◆ちかん☆プレイ◆ 3





数日後。
会社が休みで一日完全オフの日。
俺たちの仕事は不定期だから出動がかかればいつだって行かなきゃならねぇが、マスコミの取材とかが土日に入ることもあるんで、平日にぽこっと休みをもらえたりもする。
俺とバニーは休みを合わせて取る事にした。
っつうのもバニーがどうしてもその日、痴漢プレイがしたいって言ったからだ。
どうやら俺にあの本を見せて話す前からいろいろと悩んで、どうやって擬似痴漢をするかをバニーなりに考えていたらしい。
いやそれもなぁ、ちょっと考えちゃうよ、バニー…、と思ったけれど、それだけ俺を愛してるって事なんだろうし、そう思うとバニーにそんな痴漢まがいな事をさせるなんて申し訳ないと、しみじみ思っちまったりもする。
とりあえずそんなわけで、俺は休みの前の日、バニーんちに泊まった。
ちなみに泊まって何もしなかった。
次の日に痴漢プレイをするのが目的なんだから、まぁバニーが手を出してこないのは分かるが、あのいつもやりたくて仕方がないってな感じのバニーが俺と一緒のベッドに寝て、大人しく俺を抱き寄せるだけで我慢しているのを見て、『あー、俺って愛されてんだなぁ』って今更ながらに思っちまった。
いや、これって……愛されてんだよな…?
次の日に痴漢プレイだからとか言うのは抜きにしても、俺がとにかくバニーに愛されてる事は確かだ。
バニーは股間を膨らませながらもじっと耐えて、俺を優しく抱き寄せて頬にちゅっとキスをするだけだった。










次の日、俺たちはブロンズステージのちょっと庶民的なショッピングセンターに繰り出した。
そのショッピングセンターにある映画館に、映画を見に行くためだ。
つまり映画館で痴漢プレイ、ってわけだな。
前の晩寝る前にバニーに『明日どうするんだ』って聞いた時に、バニーが『明日映画を見に行きましょう』って言ってきたんだ。
映画自体は俺が前から見たかったヤツだった。
俺の好きな俳優が渋い刑事役をやっているものだ。
俺たちはバニーのマンションからバニーの格好いい車に乗って出発し、ブロンズステージのでかいショッピングセンターの駐車場に車を停め、軽く昼食を食べた。
それから映画館の方に行く。
映画館は平日で昼間という事もあるし、いろいろな映画が上映されているせいか、俺たちが入った上映室はあまり人はいなかった。
座席の真ん中ぐらいに比較的固まって人が座っている。
俺たちは一番後ろの席に座った。
俺が席を決めたわけじゃなくて、バニーがそこを指定で取ったから、俺も隣に座ったってわけだが。
上映室に入る前に飲み物とポップコーンを買ったので、それを座席の所に置く。
少しすると部屋が暗くなって、スクリーンに綺麗な画像が映し出された。






「虎徹さん、座ったら僕たち他人同士って事でお願いします。痴漢プレイですからね?」
「あ、そう……うん、分かった…」
他人同士…?
恋人同士じゃ駄目なのか?
……よくわかんねぇな。
でもバニーがいろいろ計画を練っているんだったら、俺はそのバニーの計画に乗るしかねぇし。
「虎徹さんは普通にしていてくれていいですからね?」
「う、うん…」
「映画、楽しんでくださいね?」
映画館に入る前に笑顔でそう言われた。
今日のバニーはプライベートって事もあって、髪の毛を後ろで縛った上にいつもとは違う形の眼鏡を掛けていた。
服装も、トレードマークになっているジャケットじゃなくて、もこもこしたコートに中はざっくりとしたニットだ。
どんな格好でも似合うが、髪の毛を縛っているといつもと雰囲気が違って男前度が上がったような気がして、俺は柄にも無くぼーっとしちまった。
格好いいよなぁ、コイツ…。
などと思いながら、画面を見るバニーの端正な横顔をちらちらと眺める。
それから座席に片肘突いて、ポップコーンをぽりぽり囓りながらスクリーンを見つめた。
CMや次の上映予定の映画の予告が終わって、本編が始まる。






