◆Sweet Lil' Bunny◆ 2
なんでバニーがこんな事してんの、俺に……!
狼狽してバニーから身体を退こうとする。
けれどバニーはがっちりと俺の上に覆い被さっていて動かなかった。
俺とバニーじゃ、バニーの方が体格がいいし体重も重いから、密着しているとバニーに敵わねぇ。
おいおい、どうなってんだよ!と混乱している間にも、バニーの右手は俺の股間、すなわちちんこを、左手は乳首を弄ってくる。
しかも困った事に、股間がすっかりでかくなってきちまった。
そりゃ触られたら反応するよな、とは思ったが、でも相手はバニーだ。
相棒だ。男だ。
やばいだろ。これ。
俺もだけど、バニーもおかしいって…!
――あ、あれか。
もしかして、俺が誰かとエッチしてみろとかそそのかしたのが気に入らなかったんだろうか。
バニー、プライド高そうだもんな。
自分が今までキスもエッチもしたことねぇってがばれたのが、しゃくに障ったのかも知れねぇ。
俺がちょっとばかり上から目線で説教しちまったからな。
それで、あれか?
俺に意趣返し、とかで、こんな嫌がらせ、してんのか…?
「……っ、んん゛っっ…ぷはっっ!」
顔が漸く離れたので、俺はぜぇはぁと息を継ぎながら大きく肩を揺らした。
どうしよう。
謝った方がいいか。……だよな…。
確かに、無闇にバニーを煽っちまった気はする。
特に上から目線が良くなかった。
バニーはそういうとこ敏感なんだ。
別にキスとかエッチとかしてなくたって、バニーはバニーで格好良くて人気者だもんな。
あ、でも、気になる子はいるんだよな…。
誰だよ、ソイツ。
…ってか、ソイツとすればいいんじゃねぇか。
――なんで、俺なんかとこういう事してんだよ。
って、ああそうか、意趣返しだったか。
俺が偉そうに説教したから。
そりゃ確かにバニーは上手だった。
キスした事ねぇとか思えねぇぐらいだ。
キスしながら身体触ってくるタイミングだって絶妙だ。上手だ。
『僕にお説教とか100年早いんですよ』って事か?
だよな、分かったよ、確かにお前上手だよ。
きっと、お前のその『気になる子』ってのもすぐにお前に夢中になるよ。
お前これからは復讐とかに囚われなくて済むし、思う存分青春を楽しむことできるもんな。
お前の好きな子なら、可愛くて性格の良い子なんだろうし…。
その、可愛くて性格の良い子とこういう事しろよ。
俺なんか相手にしてんじゃねぇよ。
って、相手にしてるわけじゃねぇか。意趣返しか。
俺の事からかってるんだったか…。
―――って、なんだこれ、胸が痛ぇ…。
胸がきゅっとした。
ちょっと泣きたくなってきてしまった。
変な気持ちだ。なんだこれは…。
「おい、もう退けって…」
俯いて唇を噛んで、俺はバニーを押しのけようと手を突っ張った。
相変わらずバニーの右手は俺の股間を触り、左手は乳首を摘んでいる。
ンな事、可愛い女の子の大きなおっぱいとか、柔らかいカントにしてやれよ…。
身体を捩ってソファから降りようとする。
けれど、バニーが反対に俺を拘束するように抱きすくめてきた。
「おいって…」
「やだな、虎徹さん。…逃げないでくださいよ」
バニーが低く押し殺した声を出してきた。
ぞく、と身体の芯が疼いて俺は焦った。
声が、すげぇ。
なんていうか、欲情した男の声だった。
バニーに握られているちんこが、むくっと動いた。
「いや、もう、分かったから。…お前がキス上手だって事。あとはほら、…好きな子にしてやれって…」
顔を背けてそう言うと、バニーの顔が再び覆い被さってきた。
「んむっ…!」
またキスをされた。
深く唇が合わさって強く吸われてくらくらとなる。
「……だから、してますよ?」
「………え?」
「好きな子にしてやれ、なんでしょ、虎徹さん。……だから僕は、僕の好きな子にしてます……」
「………ええ……?」
(それ、どういう意味……?)
思わず間近にバニーを見上げる。
バニーが眉を寄せた。
「あなたが言ったんですからね。好きな子にしろって。今更否定しないでくださいよ」
「…う、うん、言ったけど…」
バニーが俺を睨んできた。
宝石のような美しい緑の瞳がじいっと俺を見つめてくる。
緊迫感に息が吐けない。
俺が引き攣った表情をしていると、バニーが視線を揺るめた。
「僕の好きな子はあなたです。…だから、あなたにしています?いいんですよね?」
「……え、えっ?ちょ、っと待った!好きな子って…その、俺、『子』っていうような年じゃねぇぞ!」
「そんなの分かってますよ」
「だったら…!」
「でも、僕にとっては好きな子なんです。駄目ですか?」
「いや、駄目とかそういう問題じゃなくて…んんむっ!」
三度唇が覆い被さってきて言葉が途切れた。
バニーが激しく唇を吸ってきた。
吸われてくらくらと眩暈がする。
(バニーが、俺の事を、好き…?)
マジで?…本当に…?
―――やべぇ、…嬉しい。なんで?
どうしよう。俺、今、嬉しいとか思った。やばいだろ……!
