◆After a storm comes a calm.◆ 3
バーナビーにそう言われた。
おずおずとベッドに上がって仰向けに寝っ転がる。
ギシ、とベッドを軋ませてバーナビーが乗り上げてくる。
「大丈夫ですよ。虎徹さんは、ただ寝ててくれればいいですからね?」
虎徹が緊張しているのが分かるのだろう、優しい声音だ。
虎徹は思わずぎゅっと目を瞑った。
そこにふんわりと唇が降りてきた。
唇の表面同士をほんの少し擦り合わせるような感じで、一瞬唇が触れ、それからすぐに離れる。
再び唇が降りてきて、今度は押しつけられて無意識に唇を開くと、口腔内にバーナビーの舌が遠慮無く入ってきた。
(…バニーちゃんとキスしてる…)
さっきまではこんな事をするなんて、ほんの少しも考えた事もなかったのに。
キスだって考えてみると、もうここ何年もしていない気がする。
(なのに突然男と、しかもバニーと……)
頭の中がぐるぐるする。
バーナビーの舌が虎徹の咥内に入ってきて、虎徹の舌を引っ張ってきた。
「んっ………っん…」
ふわり、と柑橘系の爽やかな香りが鼻を擽る。
シャワーの後香水もつけてきたのだろうか。
バーナビーが自分に対してかなり気を遣っているいう事が分かって、虎徹は複雑な気持ちになった。
「んっ……」
ねっとりとキスをされて久し振りのキスにくらくらとなると、バーナビーが虎徹のバスローブの紐を解いてきた。
唇が離れ、恐る恐る目を開ける。
バスローブの下には何も着けていなかった。
襟を掴んでバーナビーがゆっくりとそれを両側に広げる。あっという間に身体が全部露わになってしまう。
思わずかっと頬が熱くなる。
バーナビーがじっと虎徹の裸体を見つめてくる。
検分するように頭の先から爪先まで見られて、恥ずかしさのあまり居ても立ってもいられなくなった。
「バ、バニーちゃん、そんなに見ないで…」
思わず情けない声が出る。
「虎徹さん、やっぱり良い身体してますね」
バーナビーがふっと口元に笑みを浮かべた。
「ここ、感じます…?」
そう言ってバーナビーの手がすっと虎徹の乳首を摘んできた。
「あっ、ちょ、ちょっと!」
摘んできたと思う間もなくくりくりと押し潰すように転がされて、そこからぞくぞくと何とも言えない感覚が湧き上がる。
思わず声を上げてしまい、はっと頬を赤くして顔を背ける。
どういう反応をしていいか分からなかった。
だいたいこんな風に他人と肌を接するの自体、久し振りだった。
しかも、男にされるのは、生まれて初めてだ。
むずむずしてむず痒く擽ったくて、なんとも表現しようのない心持ちだ。
バーナビーの手が乳首を離れて、そこから腹、臍へと移動し、虎徹の勃ち上がりかけたペニスを無造作に掴んできた。
「…うわっ!」
突然掴まれて思わず身体が跳ねる。
が、バーナビーが虎徹の身体を跨ぐようにして圧し掛かっているから動けない。
「虎徹さんの…いい形してますね」
言われるとものすごく恥ずかしい。
しかし、その恥ずかしさが引き金となっているのかそれとも直接的な刺激が原因か、バーナビーの指がペニスに絡まって絶妙な力加減で扱いてくるので、あっという間に其処は充血して硬く勃起した。
「それに、すごく硬いです…」
どんな顔してそんな事を言ってるんだと思って、うっすら目を開けてバーナビーを窺う。
バーナビーは表向き普段と変わりない整った美しい顔を、ほんの少し微笑ませていた。
見るといつの間にか彼もバスローブを脱いでいる。
柔らかい間接照明にバーナビーの淡い金髪がきらきらと煌めく。
その下の裸は筋肉が逞しく付いた理想的な肉体だ。
しかも色白の彼のことだから、滑らかで艶やかな白い肌に覆われたその身体は、ギリシャ神話の神の彫像のように美しい。
思わずまじまじとその裸体を見て改めて美しいと思ってしまって、虎徹は更に恥ずかしくなった。
相棒の裸なんて見慣れていたはずなのに。勿論今までそんな意味で見た事は無かったが。
でもよく見ると本当に理想的な身体をしている。
これならどんな女性だってバーナビーが誘えば、即座に誘いに乗ってくるに違いない。
(全くもったいねぇなぁ…)
ふとそんな風に考えてしまう。
勿論バーナビーが誘えば、どんな男性でも誘いに乗って来そうだ。
というか、今まではそうだった訳か。
(うーん……)
心中複雑になって、虎徹は思わず唸った。
「どうしました?」
「あ、いや、なんでもねー、うん、大丈夫大丈夫」
バーナビーに問い掛けられて慌てて首を振る。
「無理強いはしませんからね、安心してください」
バーナビーが端正な表情に完璧な微笑を貼り付けて言ってきた。
(いや、ホント、綺麗だよなぁ…。絶対、バニーとベッドを共にしたりしたらみんなうっとりしちまうだろうなぁ…)
などとぼんやり考えていると、バーナビーが身体をずらして自分の股間に顔を埋めてきたので、虎徹は思わず喉奥でひっと悲鳴を上げた。
「ちょ、バ、バニーちゃんっ!」
瞬時バーナビーの身体を太腿で締め付けてしまう。
が、バーナビーは気にする様子もなく、ぱくり、と虎徹のペニスを咥えた。
「う………っ!」
熱い濡れた粘膜の感触が直接敏感な性器に伝わって、ぞくっと全身が総毛立った。
こんな風に接触を持つのは数年ぶりだった。
相手が男だという所は初体験だが、男だろうが女だろうが、熱くて濡れた咥内にペニスを含まれるという事は同じだ。
「や、ちょ、っと、ァ…っ」
バーナビーが顔を前後に動かして虎徹のペニスを刺激してきたので、虎徹はたまらず背骨を撓らせて呻いた。
ものすごく、気持がいい。
元々半勃ちしていたペニスがみるみるうちに完勃ちし、全身の血がそこに流れていくような感覚を覚える。
「ぁ……ちょ、っと待て…っ!」