◆なんでこうなった?◆ 2
突如バニーが近付いてきた。
……やば、なんか怖くなってきた。
ノリノリなつもりだったけど、そりゃバニーを元気づけようと演技してただけで、実言うと、俺、バニーとセックスとか、……考えた事ねぇし。
ってか、するのか?
……マジで?
本当に……?
自分で仕掛けておきながら、急激な展開に泡を食っていると、バニーが俺の尻をがっしりと掴んできた。
やばっ…、ちょ、ちょっと待ってくれ。
思わず勢いでこんな格好しちまったけど、これ、やばくねぇか!
だって、バニーとセックス……とか。
いや、どうすんだよ。
本当にしちまうのかよ、やばいよ、俺……!
「―――ぐぁっっっっ!!」
しまった……。
待てとか言うよりも早く、バニーが俺の中にめり込んできた。
どうしよう……どうしようどうしようどうしよう!
「あっ……あっあっ…い、てぇっっ…くっっ……!」
身体がめりめりと引き裂かれるようだった。
焼酎飲んで良い気分になっていた身体が強張ってぶるぶる震える。
冷や汗がどっと出てきて視界が霞む。
やばい。痛ぇ。
……いや、痛ぇのに、なんかこう、うずうずして、こりゃなんだ…!
つか、バニーとセックスしちまった………!
おいおい、どうすんだよ。こりゃやばいよ。
どう考えても、やばいだろ、これ。
「はっ、……いてっ…ちょ、待ってっっ…!」
「待てませんよっ……!」
背後から熱い吐息混じりに言われて、ぞくっとした。
すげぇ、男くせぇ声だった。
バニーがこんな声出すなんて。
背筋がぞぞっと戦慄いた。
全身の産毛がぞわり、と逆撫でされたようだった。
考えてみたら、こういう風に他人と性的関係を持つとか、もう何年も経験がなかった。
肌が密着する感触とか、息づかいとか。暖かく息づいた身体を繋げている一体感とか。
何年ぶりだろう。すげぇ。リアルに感じて、身体がぞくぞくとする。
「……ぁ、あっあっっっ!」
不意に目の前がちかちかっとした。
あれ、なんだ、これ。
すげぇ、なんか気持ちイイっていうか、なんだ?
我慢できねぇ、身体が震える。
身もだえしてバニーから身体を離そうとする。
けれど、反対にぐっと引き寄せられて、バニーのちんこが思いっきり深く入ってきた。
「…うぐっっっっ!」
吐きそうなのに、…でも今まで経験したことねぇような未知の快感が、俺の下腹部から脳髄まで駆け上がってきた。
すげぇ…、なんだ、これ。どうしよう。
痛いのに、痛くねぇ。
気持ち悪いはずなのに、キモチいい…。
いや、そんな気持ち良くなってる場合じゃねぇ。
問題は、バニーと繋がっちまったって事だ。
どうすんだよ、俺。
仕事上の相棒とこんな関係になっちまうとか、まずいだろ!
「虎徹さん……!」
背後からバニーが俺の名前を呼んできた。
ズキン、と甘く深い疼きが身体の中心を走り抜ける。
たまらない。もうどうにかなりそうだ。
無我夢中で俺は自分のペニスを握った。
握って扱けば息ももできないほどの快感だった。
「あっ…ァっあーっ!!」
目の前が真っ白になる。
やばい……やばい、もう、だめだ……!
下腹がかぁっと熱くなった。
バニーが中で膨れて弾ける感触がした。
全身を硬直させて、俺も射精していた。
セックスが終わると、バニーは呆然としていた。
そりゃそうだよな、俺だって呆然だ。
「あー、あの、バニーちゃん、…えっと、…お尻、抜いてもらっていい…?」
へちゃ、と蛙が潰れたように俯せに潰れていた俺がおずおずと声を掛けると、はぁはぁと息をして虚ろな緑の目を向けていたバニーがはっとして身体を退いた。
「……んっっ」
抜ける感触に思わず声を漏らすと、バニーが頬をぱっと染める。
「あの…僕…」
「…やっ、バニー、すっきりしたか?」
っとまずい、ここでも明るい雰囲気にしねぇと、と俺は慌てて元気よく言った。
「……は、はい…」
「そりゃ良かった!じゃあ、すっきりした所で寝るか!ほらほら、バニーは普段一生懸命頑張り過ぎだからな!こういう時は俺に甘えていいんだぞ?」
つとめて明るく言いながら、身体を起こしてバニーの腕を掴む。
――やべ。尻から何か垂れてきた。
熱い液体が内股を伝う感触にぎょっとする。
俺は尻をぎゅうっと締めた。
呆然とするバニーを寝室へ連れて行って服を脱がせてベッドに押し込む。
毛布を掛けてぽんぽんと叩いてやって『おやすみ』、と言えば、バニーは呆然としたままだったが、目を閉じた。
暫くすると規則正しい寝息になる。
バニーが寝ると、俺はそろそろと立ち上がった。
尻から熱い液体が垂れる。やばい。
シャワー室に言って尻を洗う。じんじんする。
痺れて痛いのに、なんかこうその痛みが快感っていうか、なんていうか……。
……あ゛−、俺、どうすんだよ!
バニーと一線越えちまったじゃねぇか!
いやいや、バニーはたんに性欲がたまってただけなんだ。
まぁあれだ。ちょっとした事故って事で。
男同士で仲良かったら、たまにあるよな、こういうこと………ってねぇかな…。
考えれば考えるほど泥沼に嵌りそうだったので、俺はぶんぶんと頭を振った。
とにかく帰ろう。
帰って寝ればきっと大丈夫だ。
バニーだって、今日かなり酔ってたし、……そうだ、酔ってなかったらあんな事言うわけねぇって。
俺とセックスしたいとか…、……だよな。
だから、きっと明日になったら忘れてるはずだ。
酔った上での一夜の過ちって事で、すっきり忘れればいいんだ。
そうだ、そうしよう…。
俺は混乱する頭を振って、これ以上考えねぇようにと更に部屋に残っていた焼酎をあおると、痛む尻を庇いながらふらふらとよろめきつつバニーのマンションを後にしたのだった。
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