぎ出す言葉にじいんとなる。
「悪いっ…動くな?」
急激に射精の衝動が襲ってきて堪えきれなかった。
謝りの言葉を言うなり虎徹は律動を始めた。
バーナビーがすがりつくように手を伸ばしてくるのを反対に抱き締め、彼の艶やかな金髪に顔を埋める。
互いの触れ合っている肌が汗で濡れて、触覚が鋭敏になっているのか触れ合っている所からも得も言われぬ刺激が来る。
全身が性感帯になったようで、その激烈な快感に虎徹は自分が翻弄されるのを必死で堪えた。
が、長くは保たない。
一気に押し上げられるような快感が背筋を突き抜けて、虎徹は絶頂を迎えた。











嵐のように激しい情交が終わると、その後には何とも言えない満ち足りた至福感が訪れた。
はぁはぁと全身で息をし、バーナビーの身体に覆い被さって射精の余韻に浸る。
身体の下のバーナビーは、と見ると、彼も荒い息をし、くったりとなってベッドに沈んでいた。
汗で濡れた額に長めの前髪が貼り付いている。
そっとそれを払いのけてやると、彼が静かに目を開けた。
暫し視線を交わすと、それだけでももう心の中に暖かいものが広がって満ち足りる。
引き寄せられるように頬にちゅ、と口づけるとバーナビーが瞳を細めた。
「…今、僕がどんな気持ちか分かりますか?」
唐突に聞かれて戸惑う。
「いやぁ、喜んでるんならいいんだけど、もし後悔なんかしてたらおじさん困っちゃうよ…」
ちょっとおどけて返答する。
そんな言い方でバーナビーの気分を損ねないかと心配になったが、彼は幸福そうに笑った。
「この世にあなたが生きていてくれて良かった。あなたと出会えて良かった。あなたが僕とコンビを組んでくれて良かった。あなたがいてくれて、それだけで嬉しい…」
「バニー…」
「あなた程大切な人はいません。僕の…愛しい人…」
バーナビーがこれほど話してくるとは予想外だった。
呆気にとられてバーナビーを見つめていると、バーナビーがくすぐったそうに笑った。
「僕がこんな事を言うとおかしいですか?」
「い、いや……その……」
うまく言葉が出てこない。
こんなに素晴らしい言葉をバーナビーが言ってくれたというのに。
自分の語彙の無さに呆れる。
言葉がうまく出ない代わりに虎徹はバーナビーの唇に再度、感謝と敬愛の意味を込めて口付けした。
しっとりと唇を合わせ、舌を伸ばして優しく絡め取る。
緩やかに舌を動かして、バーナビーの舌を愛撫する。
生き生きとした反応が嬉しかった。
彼とこうして時間を共有していられる事が、夢のようだった。
嬉しくて、胸がどこか痛い。
甘美な痛みだ。
他人から与えられる痛みの内で、一番暖かく心地良い痛みだ。
「俺も、……バニー、愛してる…。ずっと一緒にいてくれよ…」
「…勿論ですよ、あなたの側を離れません…」
ふっとバーナビーの視線が溶ける。
そっと頬を撫でられて、視界が潤む。

暖かな手に頬を擦り寄せて、虎徹は静かに涙を流した。







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