◆蜘蛛の巣◆ 3
「………ッ、…」
なんとなく予想はついていたのだろうが、改めて言葉で言われると衝撃なのだろう、虎徹は瞬時表情を固まらせた。
一瞬、衝撃の度合いが伺える虚ろな表情をして、それからはっと正気に返って下唇を噛んで顔を背ける。
その様がまた新鮮で期待に反しないものであったため、ロイズは薄く笑った。
じっと相手の行動を待つと、やがて虎徹が力無く顔を振り、あきらめたように顔を向けてきた。
困惑からか眉をきゅっと寄せ、鼻筋や目尻にかかった長い前髪の間から、焦げ茶の目でロイズを見上げてくる。
あきらめと、憤りと、悲嘆と、それから戸惑い……それらが混ざり合って瞳の中に見え隠れする。
身体が今覚えた悦楽に、彼は戸惑っているに違いない。
今まで感じた事のない強烈な快感だっただろう、――強制され、無理強いされて辱めを受けるのは。
「私は自分からは一切動かないから、君が全てやりたまえ…。いいね?」
ロイズはそう言って顎で虎徹に自分の股間を示した。
「…………はい」
虎徹が操り人形のようにぎくしゃくと両手を上げる。
宙に浮いた手は戦慄いてまるで病人のようだが、腕はしなやかで、筋肉の張り詰めた艶めいた浅黒い肌が美しい。
手首には、右手にヒーロー専用のPDA、左手には洒落た腕時計と紫の数珠、更に左の薬指にはシンプルな結婚指輪が嵌められている。
ロイズは先程読んだ虎徹の履歴調査書を思い浮かべた。
妻は5年前に他界し、現在は娘を実母に預けて一人暮らしをしていると記載されていた。
この男の事だからさぞかし妻を愛していたのだろう。
そう思うと、この男を踏み躙って尊厳をずたずたにしてやりたいという暗い欲望が更に喚起される。
結婚指輪の嵌められた指が、ロイズの上等な仕立てのズボンに触れてきた。
カチャリ、と小さな金属音を立ててベルトが外され、ジー、と鈍い音を立ててジッパーが降ろされる。
そして虎徹の指が慎重に下着の中から、ロイズのペニスを引き出してきた。
どんな顔をしてこんな事をしているのか、ふと見たくなって、ロイズは手を伸ばして虎徹の顎を捉えると上向かせた。
顎に触れると短い髭がざらりと指に触れた。
そのまま顎を指で押し上げると少し抵抗があったが、虎徹は大人しくロイズの手に従って顔を上げた。
茶色の瞳はやや焦点を失い、どこか途方に暮れ、迷子になった幼子のように揺れていた。
先程見えていた憤りは今は瞳には無い。
この異様な状況に抵抗するのに疲れてしまったのか、代わりに諦めと悲哀の色が濃く浮かんでいた。
哀れっぽい視線が意外なほどにこの男の雰囲気に合う。
寄せられた眉、下がった目尻、睫越しの潤んだ瞳、引き結ばれてはいるが、少し緩んでふっくらとした唇。
その唇をロイズは指でなぞった。
「口を開いて、咥えたまえ。分かっているね…、私に逆らってはいけない、という事と、私を満足させなければいけない、という事を…」
諭すように言えば、虎徹が苦しげに目を伏せた。
下がった目尻が震え、切なそうな表情になる。
脳内では葛藤で苦しんでいるのだろう。
自分の常識とプライドを守るか、それに相反する、薬によって呼び覚まされた肉体の悦楽と服従の後ろ暗い喜びに身を投じてしまうか。
虎徹が目を伏せたまま、震える唇をゆっくりと開いた。
意外な事に虎徹はペニスではなく、その下の陰嚢に顔を近づけてきた。
顔を傾けて、陰嚢の下から袋を掬い上げるように舌を伸ばす。