「……ん、ぁ…ん…ゃ…ァ…ッ」
バニーの右手が俺のちんこをむにむにと握ってきた。
すげぇ、気持ちいい。
頭の中がとろっと蕩けてくる。
やばいやばいって。
俺、ちょっと、マジでちゃんと考えねぇと。
――バニーの、『ちょっと気になる子』は俺だった。
つまりバニーは、俺の事が好きだったわけだ。
俺はバニーに、『好きな子とキスとかエッチすればいいだろう』と助言した。
『大人同士なら大丈夫だ』って確約もした。
『簡単に誘っていい』とも言った。
――つまり。
俺とバニーはこれからエッチするって事なのか……?
い、いや、ちょっと待て…!
「バニっ、ちょっと待った!……ひっっ!」
不意にバニーがぎゅうっと俺のちんこを強く掴んできた。
ちんこから脳点まで一気にずきん、と痛みとも快感ともつかない電撃が貫いて俺は悲鳴を上げた。
「待てませんよ、虎徹さん。あなたが言ったんですよ、キスもエッチもしていいって。そうでしょ?」
男の本気の声だ。俺は血の気が引いた。
「大丈夫です虎徹さん。…痛くしませんから…」
「や、ちょ、ちょっと待ってっ、だって、俺っ…」
「あなたの事、前からずっと好きでした。無理だと分かってましたけど、あなたを抱きたくて、密かに男同士のやり方も勉強しました。ローションも買いました。使い道無いだろうとは思ってましたけど。でも、あなたの方から言ってきてくれるなんて、夢のようです」
「………」
バニーが立て板に水を流すようにすらすらと言ってくる。
本気だ。
こういう時のバニーは、以前から心の中に溜まっていた事を吐き出すように一気にしゃべる。
俺に一言も異論を差し挟ませないように。
本気、…って事は、バニーと俺でエッチするのか?マジでか?
「虎徹さん…」
耳朶に濡れた熱い吐息がかかる。
ぞくぞくっとやばい疼きが走った。
身体の芯がかぁっと熱くなった。
どうする、どうしたらいいんだ、俺。
おい、きちんと考えろ、鏑木虎徹…!!
と思ったが、理性が働くより前にバニーが俺のズボンのベルトを外して手を中に突っ込んで、直にちんこを触ってきたので、俺の頭はその刺激でいっぱいになっちまった。
やべぇ。
……なんか、こう、頭がくらくらする。気持ち良すぎる…。
バニーの指が強弱を付けて俺のものを握ってくる。
「……っ…ッッ!」
我慢できなくて俺はバニーにしがみついて肩に顔を埋めた。
駄目だ、ちゃんと考えなくては。
俺はどうしたらいい。
バニーは俺の事が好きだった。びっくりだ。
どうしたらいいんだ。
拒絶すればいいのか。
バニーの好きな相手が俺とかおかしいだろ、どう考えても。
バニーには可愛くて綺麗な女の子が似合う。ってうか、それが普通だろ。
どう考えても、同性で年上のおじさんな俺とか、おかしいだろ。
だったら拒絶だ…!
あ、でも、……俺……。
……いや、気持ちイイからだけじゃなくて、…本当は…。
本当は、嬉しい…らしい―――。
なんだよ、それ。嬉しいって。
バニーに好きって言われて嬉しいのかよっ!
………やべぇが、そうだ。
嬉しいんだ。
なんで嬉しいんだよ。
相棒から慕われてるから?っていや、これ、慕われてるってレベルじゃなくて、エッチしたいってレベルなんだぞ。それで嬉しいのか?
バニーは俺の事抱きたいって言ってきたんだぞ、掘られるぞ…!
……いや、でも…。それでも、嬉しい……ようだ。
――マジかよ……。
バニーにちんこを弄られてはぁはぁ喘ぎながら、俺はそこまで考えた。
「虎徹さん、…可愛い。…あなたのこと、ずっと好きでした…」
耳朶をぱく、と咥えられてぞくぞくっと戦慄が走る。
甘い告白が耳管を通って聴神経に伝わり脳細胞をとろとろにしてくる。
――そうだ。
俺はバニーが好きなんだ。
こんな風に抱き締められて股間を弄られるのが嬉しくてたまらないほどに。
バニーに『気になる子』がいるって聞いて胸が痛くなったのも、バニーが好きだからだ。
好き……。バニーが。
バニーの事が、好き……なんだ。
おいおい、どうすんだよ。
……いや、どうするもなにも、既にエッチ突入じゃねぇか。
もうここまで来たら開き直りだ。
先のことなんざ考えていられねぇ。
バニーの相手に俺がふさわしくねぇとか。
バニーの幸せ考えたら俺どうなの、とか。
そういうのは後で考えよう。
せっかく気持ちいいに勿体ない。
今この瞬間に、バニーが与えてくれる快感に身をゆだねてしまおう。
―――いや、いやいや、でも恥ずかしくねぇか?
おい、本当にするのか…?
バニーに足開いて尻の孔見せて突っ込んでもらうのかよ……!
考えたら眩暈がした。
もう一切何も考えないことにする。
あとはバニーにお任せだ。
痛かろうがなんだろうが、とにかく思考はシャットダウンだ…!
「………っ…バニーっ…」
俺はバニーの首裏に両手を回してしっかりとしがみつくと、耳元で名前を呼びながら身体の力を抜いた。
「虎徹さん…ッ」
俺の意図が分かったんだろう、バニーがそれはそれは嬉しげな声を出した。
あぁ、……気持ちいいよ、バニー。
もう、俺の事好きにしていいから…
俺だって…お前の事、好きなんだもんな…。
俺は自分からバニーの唇に吸い付いて、熱い息を吐きながら目を閉じた。
後は野となれ山となれ、だ……!
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