◆11◆
高校生たちはバーナビーをちらちらと眺めながら、こそこそ内緒話をしている。
「ねぇねぇあの人、すごい格好いい…」
「私もそう思った。ちょっとバーナビーに似てない?」
「そうね、ホント似てる」
「一緒にいるの、妹さんかなぁ…」
などと小声で話しているのが聞こえて、バーナビーはさりげなく視線を逸らして肩を竦めた。
が、高校生達の声は更に聞こえてくる。
「バーナビーって言えばさあ、ヒーロー復帰してますます格好良くなったよね。私前からファンだったんだぁ」
「えっ、私もっ」
「私、バーナビーの写真とか全部持ってるよ。グッズも持ってる!」
「写真集買ったの?」
「勿論じゃない。あんた持ってないの?」
「えー……、ちょっと高くてさ…買えなかったんだよね」
「見たい?」
「うん!」
「じゃ、今度見せてあげるよ」
漏れ聞こえる会話がバーナビーの話題に終始しているのが微妙に居心地が悪く、バーナビーはそちらを見ないようにしてコーヒーを飲んだ。
ドラゴンキッドがクスッと笑って囁いてきた。
「バーナビーさんって人気すごいですよね」
「いえ、どうでしょうね。……まぁ、ありがたいって思わないと駄目でしょうけど…」
以前はあまり気が付かなかったが、復帰してみて周りのことが分かってくると、確かに自分のヒーローとしての人気が高いこともバーナビーは分かってきた。
ややくすぐったい、恥ずかしいような気もするが、でも純粋に嬉しい。
こんな風に一般人の中に入って他人の話を聞いたり、のんびりこういう所で何かを食べたり飲んだりという事も無かっただけに、新鮮な心持ちがして、バーナビーは捜査中であるにもかかわらず心が和むのを感じた。
一緒に居るドラゴンキッドが、そういう雰囲気をもたらしてくれる子だからかもしれない。
暫くハンバーガーを食べ、ドリンクを飲んでから外に出る。
ショッピング街をそぞろ歩きをする。
ドラゴンキッドが歩道沿いの店を覗き込んで、年相応の女の子らしいものや男の子らしいものにも興味を持っているようなのが可愛らしい。
微笑ましくそれを見ながらも、一方では神経を研ぎ澄まし周囲に不審な人物がいないかどうか注意をする。
が、そのような人物はいないようだった。
ブロンズステージを歩いているので低所得者らしい層は一定数いるものの、脱獄犯のような人物は見当たらなかった。
人混みの方が隠れやすいからいるかと思ったが、そうでもないようだ。
もしかしたら、ひとけのない所に潜んでいるのかもしれないと考えている所に、ピーピー、とPDAの呼び出し音が鳴る。
「はい」
返事をするとPDAからアニエスの声が聞こえてきた。
『タイガーが拉致されたようなの!みんな急いでジャスティスタワーに集合して!』
そう声がして、PDAが切れる。
(……え?虎徹さんが!)
「…………」
という事は、シルバーステージでブルーローズと組んで捜査をしていた虎徹の方に脱獄犯がいたという事だろうか。
急に不安が込み上げてくる。
思わず顔をドラゴンキッドの方に向けると、ドラゴンキッドも真面目な顔をして厳しい表情をしていた。
「行きますか」
「うん!」
すぐさまブロンズステージのショッピング街を離れ、二人はジャスティスタワーに向かった。