◆茨の冠◆ 5
「独り暮らしなら、大丈夫ですね」
そう言って彼の腰に手を回して顔を近づけると、意図的に瞳を細めてふっと笑う。
途端に彼がぱちぱちと瞬きをして頬を染めた。
「いや、そのー…、君みたいな綺麗な子、その…」
口籠もる彼を見つめ首を傾げ角度を付けて、彼の唇に自分の唇を柔らかく触れさせる。
大きく目を見開いたまま口付けを受ける彼の顔を、間近に見る。
深い茶色の瞳は部屋の光線の加減で黄金色に煌めいて、まるで宝石のようだった。
唇を覆いながらバーナビーは彼が着ているスウェットのシャツの裾に手を差し入れ、腰から背筋にかけて直に撫でてみた。
指の腹に当たる張りのある皮膚と、その下の筋肉。
引き締まった硬い筋肉としなやかな皮膚の感触は、指が吸い付くようだ。
――かなり、いい。
「んっ…」
思わず興が乗ってバーナビーは、彼の歯列を割って舌を差し入れた。
驚いて逃げかける彼の舌を捉えて表面同士をざらりと擦り合わせながら、舌裏に自分の舌先を差し入れて擽ってみる。
「んっ……う…」
彼が鼻にかかった呻きを漏らす。
琥珀色の瞳に黒く長い睫がさっとかぶさって、瞼が閉じられる。
……悪くない。
というよりは、非常にいい。
バーナビーは、期待にぞくぞくとした。
さっきの男なんか比べものにならないほど、いい男だ。
男とセックスをするのは初めてのようだが、そこは自分がリードすれば問題はない。
ただ男に対して勃つかどうか、それが分からなかった。
が、物理的に刺激を与えてやれば、殆どの男は勃つ。
というのを、バーナビーは自分の経験で分かっていた。
それに、なんと言っても彼はここまで来ても逃げる様子がない。
今までの彼の態度から見ると、どうやら親切心から自分に付き合ってくれているようだが、そういう優しい人間というのは、こちらが強引に迫れば意外と付き合ってくれる事も多い。
舌の根元を擽りながら、相手の舌を誘い出すように何度もちゅっちゅっと吸う。
すると、彼がおずおずと応えてきた。
舌が伸びてきて、バーナビーの舌の表面を擦るようにしてくる。
ぬるぬると軟体動物のように舌を互いに蠢かせて擦り合わせれば、痺れるような興奮がそこから生まれ、バーナビーはあっという間に自分の股間に血が集まるのを感じた。
元々セックスをするつもりでここまでやってきたのだ。
だから、その時点で興奮している。
先程の喧嘩の一件があってやや気分が萎えていたが、ここに来て一気にそれが高まった。
それどころか更に高まって、バーナビーは今までに無く自分が興奮しているのを感じた。
自分の股間が、既に布地を押し上げるぐらいに堅く漲っている。
相手はどうだろうか、と背中を撫でていた右手を相手のスウェットの上から尻に降ろし、尻の肉を一回り撫でてから彼の股間へと差し込む。
「う……」
途端に彼がびくん、と身体を揺らした。
柔らかなスウェットの布地の内側にこりっと硬い器官を探し当てて、バーナビーは心の中でにんまりと笑った。
勃起している。
男同士のキスで勃起できるのだから、これなら大丈夫だろう。
唇を離して、間近で彼に向かって微笑すると、彼が目元まで赤くして視線を逸らした。
「男とした事、…無いですよね?」
「そ、そりゃもちろん、無い…けど…」
自分が勃起しているのがばれて少し開き直ったのか、彼がややぶっきらぼうな声でぼそぼそと言った。
「あなたは何もしなくていいですよ。僕が全部します。気持ち良くさせますから、……ね?」
「ねっ、…てお前、そのさぁ…なんか、こう…。……若いのに、うん、…凄くねぇか?」
もごもごと彼が戸惑ったような声を上げる。
ちょっとその様子が可愛らしく思えて、バーナビーは瞳を細めて笑った。
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