桃色の舌がちろりと動き、陰嚢の皺酔った袋を丁寧に舐め出した。
味蕾を使って擦るように舐め、口を開けて、玉の一つを咥内に吸い込む。
舌で玉を転がし、柔らかくねぶってくる。
「……っん…っ」
微かに鼻に掛かった声が漏れた。
ストレートに陰茎を舐めてくると思っていただけに、ロイズは内心驚いた。
『満足させなければならない』という脅しが効いたのだろうか、技巧やテクニックとは無縁の男だと思っていたが。
ピチャ、と湿った水音が立つ。
手を伸ばして虎徹の額に貼り付いた前髪を払い、彼の顔を見下ろすと、気付いたのか、虎徹が上目使いにロイズを見上げた。
玉を吸い込んで咥内で転がしながら見上げてくるその深い茶色の目は何処か茫洋としていて、自分で自分のしている事が理解できていない子供のようでもあった。
寄せられたままの眉に困ったような丸い虹彩は、人懐っこく可愛らしくもある。
髪を撫でてやると、ふっと瞼が閉じた。
長い黒い睫に目元が縁取られる。
上から見下ろすと、髭が見えないだけに虎徹は若く見えた。
頼りなさそうな雰囲気は、とてもワイルドタイガーとして勇名を馳せた人物とは思えない。
そのギャップにぞくりとする。
陰嚢を丁寧にしゃぶられていると、ロイズのペニスは少しずつ変化してきた。
項垂れていた柔らかい陰茎の内部、海綿体が充血しはじめ、ぴくり、と動き始める。
その変化に気付いたのか、虎徹が陰嚢から唇を離した。
唇の端からつつっと涎が滴るのを左手の甲でぬぐい、俯いて小さく息を吐く。
それから顔を上げて、今度は陰茎の根元に舌を伸ばしてきた。
根元の陰毛に鼻を埋めると、舌先でペニスの裏側の筋をつうっとたどる。
ペニスはまだ完勃ちにはほど遠い状態だったが、その柔らかい肉茎を虎徹は舌で舐めはじめた。
「っ……んっ…っ、ふ…っ」
飴玉をねぶるように、開いた口の中で舌を上下左右忙しなく動かしては、柔らかな陰茎を口腔内で捏ね回す。
時折ちゅっと吸っては大きく喉を動かして唾液を飲み込み、目を閉じたまま口を開いてペニスを根元まで咥え込む。
咥えたそれに歯を立てて甘噛みしながら顔を引き、亀頭をぬるりと舌で舐め回してから再びすっぽりと咥える。
刺激によってロイズのペニスが勃起しはじめると、海綿体をやんわりと数度噛んではちゅう、と吸い、充血を促してくる。
同時に頬を窄めて口内の粘膜で肉筒を包み、舌を裏筋に這わせながら再び喉奥まで深く咥える。
意外に達者なテクニックにロイズは正直驚いた。
この、愚直でヒ−ローとして陳腐な救世主の役割ぐらいしかできないと思っていた男に、こんな性技があったとは。
彼自身、薬によって異常な精神状態になって興奮しているのだろうが、元々の素質がなければここまではしないだろう。
セックスが、いや、こうして無理矢理辱めを受けるのが、根っから好き、という事だろうか。
ヒーローと言っても、こうなってしまえばただの淫乱な性奴だ。
まぁ、そういう役回りもこの男には似合いそうだが。
ロイズがそんな事を考えている間にも、虎徹の奉仕は続いた。
彼は再び首筋や胸にしっとりと汗を掻いていた。
柑橘類のようなほの甘いフェロモンが立ち上ってくる。
顔をずらして虎徹の股間を見るとそこは再度勃起して、跪いた太腿の間で、窮屈そうに濡れた丸い頭をびくびくと揺らしていた。
