桎梏 
《7》











「か………んとく………?」
跡部が泣きはらした目で榊を見上げてきた。
「いいか、跡部、今日おまえを抱くのは俺だ。さっきの事は忘れろ。おまえを犯すのは、俺だ」
そう言って榊は跡部の首筋に自分の唇を押し付けた。
「…………」
蒼い瞳を大きく見開いて、跡部が呆然として榊の愛撫を受ける。
跡部の身体が細かく震え、大きく見開かれた瞳が揺れる。
首筋を赤く跡が浮かぶほど強く吸い上げると、跡部がびくりと身体を戦慄かせた。
「跡部、おまえ、俺が好きだろう? 好きな俺にヤられるのなら、本望だろう?」
唇を跡部の耳に移動させて、榊は囁いた。
耳の柔らかな部分を吸い上げるようにして愛撫する。
「あ………あっあっ……!」
跡部が戸惑ったような声を上げた。
少し高めの、まだ少年らしさを残した声。
それを聞きながら榊は、跡部の耳から首、それから白い胸に唇をずらして、そこで薄桃色に震えている乳首をなぶった。
「や………あ………ッ!」
跡部は小生意気で傍若無人な少年だったが、時折、自分にだけ、まるで飢えた子供のような視線を注いでくるのに、榊は気付いていた。
ほんの時たまだが、世界の誰よりも飢えた表情をして、自分を見つめている。
彼が自分に認められたがっているのは分かっていた。
もっとも、テニス部に入ってくる生徒達で、自分に認められたがらない少年はいない。
しかし、跡部は、他の少年たちとは違った。
認められたがり、それから、どういう訳か知らないが、愛されたがっている。
愛に飢えた表情を垣間見て、榊は冷笑したものだった。
お門違いだ。
自分に何を期待しているのか知らないが、そんなウェットな関係など、榊の最も嫌悪するところだった。
そんな表情は、家族にでも見せてやればいい。
もっとも、家族から愛を得られないから、そして、そんな自分の孤独な心を誰にも見せられない、つまらないプライドのせいで、俺なのだろうが。
そのような跡部を特別に扱うのは、彼が増長する原因にもなりそうだったが、この際そんな御託を言っていられるような状況ではなかった。
乳首を舌で舐っていると、そこがすぐに勃ち上がってきた。
「や……や………ッ」
跡部が弱々しく首を振る。
「俺だ、跡部………」
もう一度確認させるように言うと、跡部が瞳を開けて怯えたように榊を見上げてきた。
「監督……」
「そうだ、俺だ……」
跡部の視線に頷くと、跡部が涙を一杯に溜めて、いやいやするように榊に顔を擦り付けてきた。
「監督、お、俺……」
「しゃべるな。……黙って俺に抱かれろ……」
右手をずらして、きゅ、と跡部の性器を握る。
先程さんざんなぶられたそこは、柔らかな繊毛が痛々しく捩れていたが、それでも榊の愛撫に応えて勃ち上がってきた。
きゅっきゅっと根元から先端まで扱いてやる。
「あ……あ………ん……ッッ!」
戸惑ったように身体を固くして、跡部は榊の愛撫を受けていた。
先程の恐怖が身体から抜けないのか、時折ぎくっと震える。
が、その度に榊を確認するかのようにしがみついてきて、花のような唇を震わせる。
少年らしさを残した、桃色の性器の先端を剥いてやると、そこは既に透明な涙を滲ませていた。
ぎゅっと握り込みながら、数回扱くと、
「……あッッ!」
羞恥からか、顔を背けて跡部が短く呻いた。
どくり、とそこが弾けて、生暖かい粘液が迸る。
他人の手によって与えられる快感は、これが初めてのようだった。
先程強姦された時には、痛みと恐怖でとても自分が達する事などできなかったらしい。
はぁはぁと浅く忙しく息を吐きながら、戸惑ったように、羞恥を隠しきれない様子で榊にぎゅっと抱き付いてくる。
榊は黙ってその跡部の肩を撫でてやると、彼の脚をぐい、と広げさせた。











「あ…………」
ぎくり、と跡部が榊を強張った表情で見上げてくる。
「や………ッ」
手の中に溜まった精液を、跡部の後孔に塗りつけながら指を埋め込むと、跡部が身体を兎のように跳ね上げた。
「痛ッ……あッッ……!」
「大人しくしていろ……」
さんざん蹂躙された其処は痛々しく腫れ上がっており、跡部が痛みしか感じていない事は分かっていたが、その痛みを与えたのは自分であると、跡部の記憶を塗り替える必要があった。
自分ならば、跡部は納得できるはずだった。
内部をほぐすように指を埋め込み、我慢強く跡部の快感を探り当てる。
「や……あ……ッッ!」
指が腸壁のある一点を擦ったとき、跡部が戸惑ったような声を上げた。
そこを何度も指で擦りあげると、跡部が身体を震わせて、甘い声を漏らす。
「あ、あ………ん……あ……ッッ」
後ろからの快感に戸惑っているらしい。
脚の力が抜けて、男を受け入れる体勢が整ってきた事を感じて、榊は指を引き抜くと、柔らかな蕾に、ズボンから引き出した赤黒い凶器を押し当てた。
しなやかな両脚を抱え上げ、跡部の内部に一気に侵入する。
















「ああぁぁッッッッ!」
長く高い悲鳴が跡部の口から漏れた。
逃げを打つ身体を押さえつけて、榊は自分の凶器を根元まで深く跡部に押し込んだ。
「……俺だ、跡部……」
虚ろな跡部の頬を叩いて、正気に戻させる。
「俺だ………分かるな?」
「……監督………かんとく………ッ」
「そうだ、俺だ……」
跡部が震える腕を榊の背中に回してきた。
「今日おまえを抱いたのは、俺だ。………いいな?」
跡部の細い顎がこくり、と頷くのを確認して、榊は抽送を始めた。
「い……あ……いたッ………あッ、ああッッッ………!」
弱々しく頭を振る跡部は、ただの傷付いた少年だった。
いつもの強い視線も、不遜な態度も、欠片もない。
自分の前に身体を開き、愛撫に耐え、涙を流し、懇願する。
榊は不可思議な興奮が自分の裡に湧き上がってくるのを感じ、密かに狼狽した。
(俺が興奮している。………こんな子供に………?)
「やッ……あ………ッああッッッ……!」
涙に暮れた蒼い瞳が、縋るように見つめてくる。




榊は眉を顰めて、ぐっと跡部を貫いた。


















監督ご苦労様デス。