◆Apoptosis◆
今日もバニーちゃんが嬉しげに俺のケツを掘ってくる。
なぁ、俺みてぇなおじさんのどこがいいんだ?おじさんには分かんねぇよ。
「虎徹さん、いいですかっ?」
「ん―あっ、あ、す、げぇいいっ、バニーっ、ホント、すげぇ!」
「愛してます、虎徹さんっ」
そりゃ言葉ではいくらでもいいって言えるし、実際身体は気持ちイイ。
なんていってもバニーがすげぇ丁寧に俺の身体をほぐして俺の気持ちいいように気持ちいいようにってばかり考えてくれてるからな。
俺はただ、ベッドにまぐろになって、足を開いてるだけでいい。
こんなおじさんの、ケツ毛とか生えた尻見て勃起するんだから、バニーちゃんって怖いよ。
俺だったら絶対勃起しねぇぞ。
だって、ケツの穴だぜ。それも野郎の。しかもおじさんと来た。
バニーときたら、そのケツ穴を舐めまでするんだから、理解できねぇ。
バニーの綺麗な綺麗な顔が、俺の尻の肉の間に鼻突っ込んで一生懸命舐めてくる所とか、なんか、可哀想で見てらんねぇ。
若くてさ、綺麗な女の子のあそこ舐めるなら分かる。
男なら誰でも、女の子の柔らかくてあったかいヴァギナを舐めたいって思うしな。
けど、コイツは、おじさんの堅くて汚いケツしか舐めねぇらしい。
コイツがすっげぇモテモテで、女なんかその気になれば食いまくれるってのを俺は知ってる。
コンビで一緒に居るんだ、取材待ちでぼけっとバニーを観察してると取材が終わったあとに、小綺麗なおねぇちゃんから誘いかけられたり、若いアイドルがいかにもフェロモンだだ漏れで接近してきたりしてるからな。
据え膳出まくりだ。
しかもすげぇ豪華料理だ。
さっぱり日本料理から、こってりフランス料理までよりどりみどり、好きなだけ食える。
なんて羨ましいんだ、と思ったが、コイツは全く興味がねぇらしい。
もったいなさ過ぎだろ…。
そしてコイツが食いたいのは、ただ一人、俺だけって訳だ…。
世の中理不尽だ。
俺のどこがいいんだ、バニー?
一度聞いてみた事がある。
そう聞くと、バニーがなんでそんなわかりきった事を聞くんだ、と言わんばかりの顔でにこにこと答えてきた。
『貴方だからですよ?この世に貴方は一人しか居ないでしょ?他の人なんて、興味有りません。貴方が好きなんです』
思いっきり断言されちまって、俺はぐうの音も出なかった。
そうかい、俺だからかい。
……俺の俺たる所以って、バニーちゃんにとってなんなの…?
「あ、あっ、虎徹さんっ、好きっ……」
バニーの切ない声の調子にはおもわず絆されちまう。
そんなに俺の事が好きなのかよ、ってしみじみする。
開いた脚をバニーの腰に絡みつけるようにして下から腰を振ってやる。
バニーのでかいペニスがごりごりと直腸を擦って、俺の感じる所を抉ってくる。
すっげぇ、たまらねぇ。
男とセックスなんて、絶対考えられなかったのに、俺がこうしてバニーに抱かれてんのは、とりあえず痛くなくて気持ち良すぎるからだ。
一人で抜いてた頃の事なんて、思い出せないほどの圧倒的な快感だ。
ナカで、バニーが暴れる。
前立腺をぐりぐりっと擦られて、目の前がぱぁっと光る。
腰の辺りがずん、と疼いて居ても立っても居られないようなすげぇ快感が腰骨から背骨を貫いて駆け上がる。
「虎徹さん、すごく可愛いっ、愛してるっっ!」
いや、おじさんだから可愛くはねぇと思うよ、バニーちゃん。
お前の目にはどんなフィルターがかかってんだ?