鈴口からは透明な蜜が盛り上がっては形を崩してとろりと垂れ、また涙のようにすぐに盛り上がってはとろとろと肉茎を垂れていく。
黒々とした陰毛はぐっしょりと濡れそぼり、部屋の照明が艶やかにその黒を光らせていた。
ペニスが疼くのだろう、虎徹は跪いた太腿を、無意識にだろうがもぞもぞと擦り合わせていた。
少しでもペニスに刺激を与えたいのだろう。
見ていると、その淫靡な足の動きとぴくぴくと脈打つペニスがまるで別個の生き物のように見える。
ロイズは革靴を履いた右脚を伸ばし、堅い靴の先で虎徹のペニスを弾くようにつついた。
「……うぁっっっ!」
ロイズの陰茎を深く咥えていた唇が一瞬緩み、虎徹が声を上げた。
ロイズのそれが虎徹の口から飛び出し、先走りの粘液で虎徹の鼻を汚す。
虎徹が切羽詰まった表情でロイズを見上げてきた。
目元がすっかり赤らんで、今にも泣きそうだ。
きゅっと寄せた眉頭と、下がった目尻。
潤んだ茶色の瞳が切なげに揺れてロイズを窺う。
ロイズは顎で続きを促しながら、靴先で虎徹のペニスを軽く蹴った。
「あァっ、は、あ……んく…っっっ」
虎徹のペニスがびくびくっと蠢く。
蜜が一気に溢れ出て靴先にかかる。
濡れるのも構わずにぐりぐりと堅い切っ先でペニスをつついては、裏筋をみみず腫れになるほどに引っ掻いてやると、虎徹が苦悶の中にしっとりとした艶を含ませて呻いた。
「は、ぁっ…あ、んあッッ!」
自分の快楽ばかりに夢中になって口が疎かになっているのにも気付かない。
ロイズは右手で虎徹の頭を掴むとぐっと引き寄せ、彼の口の中にペニスを深く突き入れた。
「ぐぁっっっッ!」
喉奥の柔らかい部分をペニスの先端で擦ってやれば、えづいたのか顔を歪め、ごほっと咳をしてロイズの手から逃れようとする。
それを許さず咳き込む喉にペニスを容赦なく突き入れては、虎徹の頭を前後に激しく揺さ振ってやる。
「ぐぁっ…―っっ、や、ぁっっ…んぐ、…っっ、ロ、イズさんっ、…ちょ、っと、待ってっ、くれっっ」
さすがに我慢できなかったのか、虎徹が突き込まれながら涙を湛えた目でロイズを見上げてきた。
仕方がない、というように肩を竦めてロイズが虎徹の頭を解放してやると、げほげほと激しく咳き込みつつ、喉を押さえて目を閉じる。
つうっと涙が頬に流れ、唇端からの涎と混ざりあって、顎髭の中に吸い込まれる。
待ってやっている間にも、虎徹の股間を刺激するのは続けた。
靴先でぐりっと裏筋を引っ掻き、とろとろに濡れた亀頭を弾く。
喉のえづきが収まった虎徹が、涙で一杯になった目をロイズに向けてきた。
その様に満足を覚え、ロイズは虎徹の粗相を許してやることにした。
頭を掴んでいた手を離し、代わりに靴で亀頭を執拗にリズミカルに弾いてやる。
靴先はすっかり濡れそぼり、靴にかかったねっとりとした先走りが床に滴った。
虎徹の瞳にうっすらと膜がかかる。
快感の膜だ。
気持ち良くてたまらないのだろう、上擦った息づかいに、熱い吐息、火照った身体から甘くまろやかな体臭が匂い立つ。
肌は汗で艶やかに湿り、筋肉がしなやかについた身体は汗がオイルのように光ってなまめかしかった。
虎徹が股間の疼きに耐えかねている事は分かっていた。
先程アナルに含ませた座薬は強力だ。
一度射精したぐらいで収まるものではない。
それどころかますます疼きが増して、刺激が欲しくて欲しくてたまらなくなっているはずだ。
