◆茨の冠◆ 15
「ん……」
飲み込んでくぐもった声を出す。
「…バニー……」
何をされるかは分かっていたのだろうが、それでも虎徹が狼狽した声を上げた。
ちらり、と上目使いに彼を見ると、目線が合った虎徹はさっと目を逸らして目元を赤らめた。
……どうなんだろうか。
こんな事をする自分を、彼はどう思っているのだろうか。
いや、でも、最初の出会いがもう既にこういう関係だったのだから、今さら取り繕う事もないはずだ。
半年前、彼は自分とセックスをした。
自分に対して勃起をして挿入して射精することができたのだから、今だって十分可能なはずだ。
その証拠に口の中で最初柔らかかったペニスが、舐めているうちにむくむくと硬く漲り、芯を持ち始め、口の中に収まらないほどになってきた。
半分包皮に隠れた亀頭を綺麗に剥いてやる。
つるりと照り光る丸い先端に舌をまんべんなく這わせると、頂点の可愛らしい口からぷくりと透明な蜜が滲み出てくる。
ちゅっと吸い上げればびくびくとそこが震え、更にむくりと頭を擡げて大きくなってくる。
自分の愛撫に応えて素直に変化するそれが嬉しくて、更には久し振りの舌の感触にも夢中になって、バーナビーはフェラチオに集中した。
すると虎徹がバーナビーの肩を掴んできた。
「んっ…も、う…いいから…。こんなにされたら、出ちゃうって…」
やや狼狽したような声だ。
動かしていた唇を止めて彼を見上げると、さっきよりも更に頬を赤くしてそっぽを向いている。
その様子が愛嬌があって、思わずバーナビーは咥えたまま笑った。
「んっ、くすぐってぇってば…」
虎徹がバーナビーの肩を掴んで立たせてきた。
「俺の方はさ、いいからさ、……それよりもお前の方だろ…?」
ぼそぼそと言いにくそうに言葉を切りながら、虎徹が言ってくる。
「……そうですね。結構久し振りなので、少し準備はしないと無理かもしれません…。ちょっと待っててもらえます?」
「あ、いや、……俺がやるよ」
「…え…?」
「これだろ…?」
ベッドヘッドに用意しておいたローションを手に取って虎徹が言ってきたので、バーナビーはやや驚いた。
無理に頼んでしてもらうのだから、自分が準備をするべきだとバーナビーは思っていた。
なので、虎徹がそんな風に言ってくるとは思いもしていなかったのだ。
眉を寄せて虎徹を見ると、虎徹がもごもご口籠もりながら笑った。
「俺だってさ、その、やんねぇと…。バニーちゃんになんかしてあげてーし、…な?」
「…はい…」
「じゃあ、えっと、…脱がせるよ?」
「……どうぞ?」
虎徹の節くれ立った大きな手が、バーナビーのバスローブの腰紐を解く。
肩から脱がせて全裸にする。
隠すものの無くなったバーナビーの身体を、虎徹が眩しげに眺めた。
「バニーってホント綺麗だよな…。最初にさ、見た時にもそう思ったけど。なんでこんな綺麗な子がって…、うん。その…誰とでもいいような、……あ、ごめんな。その…あの時はそう思ったんだ。……あんな子でも遊んでんのかなぁって…。……怒るなよ?」
「別に怒ってませんけど…」
「ええっと、……バニーのも、舐めた方が、いい?」
「……え?いえ、それは…いいです…」
虎徹が自分の既に半勃起したペニスを目にして思案げに言ってきたので、バーナビーはそれは、と首を振った。
そこまでしてもらうのは、さすがに怖い気がした。
今までセックスをした男の中にも、虎徹のように、いやそれ以上に優しい男はいた。
けれどそれは一夜限りの表面上の優しさであって、本当の自分を好いて優しくしてくれるとか、そういう類のものではない。
それに比べると虎徹は、まだ一緒に仕事を始めてそんなに時間が経ったわけでもないが、自分と喧嘩をしたり言い争ったり、そんな事をした上で、それで今こうして優しく自分に接してくれている。
そう思うと、あまりに優しくされるのは反対に怖い気もしたのだ。
「じゃあ、後ろをお願いします…」
虎徹がどのようにしてくるかやや不安を覚えながらも、バーナビーはベッドに俯せになると腰を上げて四つん這いになり尻を虎徹の方に向けた。
この部屋に来る前にバーナビーはアナルセックスができるようにと直腸内を洗浄していた。
なのですぐにでも、入れようと思えば入れられない事は無い。
もし虎徹とできるのだったら、できるだけ虎徹に負担を掛けたくなかった。
アナルセックスは容易である、という印象を与えたかったのだ。
それが、虎徹が自分からローションでバーナビーのアナルをほぐすと言ってきたので、実際の所バーナビーは戸惑っていた。
それでも尻を虎徹に突き出すようにしてじっとしていると、虎徹がごくりと唾を飲んで、それからローションをたっぷりと掬った指でバーナビーの肛門をそっと撫でてきた。
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