◆Mimosa◆ 12
抱き締めて、顔を近づける。
間近に緑の瞳を見ると、吸い込まれそうだった。
顔を近づけて角度を付け、そっと唇を塞ぐ。
バーナビーは逃げなかった。
おずおずと、彼の唇が応えて開かれる。
開いた唇の中へ舌を差し込めば、バーナビーの舌が迎え入れて絡まってくる。
絡め合わせ、凹凸のある舌の表面を擦り合わせる。
ぬめる感触が心地良くて、もっと感じたくなる。
バーナビーの舌は、少しひんやりとしていた。
ぬるりと絡み合わせて動かせば、粘膜の擦れる感触に身体の内側から甘美な刺激が溢れてくる。
舌を絡ませ、名残惜しげに一度強く吸って離す。
バーナビーがすがるように虎徹を見て、それから目を伏せた。
「でも、怖いんです。…あなたがもし……」
「俺はいなくならない」
バーナビーの声に被せるように、虎徹は低い、だがはっきりとした声で断言した。
バーナビーの頬を撫で、唇端にちゅっともう一度キスをする。
「もしお前が俺を嫌いになっても、いなくならない。お前がいやがっても傍にいる。だから安心しろよ」
そう断言して、もう一度バーナビーを見る。
珊瑚礁の海のような碧色の瞳が、泣きそうに揺れていた。
胸が詰まって、虎徹はその頬を撫でた。
滑らかな頬が、少し赤くなっていた。
「なぁ、バニー…」
吐息だけで囁く。
「お前は俺の事、好きか…?もしお前が俺を好きじゃなくても、俺はお前の傍に居る。ずっと。…でも、お前が俺の事好きでいてくれたら、嬉しい…。俺の事、ほんの少しでも愛してるんだったら、嬉しいよ、バニー…」
「――おじさん!」
不意にバーナビーが大きな声出して、ぶつけるように唇を押しつけてきた。
勢いに押されてやや身体のバランスを崩すと、そこをバーナビーに抱き締められる。
「何バカな事言ってんですか、おじさん!好きに決まってるじゃないですか!もう、おじさんったらそんな事、前から分かってたんじゃないんですか!だから僕に好きと言ってくれたんだって思いましたよ…!」
突然バーナビーに強い調子で言われて、今度は虎徹がたじたじとなった。
「い、いやそれは知らなかったっていうか。……だってお前、『身体だけ』って言ってたじゃねーか…?」
「おじさんっ、僕だって、そんな…っ!……それは、身体だけじゃないと、怖いから…ですけど…。でも、あなたの事、好きだからっっ…!」
感情が一気に溢れ出たようで、バーナビーが激しい調子で言いながら、虎徹の胸を叩いてきた。
「ご、ごめんっ、その…」
「おじさん、好きです!あなたが好きです!絶対言わないって思ってましたけど…っ」
「ほ、本当に…?」
「ここで嘘なんか吐いてどうするんですか!もうっっ!」
ぎゅっときつく抱き締められて、息が苦しくなる。
苦しくて肺に思うように酸素が入らない。
けれど、苦しいのに嬉しくてどうしようもなかった。
バーナビーの背中に手を回し、宥めるように背中をさする。
バーナビーの抱き締める力が少し緩んで、虎徹は大きく息を吸った。
はぁはぁとしていると、バーナビーが虎徹の頬に何度もキスをしてきた。
「好きです、おじさん…」
「バニー……。ごめん、俺がもっとお前の事分かってれば良かった、ごめんな…。でも、俺はバニーが好きだ。どんなバニーでも好きだ。俺の傍にいてくれさえすれば、どんなお前でも。でも、やっぱり俺の事愛して欲しいけど…。なぁ、バニー、俺を信じてくれ。俺は絶対いなくならない。誓うよ。だから、お前を俺にくれ…」
「おじさん……もう…」
バーナビーが身体ごと抱きついてきた。
鼻孔に彼のつけている香水の爽やかなほの甘い香りが入ってくる。
―――くらくら、した。
「好き、…好きです、愛してます…」
バーナビーが耳元に囁いてきた。
夢のようだった。
胸がツキン、と痛んだ。
甘くて切ない痛みだった。
幸せな痛みだった。
そのまま助手席のバーナビーに身体を近づけ、虎徹はバーナビーを抱き締めた。
「バニー…」
絶対離すまい、とするかのように強く抱きすくめる。
触れ合った部分が燃えるようだった。
興奮が直に伝わっていく。
手を伸ばし席の下を探ってシートを倒す。
助手席の方に無理矢理身体を移動させ、バーナビーにのしかかって上からきつく抱き締める。
無意識に股間を擦り合わせる。
「ぁ、おじさん…っ…」