もぞもぞと腰を蠢かせながら、虎徹がロイズと視線を合わせてきた。
その目に懇願の色があるのをロイズは見て取った。
ふっと思わず笑いが浮かぶ。
それが分かったのか、虎徹が切なげに息を吐いた。
「――…あ、の、…」
「駄目だね」
堪えかねて言い出そうとした所をぴしゃっと拒絶する。
「君はさっきイったばかりだろう、はしたないと思わないかね?ワイルドタイガーともあろう者が、随分と堪え性のない」
「……」
ぐ、と唇を噛んで俯く姿がまた嗜虐欲をそそってくる。
零れそうになった涙を堪えようと唇をぎりっと噛み、左手の甲で目をぐい、と拭く。
そこにはヒーロー専用のPDAが嵌められており、この男がヒーローとして活動していた映像を思い起こして、ロイズは愉快になった。
もっと辱めて、彼の方から強請らせてみたい。我慢できずに懇願するように。
ロイズは意図的に両方の靴で虎徹のペニスを挟むと、革でぐりぐりと肉茎を擦ってやった。
「ゔぁっ、あ、…――あ、あっ、…はぁっ、はっ―あっ…」
虎徹が堪えきれずに顔を振って声を上げる。
目元は先程ぬぐったばかりだと言うのにもう涙の粒が盛り上がり、目尻から頬に垂れていく。
はぁはぁと激しく息をするその顔はすっかり上気し、浅黒い肌も赤く染まって、見ると乳首がぴん、と尖りきっている。
そこに手を伸ばして、ロイズは両方の乳首を摘むとくりくり、と潰してやった。
「ひあ゛ッッッ!あ、は、も、っ…あ、あっ…ロ、イズさんっっ……、だ、めですかっっ?」
虎徹が苦しげに喘ぐ。
両手がわなわなと震え宙を彷徨い、ともすればその手が自分のペニスを掴んでしまいそうになってはっとし、顔を上げて涙に濡れた目を向けてくる。
目の中には、はっきりと懇願の色があった。
眉を寄せて目尻を垂らした表情が、中年の男なのに驚くほど可愛い。
「自分でするのは駄目だ。しかし、私が弄ってあげてもいい。きちんと礼を尽くしてお願いしてみたまえ、タイガー」
『いい』という言葉を聞いて瞬時虎徹の顔に喜びの色が浮かぶ。
それに伴う屈辱とか、そもそもこんな事をさせられている事に対する憤懣とかは、圧倒的な肉体的渇望の前に消え去ってしまったようだ。
虎徹が胸を大きく上下させはぁはぁと息をしながら、跪いたままでロイズに頭を下げてきた。
「…っ、してくださいっ…」
「……」
「………あ、の…」
ロイズが動かないでしらっとした視線を投げかけると、顔を上げて途端に不安そうに瞳を瞬かせる。
必死なだけにその姿は哀れを誘うもので、その分ロイズの心の中には満足感が生まれた。
「……あ、お願いします、その…い、…いじって、ください…」
きちんと言わなければ駄目だと分かったのだろうか、虎徹が言い直した。
額に汗が浮かんでとろりと垂れる。
乱れた前髪を顔を振って払って切れ切れながらもそう言うと、虎徹は再び頭を垂れた。
お願いをするように、ロイズの股間に顔を寄せ、ちゅ、とロイズの勃起したペニスにキスをし、それから上目使いにロイズを窺う。
意外な奉仕にロイズは内心少し驚いた。
なかなか可愛い反応をする。
見上げてきた茶色の濡れた瞳に視線を合わせ、微かに笑う。
「では立ちたまえ」
虎徹が命令に従ってふらつきながら立ち上がる。
ロイズの目の前で立った彼の姿は、30代半ば過ぎとは言え、逞しく鍛えられたヒーローとしての美しい体躯であり、ロイズは改めてしげしげと虎徹の裸体を観察した。
