sweet kiss 
《2》













「侑士や………侑士って呼んでな………」
甘く低いテノールで囁かれて、ぞくり、と脊髄に痺れが走った。
「………ぁ………」
思わず鼻に抜けるような喘ぎとも取られる声を出してしまい、跡部はかっと赤面した。
「景吾………好きや………」
忍足が、重ねて跡部の耳元で囁いてきた。
ぞくっと身体中の毛が立って、跡部は狼狽した。
忍足に好きなどと言われて、それを自分が嫌だと感じていないのが分かったのだ。
「……は、放せよ……」
これ以上抱き締められていると、どうなるか分からなくて、跡部は口ごもりながら、忍足から離れようとした。
「そうつれないこと、言わんといて。アンタに会わんとさびしゅうてな……」
言いながら忍足が、跡部の耳の下に口付けを落としてきた。
びくん、と身体を強張らせると、忍足が耳の下から顎にかけて舌を這わせてきた。
「俺、アンタにイカれたらしいのや。なァ、景吾、俺を慰めてや………」
忍足とは思えないような優しい声音と愛撫に、跡部は戸惑った。
跡部が困惑しているすきに、忍足の手がシャツの下に滑り込み、素肌をまさぐってきた。
「う…………」
ぞくぞくとした快感が走り抜けて、跡部は驚愕した。
「や、め…………!」
いつもの自分と違う。
ほんのちょっと忍足に触れられただけで、まるでそこが性感帯でもあるかのように敏感に反応する。
「どうや、気持ちようなってきたか?」
「な………んだよっ!」
忍足が跡部の身体に体重をかけて、ベッドの上に押し倒してきた。
そうして、跡部の両腕を掴むと、ベッドの上に縫いつけるように拘束し、驚いて目を見開いた跡部の顔に自分の顔を近づけてきた。
「ぅ…………!」
すっぽりと唇を覆われて、跡部は顎を仰け反らせた。
熱い舌がねっとりと入り込んできて、自分の舌と絡み合う。
総毛立つような快感が全身を襲って、どくん、と下半身が大きくうねった。
身体の中心に火がついて溶けたように熱くなり、その熱がどんどんと身体の末端まで伝わっていく。
「薬、効いてきたようやな?」
深い口付けを交わして、一旦唇を離した忍足が、跡部の様子を観察するかのようにじっと目を細めて見下ろしてきた。
「な………に、入れたんだ……」
もう、息も上がっている。
忍足に触れて欲しい、もっと刺激が欲しいと、身体中が訴えている。
跡部は興奮を抑えかねて、忙しく息を吐きながら、それでも身体の上の忍足を睨んだ。
「ちょっとな…………痛み止めに、気持ちようなる成分の入ったヤツや。尻専用の薬、売っとるんやで? アンタ、知らへんやろ?」
「てめぇ………」
「どうや? そう粋がらんと………俺と気持ちええこと、しよ?」
「くそッ、放せよッッ!」
忍足にまんまといっぱい食わされたのを知って、跡部はかっと頭に血が昇った。
理性を振り絞って、忍足を押しのけようと脚をばたつかせたが、媚薬に犯された身体は、忍足がほんのちょっと跡部の下半身をまさぐってきただけで、あっという間に陥落した。
「……あっ、あッッ 」
「……な? こんなになっとるのに……嫌がってもしょうがあらへんやろ? 一緒に気持ちようなろうや?」
忍足の節くれ立った大きな手が、跡部のハーフパンツの中に入り込んでくる。
「あっ………うぅ………ッッ!」
直に性器を握り込まれて、跡部はたまらずに歯を食いしばった。
脳髄が痺れるような快感が突き上げてきて、もう、忍足に一杯食わされたことも何もかもどうでも良くなってしまう。
それよりも、もっと快感が欲しい。
イかせてほしい。
本能が、跡部の脳を凌駕した。
「う………あっあっ………ッッ」
跡部の抵抗が止んだのを見て取って、忍足がにやにや笑いながら、跡部のハーフパンツを脱がせてきた。
露になった跡部のものは、すっかり天を向いて勃ち上がり、びくびくと脈打ちながら、ぱっつりと張り詰めた先端から透明な涙をとろりとこぼしていた。
それをきゅっと根元から先端にかけて扱かれて、跡部はシーツを千切れるほど掴んだ。
「うぅッッ………く……ッッ!」
「声、我慢することあらへんやろ?」
ベッドの端に腰を掛けて、右手で跡部のそれを扱きながら、忍足が楽しげに声を掛けてくる。
「ここはアンタんちやし、家政婦はんも上がってこんようだから、好きなだけ声出したらええやん?」
笑いを含んだ声に、快感で霞んだ目を上げて忍足を睨むと、忍足が肩を竦めてぎゅっと性器を強く掴んできた。
「うぅ………ッッ!!」
途端に目の前が白くなるほどの快感が走り抜けて、跡部は背筋をぴんと突っ張らせた。
もう、薬のせいもあってか、頭の中は理性が欠片もなく吹き飛んで、跡部は頭を弱々しく振りながら、忍足の与えてくれる快感に翻弄されていた。
全身の血が、駆けめぐって一点に集中する。
身体の中の熱い塊が、解放を待ちわびて発射の時を待っている。
もう少しで絶頂に達しそうなその時、
「………うッッッ!」
突然、忍足が跡部の性器の根元を強く握りしめてきたので、絶頂に達する直前でせき止められて、跡部は溜まらず呻いた。
「な………んだよ!」
汗が滲む目を必死に開いて忍足を睨み上げると、忍足が口角を吊り上げて笑った。
「アンタだけ気持ちようなってもな。……一緒にイきたいんや、……ええやろ?」
強く根元を握ったままで、もう一方の手で、忍足が跡部の肛門をまさぐってきた。
「うぅ…………!」
昨日とは全く違って、跡部のそこは、薬が溶けて柔らかく綻んで、忍足の指を歓迎した。
ぬるり、とたいした抵抗もなく指が挿入され、内部の感触を堪能するかのように、忍足がくいくいと指を蠢かしてきた。
「あっ、………あっ!」
前からの快感とは違う、腰全部を蕩かすような快感が突き上げてきて、跡部は堪えきれずに激しく首を振った。
「やだ………ッッ!」
苦しい。
もうほんの少しでイきそうなのに、イけなくて、それでいて後ろからの快感が激しく自分を押し上げてくる。
「おしたり………」
「侑士や。名前、呼んでな?」
「うっ………!」
誰が名前なんか。
そっぽを向いたのが分かったのか、忍足が更に指を増やして中を掻き回してきた。
「うッッ………うぁッッ!」
経験のない跡部にとって、媚薬を使われた上での前後からの責めにはとても耐えられなかった。
ベッドの上に柔らかな茶色の髪を振り乱して顔を振ると、自然に滲み出た涙が、頬を伝って、シーツに吸い込まれていく。
そんな跡部の様子を見ていた忍足が、跡部の性器を握りしめたまま、器用にズボンのベルトを弛めると、勃起した彼自身を引き出してきた。
「………うぅぅッッッ!」
指が引き抜かれ、代わりに熱い硬い肉棒がぐっと押し入ってきた。


















大人な忍足君v