◆HONESTY◆ 16









「……………」
どんなにその言葉を欲していただろうか
欲しくて欲しくて堪らなかった言葉が今現実に、彼の口から発せられる。
その言葉に包まれながら抱き締められている。
『愛している』、と虎徹は言った。
自分は虎徹に愛されているのだ、そう思った瞬間、身体の中心が甘く切なく疼いた。
心は勿論だったが、身体も彼を欲していたのに、ずっと彼に抱いてもらっていなかった。
それに気がつくと、体温が瞬間的に一、二度上がったような気がした。
――身体が火照る。
熱い。
触れ合っている箇所がびりびりと痺れる。
痺れた部分から、甘い疼きが全身に広がる。
身体が震えてくる。
虎徹がバーナビーのシャツに手を掛けてきた。
そのまま服を脱がされる。
バーナビーの服を脱がせて虎徹ももどかしげに自分の服を脱いで、再び抱き締めてくる。
肌と肌が触れ合うと、それだけで眩暈がした。
もう、身体全て、細胞の一つ一つが彼を欲していた。
虎徹が欲しくて興奮していて、火照ってたまらない。
虎徹の肌も、自分と同じぐらいに火照っていた。
素肌同士が触れ合うだけで、じいんと痺れ、陶然となる。
「おじさん…」
呼べば虎徹が応えて、バーナビーを強く抱き締めてきた。
そのまま唇を深く奪われて、無我夢中でバーナビーも虎徹に反応する。
舌同士をもどかしげに擦り合わせ、唾液を吸い、虎徹の舌を歯で噛んではその弾力のある生き生きとした感触を味わう。
虎徹の手が、バーナビーの股間をまさぐってきた。
布地の上から形をなぞり、そこが既に硬くなっているのを感じ取ったからか、手がするりとベルトをかいくぐって、下着の中へと入り込んできた。
直に握られて、バーナビーは息を飲んだ。
………どうしよう。
既にそこは、下着を持ち上げ、湿らせる程に勃起している。
指で擦られて、びくんと身体を震わせてしまって、はっとして顔を赤らめて俯く。
「バニー…、嫌じゃなかったら、このまま、お前を抱かせてくれ…」
虎徹が低い声で耳元に囁いてきた。
勿論、嫌なはずがなかった。
こうして再び触れ合えるなんて、思ってもいなかった。
すっかり、あきらめていた。
実際にはあきらめられず、身体は変調をきたし、悲鳴を上げていたのだが、それでも絶対無理だと、そう思っていた。
自分がいかに苦しかろうと、無理なものは無理なのだ…と、思っていたのに。
なのに、今、こうして、虎徹と触れ合っている。
夢……?
――ではない。現実だ。
虎徹は自分の事を『愛している』と言った。
それも夢ではない、現実だ。
………どうしよう。
不意に感情が溢れてきて、バーナビーは眼を瞑った。
涙が溢れてきた。
「バニー、愛してる…」
再度虎徹がそう言いながら、バーナビーのズボンのベルトを外し、下衣を押し下げてきた。
「すっかり痩せちゃったな…、もっとちゃんと食ってくれよ…」
説教調で言われる言葉にも、ぞくりとする。
彼の手がペニスを握り、尻肉を撫で、腰骨をなぞってきた。
ぞくぞくっと甘やかな戦慄が身体の芯を走り抜けて、バーナビーは思わず顔を振った。
「バニー…」
名前を呼ばれて、涙ですっかり潤んだ目を開く。
虎徹が上からバーナビーを覗き込んでいた。
「バニー…もし、嫌ならちゃんと言ってくれ。じゃないと俺はお前に好き勝手しちまう…。お前のことが欲しくてたまらないんだ…」
上擦った声で言われて、ずきん、とペニスが疼いた。
虎徹の頭を抱えるように両手を回すと、バーナビーは自分から虎徹の唇にキスをした。
一度唇を触れ合わせて少し離し、再度唇を押し当ててキスを繰り返す。
触れ合った唇から、暖かな感情が溢れてきた。
あぁ、どうしよう。
こんなに幸せで。
――今、もし死んだとしても悔いはない…。
そんな事まで考えてしまって、バーナビーははっとした。
虎徹が、自分の返事を待っている。
何か、言わなければ。
何を言おうか。
…もう、いいんだ、自分を偽らなくても。
彼を拒否する必要もない。
彼が自分を好きで、自分も彼を好きで……こうして触れ合っているのが途轍もなく幸福で……そう、この気持ちを、彼に伝えなければ。


「嫌なわけないじゃないですか、おじさん。……僕の方が、あなたよりも、あなたのこと好きなんです…」
バーナビーは掠れた声でそう囁いた。


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