―――と、もそっという感じで俺の尻に何かが触れてきた。
びくっとして俺は瞬きした。
そっか………。痴漢プレイの始まりってやつだな。
バニーの手が座席の肘掛けの下をくぐり抜けて、俺の尻に触ってきたんだ。
俺はどうしようか、と悩んだ。
でも一応他人同士って設定だし、とにかく痴漢プレイなんだから、ここは見知らぬ男が俺の尻を触ってきたって考えるのが妥当だよな…。
とすると、えっと、俺は嫌がればいいのか?
うーん……。どうすればいいんだ…。
ちょっと考えて、俺は身体を少しずらしてみた。
するとバニーの手がそのまま俺の尻を追いかけて伸びてきて、尻肉をきゅっと掴んだ。
こんな事をして周りにばれねぇのかと思ったが、幸いな事に一番後ろの席だし、俺たちの席の周りに座っているヤツはいない。
一番近くのヤツでも、俺の三つ前の列に座っているカップルだ。
ここは知らねぇ振りをしてんのがいいんだろうな、と思って俺は平静を装ってコーラを飲んだ。
するとバニーの手が今度は尻からすすっと動いて、ズボンの布地を辿りながら前にやってきた。
指先でズボンの膨らみ、いわゆる俺のペニスだな――それを撫でられる。
ど、どうしようか…。
布地の上からだから、気にしないでいればいられない事もないが。
「…………」
やや身体を堅くしてそのままじっと動かないで映画を見ていると、次にバニーが俺のズボンのベルトを片手で器用に外してきた。
外してジッパーをジィと小さな音を立てて下げて、バニーの手が俺の下着をかいくぐって中に入ってきた。
さすがにこれは……。
バニーのひんやりとした指が俺の柔らかなペニスをきゅっと握ってきたので、俺は一瞬びくっと身体を震わせた。
冷たい、というのもあるし、どうしたらいいのかも分からなかった。
これが本当に知らないヤツに痴漢されてるって言うんだったら、この辺で俺はこの俺の股間に入り込んだ手を掴んで引きずり出して、痴漢してきたヤツを映画館の外に連れ出して説教するか、あるいは聞き分けがねぇようだったら警察に突き出すとか、まぁそんな事をする所なんだが…。
でも相手はバニーだし、これは痴漢『プレイ』だ。
プレイって事は、楽しむって事だ。
楽しむ……うーん……。
「い……っ!」
ちょっと悩んでいる間に、バニーの指が俺のペニスの根元を痛いほどに握ってきた。
指の輪で強く締めつけられて俺は思わず小さな悲鳴を上げてしまい、はっとして周りを見回した。
こんな公共の場所で変な声を出して、もし俺たちが何をやっているのかばれたらいくらなんでもまずい。
こういう事って他人前でやっていいのか?
いや、良くねぇよな…。
猥褻物陳列罪……にでもなるんだろうか…?
顔が割れてねぇ俺はいいとしても、顔がばれてるバニーなんざマスコミのいい餌食になっちまうじゃねぇか。
俺は密かに狼狽した。
バニーの手を掴んで離させようか、と思ったが、でもバニーがいろいろと考えて行動に移している事なんだろうからやめろというのも酷だし、本当に困った。
困っている間にもバニーの手は動き始め、俺の下着の中でくにくにと俺のペニスを弄りはじめる。
根元から先端に向けてぎゅっぎゅっと握り込みながら扱き始める。
やばい……。
確かに、いつもより興奮している。
こんな場所だし、声なんか出しちまったらやばいし。
もそもそしているのがばれてもまずいってのもある。
どうしよう………なんか気持ちがいい。
冷たい指も気持ち良いし、その指がだんだん熱くなってくるのも気持ちが良い。
扱かれて敏感になった亀頭を、くりくりとバニーの指が擦ってくる。
……腰が震える。
映画の筋なんざ、頭から吹っ飛んでいく。
周囲を落ち着き無く見回す。
暗いので見えないのに安心しつつも、それでももそもそしたりすると変に思われるという危機感から動く訳にも行かない。
考えてみると、痴漢されている時ってのはこんな感じなのだろうか。
公共の場所で恥ずかしい事をされてどうしたらいいか分からなくて、狼狽している間にどんどんと弄られる…訳だよな。
バニーの手が更に大胆に俺の下着をずり下げてペニスを表に出してきた。
ひやっと外気に晒されて、でも押さえつけてくる下着が無くなったせいで俺の息子はビンビンに勃起しちまって、バニーの手淫に悦んでいる。
困った……。
でも気持ちが良くて、俺は思わず無意識に足を開いちまった。





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