しっとりと濡れた汗がボディビルのオイルのように光って、彼の浅黒い肌をいっそう艶やかに張りのある肌に見せている。
かといってボディビルダーのように筋肉がグロテスクについているわけでもなく、神話の中の神の彫像のように美しい。
腰は細く、引き締まった腹の腹筋はなかでも見事だ。
その下、陰毛は濃く、ふさふさと茂ったそこは先程一度拭き取ったにもかかわらずまたしても先走りで濡れそぼり、黒く光って渦を巻いている。
中心のペニスも、先程達したばかりなのに、さっきよりも堅く漲って勃起していた。
薬の効果なのか、それともこの男がもともと性欲が旺盛なのか…。
それにしてもそそり立った肉棒は裏筋の脈動まで見え、静脈が浮き出た茎はこうして見ている間にも先端の尿道口から、ぷくり、と透明な先走りが盛り上がってはそれをとろりと滴らせている。
大きくえらが張り、上剥いて剥きたての果実のようにつやつやと濡れた亀頭の形は素晴らしく、ロイズはしばしペニスの形に見とれた。
「あ、の……ロイズ、さん…っ」
虎徹が堪え切れないのだろう、切羽詰まった声を上げてきた。
見上げると、涙がまた頬を伝っている。
体液が潤沢なのはいいことだ。
こうして涙に暮れる中年男というのがここまで食指を動かされるものだとは。
ロイズは薄笑いを浮かべ、右手を伸ばした。
「…あ、――あぁっ!」
ペニスの根元を強く掴むと、虎徹が眉をぎゅっと寄せて濡れた声を上げた。
もう声を殺す気持ちも失せたらしい。
我慢できる限界を超えたという事か。
薬にも弱い体質なのかもしれない。
「あっ、あっあっ…は、ぁ…うっ、も……もぉっ、っ、い、いきてぇっ……いい、っすかっ?!」
「駄目だね」
そんなすぐにイかれては興ざめだ。
ロイズはすげなく言うと、握っていた右手でしごいてやる代わりに、虎徹のペニスの根元を尿道が潰れるぐらいに強く掴んだ。
同時に、左手を亀頭に持って行き、しとどに濡れた尿道口にぐり、と爪を立てる。
「ゔぁぁぁぁっっっ!」
虎徹の身体がぐん、と反り返って、悲鳴が上がった。
腰がぶるぶると震え、よろめいて倒れそうになる。
が、彼の背中の背後にはデスクがあり、それに凭れた恰好になっていたため倒れることはなかった。
その代わり、デスクに凭れて腰を前に突き出した恰好になる。
そうするとペニスがロイズの方に突き出てきて、ロイズは容赦なく尿道口に人差し指の爪を立て、柔らかく繊細な入り口を爪先で抉った。
「ひあ゛ァっっっ!!」
虎徹が激しく頭を振る。
ペニスが真っ赤に膨れ充血し、肉棒の表面を這う静脈が盛り上がって今にも破裂しそうになる。
根元を強く戒めているため、そこは今すぐにでも血が吹き出そうなほど赤黒く膨れ上がり、先端からは血の混じった薄赤い先走りがどっと溢れ出てきた。
「あ、あっあっ、あ――っ、い、てぇっっっ…ひっ、あ゛ーっ、も、もうっ、やめてくれっつ…お、ねがいだからっ、」
「気持ちいいかね?」
「あ゛ーっ、あっあ、は、い、いい、いいですっ、いいから、お願いだからっっ!」
引き締まった腹が痙攣して、臍が忙しなく動く。
ペニスを中心に腰が淫靡にくねっては内股がひきつって震える。
亀頭が鮮やかな鮮紅色に染まり、蜜がとぷとぷと溢れ出して爪の間からとろとろと流れ落ちる。
「言い方がなってないね。君はいい年をした社会人だろう?」