おじさん怖いよ。
「ねぇ虎徹さん、僕の事、好きですかっ?」
「あ、あぁ、好き、だっっ…っつか、あ、あ―っ、す、げぇいいッッ…。は、もっと、奥っっ!」
ちょっとした『好き」って言葉だけで、バニーが泣きそうに感極まってる。
まぁたまにしか言ってやってねぇからかな。
でも、実際これはリップサービスだ。
俺は、バニーを愛していない。
セックスが終わると、バニーが名残惜しそうに俺の身体から萎えてもまだでかいペニスを引き抜く。
ずるり、と抜け落ちる感覚にぶるっと身体を震わせると、バニーが眼を細めて俺を包み込むように抱き締めてきた。
「虎徹さん、……すごく幸せです。……貴方とこうしていると、夢みたいだ…」
どんな女でもうっとりしちまうような極上の笑顔で、きらきら目を輝かせてそんなセリフ言ってくるんだからな、コイツマジですげぇ。
その魅力を女に向ければいいのに。宝の持ち腐れだぜ。
バニーが俺の頬にちゅ、とキスをしてきた。
ふんわり柔らかな羽根でくすぐられるような優しいキスだ。
何度も何度も、俺の頬から鼻の頭、顎髭、そこかしこにキスを落としてくる。
翠の本当に綺麗な瞳が俺をじっと覗きこんで、にっこりしてきた。
「今日も貴方と一緒にいられて幸せでした。虎徹さん……愛してます…」
俺の頬を撫でて、ちゅうっと、今度は唇を重ねてくる。
舌が射し込まれて、やんわりと絡まってくる。
セックスの時は情熱的に激しく、終わったらあくまで優しく…って完璧だよな。すげぇ。
おじさんは恥ずかしくて、いたたまれないよ。
なぁバニ−、お前、いつまで夢を見てるんだ?
お前の前にいて、快感に喘いでいる俺は、可愛いか?
俺の汚いケツは、お前の目には極上の快楽に思えるのか?
俺の萎びたチンポは、お前にとって何よりも美味そうな食い物に見えるのか?
バニーの舌をちょっと噛んで吸ってやると、バニーが身体をびくっと震わせた。
顔を窺うと、頬を赤くして、うっとりした目つきだ。
俺が吸ってやったから嬉しいらしい。
きらきら光る金髪と白い肌、端正な美しい顔が間近に迫って、瞼が降ろされると長くてカールした睫がふるふると震える。
本当に、綺麗だよな、お前。おじさんはやっぱり分からねぇよ。
なぁ、バニー……もう、いいだろう?
おじさんは、もう、無理だよ。
俺だって、限界があるんだ。
もう、耐えられねぇ。
早く俺から逃げてくれよ…。
「虎徹さん、ずっとずっと、一緒にいてくださいね?」
バニーが低い声で甘く囁いてきた。
嫌だ。そんな事できねぇ、と言いたかったが、勿論そんな怖いことはできなかった。
俺は言葉を発する代わりに目で頷いて、バニーの柔らかな金髪を撫でてやった。
「虎徹さん……」
バニーがとろけるような表情をする。
俺を胸の中に抱き寄せ、この世で一番愛おしい者でも抱くように、そぉっと俺を抱きしめてくる。
肌理の細かい滑らかな肌は触れ合うと心地良くて、俺はまた、自分が卑怯者の階段を一歩上がったのを感じた。
バニー、バニー、…お前が狂ったら、俺のせいだな。
でも、俺にそうされるんだったら、本望だろう、バニー。
大丈夫だ。
俺が、最後にお前を殺してやるよ。
それが、俺のお前に対する唯一の責任の取り方だ。
「バニー、…寝ようぜ?」
そう言ってバニーの頬に自分からキスをする。
バニーが天使のように微笑んだ。
「はい、虎徹さん、おやすみなさい…」
囁いて幸福そうに目を閉じる。明日もこうやって俺たちは一緒に過ごすんだろう。
俺はバニーを愛していない。
俺は、俺しか愛せない。
でも、バニーは俺を愛している。
ごめんな、バニー。
最後には、お前に俺をやるから。
心は無理だけど、その他は全部やる。
だから、どうか俺を許して欲しい…。
許して欲しい、なんて、最後までやっぱり俺は自分の事しか考えていねぇんだな…。
お前をずたずたにして、きっと殺しちまう。
けれど、俺に殺されるなら本望だろう?
だから、俺を許してくれ。
その代わり、俺の人生を全部お前にやるから……。
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