中間考査 《1》












「あれ、今日も頼まれたんだね?」
6組の前を急いで通り過ぎようとして、手塚は今日も不二に見付かってしまった。
「そんなに急いで行かなくたっていいじゃないか、手塚」
苦笑しながら不二が教室から出てくる。
「ほら、半分こしよう?」
いつものように、不二がノートの山を半分に分けて、抱える。
「腕の方はもう大丈夫だから、手伝ってくれなくてもいいんだが」
当然のように不二が手伝ってくる事に対して、手塚は未だに慣れなかった。
それに、腕の方も殆ど治っている。
一クラス分のノート程度の重さでどうにかなるような、柔な腕でもない。
「まぁ、いいじゃないか、それよりさ、手塚……」
廊下を並んで歩きながら、不二が笑いかけてきた。
「今度の中間考査の数学さあ、勉強どのくらい進んでる?」
数学は1組も6組も、テニス部顧問の竜崎先生が受け持っていた。
当然テストも同じ内容が出題される。
「ここのとこ、ちょっと勉強さぼっていたら、なんだか分かなくなっちゃって………それで、手塚に教えてもらいたいんだけど……」
「おまえがか?」
手塚は意外な心持ちで問い掛けた。
不二はテニスの腕は言うまでもなく素晴らしいが、成績も悪くない。
悪くないどころか、学年で十指に入るほどの成績である。
そうは言っても、手塚は、成績が常に学年トップクラスだったから、不二の成績は手塚よりは下であるが。
「数学はちょっと怠けると、すぐ分からなくなるじゃないか?」
不二がにこっとして言ってきた。
「ここで点数落とすわけに行かないからさ、竜崎先生、点数落ちたら容赦しないよ!って脅かすし。………ね、明日の土曜日、部活が終わってから、僕のうちに来てくれない? 数学教えて欲しいんだ」
「……………」
「ね、いいだろう?……それとも、他に予定でもあるの?」
「……まぁ、別に構わないが……」
「良かった! 3年の成績っておろそかにできないからねえ、心配だったんだよ。でも手塚に教えてもらえればもう安心だな」
「そんなに楽観視してもらっても困るな。俺が教えられることなど、ほんの僅かしか無いぞ?」
「いやいや、それはご謙遜。君ならなんでもオールマイティじゃないか」
「…………」
不二に断言されて、手塚はぐっと詰まった。
確かに、自分はテニスは勿論の事、なんでもそれなりにできると思う。
それだけの努力を重ねてきている。
しかし、不二に言われると、どことなく違和感があった。
(不二こそ、なんでもできるくせに………)
と言いそうになって、手塚は慌てて口元を押さえた。
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない………」
不二が不思議そうに顔を覗き込んできたので、手塚は急いで誤魔化した。
















ノートの続編です。