「あ゛っ、あっあっ…―っ、あ、す、いませんっ、んぐっ、…お、願いですからっ、イ、イかせてくださいっ、お願いしますっっ!」
必死の面持ちで虎徹が苦悶する。
眉の間に汗が流れ、唇が震えて涎が滴り落ちる。
目元の涙と涎が混ざり合って顎髭もべとべとだ。
随分と快楽に弱い。痛みにも弱そうだ。
これで怪我も多いヒーローを10年も現役でやっているのだから、不思議なものでもある。
いや、痛みや快楽に弱いからこそ、怪我の多い仕事が好きという事もある。
痛みに快感を覚えているのかもしれない。
とすると、この状況も十分に喜んでいるという事か。
肩を竦めロイズは唇を歪めて笑った。
一件真っ当な正義の味方のように振る舞っていてその実態は変態か。
虎徹自身気付いていないのだろうが、これからおいおい、彼に知らしめてやる事にしよう。
ロイズは戒めていた右手を緩め、一気に根元から亀頭まで精液を絞り出すように扱いてやった。
「あ゛―ぁァッッッ!」
虎徹が顎を仰け反らせ声を嗄らして叫んだ。
どくん、とペニスが大きく脈打ち、尿道口より血の混じった白濁がピュッと迸り出る。
それはロイズの指を濡らし、指を伝ってぽたぽたと床に滴った。
先程よりは薄いが、まだ十分な量だった。
射精し終わると、がっくりと顔を俯かせ、虎徹が肩で大きく息をする。
ロイズがペニスから手を離すと、そのままずるずると背後のデスクに背中を擦るようにして床に尻を付き、ぐしゃぐしゃに乱れた黒髪に隠れた顔を、デスクの壁面に力無く凭れさせる。
はぁはぁと息をしても肺に十分に酸素が行き渡らないようで、苦しげに時折咳き込みながら全身を使って息をしている。
足も力無く投げ出されており、隠そうともしない股間は、白濁と体液と汗でぐしょぐしょに汚れていた。
むっとする生臭い匂いが再び部屋に立ちこめる。
暫く鑑賞していると、呼吸を整えていた虎徹が、のろのろと顔を上げた。
「す、いません…。あの、途中でした……」
目の前に座ったロイズの剥き出しのペニスが目に入ったのだろう、虎徹は自分が本来命令されていた内容を思い出したようだった。
気怠そうに乱れた髪を払って、顔を近づけてロイズの性器を口に含もうとする虎徹に、ロイズは軽く頭を掴んでおしやった。
「………ロイズ、さん?」
声に最初含まれていたような警戒や、敵意がない。
しっとりと艶を帯びた低く甘い美声で名前を呼ばれ、ロイズは一度萎んでいた自分の股間がむくりとまた頭を擡げるのを感じた。
虎徹が潤みきった茶色の双眸を向けてきた。
すっかり涙で濡れた下睫に縁取られた、やや焦点のぼけた目がじっとロイズを見てくる。
ロイズは虎徹の顎に手を伸ばし彼の顔を更に上向かせると、微笑した。
「もう、いい。なかなかに楽しませて貰ったよ、ワイルドタイガー」
名前を呼ぶと、蕩けていた表情がぴく、と強張る。
理性がほんの少しでも戻ってきたのだろう。
強張って、視線が鋭くなって、ロイズの目を避けるように逸らされる。
涎で濡れた唇が噛み締められ、顔色がすっと失われる。
「じゃあ、…その、もう、……いいですか?」
甘く柔らかかった口調が堅く変化する。
まだ理性がすぐに戻ってくるぐらいの興奮のようだ。
ということは、まだ興奮が十分ではない、という事でもある。
ロイズは口元に笑みを増やしながら、優しく言った。
「今までのはほんのお遊びといった所なんだよ、ワイルドタイガー。…それでは、そろそろ本番と行こうか?」