傀儡 
《3》














「ふふふ、やっぱりね。…………キミも分かっただろう?」


その日の夜、ショックを受けたまま、手塚は不二の家を訪れた。
不二から、経過報告をしろとあらかじめ言われていたのだ。
会って最初に言われたのが、その言葉だった。














あの後、大石を探しに部室からコート、グラウンドまで行ってみたが、大石はどこにもいなかった。
部室に学生服もカバンも起きっぱなしで、どこかへ行ってしまったのだ。
自分がいる限り、大石は戻ってこないだろう。
そう思って、重く乱れた心を抱えたまま、今日は帰ってきたのだが。






「大石、帰ってこなかったね。部室から飛び出してきたからさ、あーあ、って思ったんだけどね……」
「………見てたのか?」
「うん……」
不二がにっこりする。
香ばしい匂いを立てるコーヒーを一口飲んで、手塚を見て嬉しそうに笑う。
胸がむかむかして、手塚は俯いた。
不二に唆されて、大石に酷いことをしてしまった。
その事に対する後悔が、手塚を苦しめていた。
温厚で、あんなに優しかった大石に、どうしてあんな事をしてしまったのか。
----------しかし、大石が興奮していたのは、紛れもない事実だった。
(大石も、俺を………?)
-------------まさか………!
「……悩んでるの?」
不二が、手塚を覗き込むように顔を寄せてきた。
「後悔してる?……大石にああいう事しちゃって?」
「俺は………」
「大石、可哀想だよね〜」
不二がしれっとした調子で言ってきたので、手塚はかっとなった。
「おまえがやれって言ったんじゃないか!」
「そうだよ?」
肩を竦めて、不二がくすっと笑う。
「良かったじゃないか、大石の気持ちが分かってさ。……分からないで、大石を誘惑して振り回してるより、ずっとマシだよ……」
「誘惑なんか、してない……」
「キミと一緒にいるってだけで、大石にとっては拷問なんだよ、手塚」
「ばかな……」
「キミが目の前で着替えしたりしてさぁ、裸になったりしてるんだよ? その度に、大石、きっとすっごく辛かっただろうねえ……」
「気持ち悪いこと言うな………」
「だって、本当のことだもん……」
不二がにっこり笑った。
「……ね、どうするの、大石のこと?」
コーヒーを飲みながら、不二が尋ねてきた。
「大石、部活辞めるかもね……」
「………なぜだ?」
「だってさ、大石の性格からして、キミにばれちゃったのに、そのままキミの側に平気でいられるわけないじゃん?
 部活を辞めて、キミの元を永遠に去っていくか…………或いは、反対にキミを手に入れるか…………どっちかしかないでしょ?」
「…………そんな………」
「………どうする、手塚?」
不二が身を乗り出して、手塚を見つめてきた。
茶色の瞳が不思議な光を帯びる。
「大石とずっと一緒にいたいんなら、一緒に部活やりたいんなら、………彼に身体をあげることだね?」














「………………!」
ぎょっとして不二を見ると、不二が薄い唇の端を上げて笑った。
「いいじゃない、どうせ僕とはやってるんだし。………僕は別に構わないよ、キミを大石と共有しても……」
「不二………」
「……ねえ、したくなっちゃった………手塚、ズボン脱いでよ」
不二が、低く囁いてきた。
俯いて、唇を噛んで、それから手塚は黙ったままズボンを下ろした。
「四つん這いになって………」
下半身だけ脱いだ格好で、手塚は床に両手足を付くと、不二に向けて尻を突き出した。
不二の命令に従うのは、もう、手塚にとって当たり前のことになっていた。
どうして、拒絶しないのか、自分でも分からない。
不二が当然のように要求してきて、自分も当然のように、それに応える。
そういう関係が出来上がっていた。
「ここ、きっと大石も気に入ると思うんだよね………」
不二が、くすっと笑って、手塚の後孔を舌で舐め上げてきた。
「大石に、一緒にいて欲しいんだろう、手塚?」
「………………」
「こういうふうに彼を誘うんだよ。………そうすれば、大石は、ずっと一緒にいてくれるよ?」
襞の周りを舐められて、くすぐったいような、ぞわりとした快感が、背筋を駆け昇ってくる。
思わず首を振ると、不二がおかしげに喉の奥で笑った。
「そうやって嫌がるような様子をするところが、また可愛いよね、キミ。………本当は、欲しくてたまらないくせにさ……」
「……………!!」
おもむろに、不二の肉棒が入ってきて、手塚は背筋を強張らせた。
不二が、手塚の腰をしっかりと抱えて、前後に揺さぶり始める。
覚えのある快感が電流のように流れて、手塚は喉を鳴らした。
不二を受け入れ慣れた身体は、あっという間に快楽の底に落ちていく。














「あっ………あ………ふ………じッッ……!」
耐え切れぬように声帯を詰まらせて不二を呼ぶと、不二が嬉しそうに笑った。






「やっぱりキミは可愛いよ、手塚。………最高だよ………」


















手塚ったらすっかり不二に好きなように扱われてます(笑)