◆HONESTY◆ 17
虎徹が深い茶色の目を眇め、探るようにバーナビーを見つめてきた。
「…本当か?」
「本当です」
当然じゃないか、というニュアンスを込めて言うと、虎徹が眉を寄せた。
「だってバニー、お前、俺の事避けてたじゃねぇか?俺はてっきり嫌われたって言うか、用済みで、俺の事なんかどうでもいいんだろうって思ってた。用済みはおとなしく引き下がるべきだと思ったんだけどな、でもそこまで大人にもなれなくてさ、もうどうしようもなくて、…とにかくお前に、言うだけは言って玉砕しようと思ってた…」
「……ごめんなさいおじさん。あなたを苦しめてしまったんでしょうか…。…でも、僕も、すごく悩んだんですから、許してください」
ちゅっと口付けながらバーナビーはそう言った。
「あなたは僕と違ってノーマルな人です。奥さんもいたし。そんなあなたを好きになってしまって、どうしようと思っていたんです。もしあなたの事が好きだっってばれて、あなたに気持ち悪がられたりしたら、そうしたら僕は生きていけません。それよりは仕事上だけの付き合いで居た方がましだって思ったんです」
言いたい事はたくさんあった。
全部言っておかなければとも思った。
バーナビーはせかされたように言葉を続けた。
「…あなたに軽蔑されたり気持ち悪いって思われて、あなたが僕の傍からいなくなってしまったら、僕は生きていけません。……それよりは、バディとして仕事の上だけでも傍に居られたらって思ったんです…」
「バニー、バカだなお前…」
虎徹が眉尻を下げて笑った。
笑いながら愛おしくて堪らないというように、バーナビーの唇から鼻の頭、涙で濡れた目尻に唇を押し当てて優しいキスの雨を降らせてくる。
「ノーマルとかなんとか言うけど、だいたい最初にお前を抱いた時点で、俺がお前を気持ち悪く思ったりしねぇって分かんねぇか?ちょっとでもそんな事を思っていたらセックスなんかできねーよ」
「おじさん………」
「……良かった、お前が俺の事を嫌って無くてさ…。……つうか、俺、もう飽きられたんだと思ってたんだよ。つまんねぇセックスしかできねぇやつだと思われて。お前の過去とか知らねーし、上手な男と付き合っていたのかも知れねーし、比べたら俺なんかな…。……お前の事満足させることもできねーんじゃないかとかさ…」
「……まさか!何言ってるんですか!怒りますよ!」
虎徹の言ってきた事が自分の想像のあまりにも範疇外だったので、バーナビーは呆気にとられると同時に腹が立ってしまった。
虎徹の髪を思い切り引っ張って強い口調で言うと、
「あいててててっ!」
と虎徹が悲鳴を上げながら、許しを請うようにバーナビーを抱き締めてきた。
「ごめんごめん、バニーちゃん、でも本当にそう思ったんだよな…。俺自信ねーからさ、そういうとこ…。セックスつまんねー?とかも聞けねぇし、さすがにプライドあるしさ」
「何馬鹿なことを言ってるんですか、本当に。……言っておきますがおじさん、僕、おじさんじゃないと興奮しませんからね?あなたが好きだから。あなた以外の男とセックスなんてしませんよ」
虎徹の言い分がよほど気に障ったらしく思わずむきになってそう言って、それからバーナビーは頬を染めて目を伏せた。
「バニー………」
虎徹がバーナビーを呼びながら強く抱き締めてきた。
抱き締められると幸福で、こうしているのが夢のようで、バーナビーは鼻の奥がツンと痛んで涙が溢れてくるのを感じた。
これ以上泣いたりして恥ずかしい所を見せたくないと思ったけれど、ダメだった。
涙をぽろぽろ流しながら、虎徹の頬に自分の頬を擦りつける。
虎徹が応えて、バーナビーの目尻を舐めながら、
「ごめんな」
と言ってきた。
「俺がもっとお前の事、考えてやれば良かったよな、ごめん、バニー。俺、自分の事ばっかり考えてた。バニーに飽きられたんじゃないか、とか、もう用済みなんだろうとか、そういう事ばかり考えていて、お前が素っ気ない態度の裏で苦しんでるの分からなかった…」
「おじさん……もう、いいんです。だって今こうしてあなたに抱いてもらっているんですから…」
涙声でそう言いながら、虎徹の唇に再度自分の唇を重ねる。
唇同士が合わさると、そこから全身が総毛立つような快感が広がって、お互いの心が通じ合ったというのもあるのか、バーナビーは一気に自分の身体に火が点くのを感じた。
「んっ……んんっ」
既にバーナビーのペニスは腹に着くほどにそそり立ち、先端から透明な蜜をしとどに溢れさせている。
虎徹の手がバーナビーのボトムを下着毎はぎ取りながら、もどかしげに自分の下衣も脱ぎ捨てた。
外気に晒されたバーナビーのペニスは、びくびくと頭を揺らして蜜をとろりと茎まで伝わせている。
そこに虎徹が乱暴に握ってきた。
蜜を指にすくいとるようにして数度扱き、指を濡らす。
その指をバーナビーの奥まった部分へと進めてくる。
先走りを纏った指がぬるりと襞をなぞってきて、バーナビーはぎゅっと目を瞑った。
指がずぷ、とアナルに挿入される。
虎徹の指に慣れたそこは、久し振りにも関わらずすぐに馴染んで痛みもない。
指がずずっと内部に入れば、覚えのある快感にバーナビーは堪えきれずに顔を左右に振った。
焦れったくなって壁に背中を預け、浮いた足を広げて虎徹の指を誘い込む。
「あっ、…ぁっ!」
その指が内部の敏感な部分をぐりっと擦ってきたので、堪えきれずバーナビーは背中を反り返らせて喘いだ。
前立腺を刺激されると、それだけですぐにでもイってしまいそうになる。
それでなくてももう、身も心もすっかり熱く火照って虎徹を早く迎え入れたいと主張しているのだ。
「おじさん、も、もうっ…だめ、ですっ…!」