正しいペットの飼い方 《2》
-------が、しかし。
「な、なんでこんなモノ、飲むんだよ!」
長太郎に連れられて、やつの家に行って、いざ事を始めるという時になって、長太郎が机の引き出しを開けて、俺に変なカプセルを渡してきたのだ。
元々、オレは嫌だった。
何がって、俺から誘うってのがだ。
しょうがねえから、とにかく我慢して、服脱いで脚でも広げればいいかって思ってたら、長太郎のヤツ、ちょっと待って下さいとか言って、嬉しげにカプセルを出してきたのだ。
「あの、これ、……興奮する薬なんですけど、一度宍戸さんに飲んでもらいたかったんですよね」
なんて飄々とぬかしやがる。
「……あ、ちゃんとした薬なので、安心して下さいね」
とか、論点のずれた事を言って、いそいそと水まで持ってきた。
「……はい」
にこにこして差し出されても、こんなもん、飲むわけねえだろ!
俺が眉を顰めて長太郎を睨んだら、長太郎のヤツ、またしても悲しげな目をしてしゅんと項垂れてきた。
「駄目ですか……?」
ちろっと俺を見上げて、悲しげに目を伏せる。
「飲むだけですよ。別にいつもと違ったことしてくれっていうんじゃないんです。ただ、いっつも宍戸さんって、あんまり楽しそうじゃないから………オレ、宍戸さんがもっと積極的になってくれたらいいなぁとか、思って………」
楽しそうじゃなくて悪かったな。
そりゃあ、オメエは突っ込むだけだから、気持ちいいかも知れねえけどよ。
俺ははっきり言って痛えんだ。
オメエも一回突っ込まれる方になってみろよ。
「一度でいいんです……お願いです………」
また一度だけ攻撃だ。
もうその手には乗らねえよ、と思ってたのに、俺ったら、やっぱり折れちまった。
何度も言うようだけど、長太郎が悲しげに俺を窺ってくる目に、どうしても弱い。
あんな目をされたら、俺は断れない。
きっと、長太郎のヤツ、俺がああいう目に弱いこと知ってんだ。
知っててやってるに決まってる。
なのに、結局言うこと聞いちまう俺って……………。
「……分かったよ! 飲めばいいんだろ? 飲むだけだぜ!」
「……ありがとうございます!」
長太郎がぱっと顔を上げて、これ以上ないっていうほど嬉しげな顔をした。
こんなへんな薬飲ませて俺とやるのが、そんなに嬉しいのか?
顔も良くて爽やか青年で、背も高くて、はっきり言って女の子にモテモテのくせして。
俺みてえな男と、しかも薬使ってやるのが嬉しいとはなぁ…………。
全く、人間ってよく分からねえ。
俺は溜め息を吐いて、カプセルを口の中に放り込むと、コップの水をぐっと流し込んだ。
ごくん、と一気に飲みほす。
「飲んだぜ?」
「……じゃあ、ゆっくりやりましょうね、宍戸さん。薬効くのに10分ぐらいかかると思うので……」
って、薬が効いたらどうなるっていうんだ?
ただ興奮するだけだろ?
長太郎が嬉しそうににやけながら俺をベッドに押し倒して、ふんふんと鼻歌を歌いながら、シャツのボタンを外してきた。
俺は肩を竦めて、あきらめて身体の力を抜いた。「………ぁ………ッ!」
しかしながら、俺は薬の効果をすぐさま思い知らされることになった。
何分も経たないうちに----まだ長太郎が俺のシャツを脱がせるか脱がせないかっていうぐらいな時に、俺は心臓がどきどきしてきたのだ。
鼓動が、頭まで響いてくる。
それから、なんだか全身が熱くなってきて、焦れったいような、疼くような感覚が、身体の奥から湧き上がってきた。
長太郎が、俺の裸になった胸にそっと手を這わせてきたとき、俺は思い切りびくん、と身体を震わせてしまった。
傷口に直接触れられるような、そんな、じっとしていられない感触だった。
でも、痛いというのではなくて、そこから甘く痺れるような、形容しがたい刺激がした。
もっとしてほしい。
もっと触れて欲しい。
無意識に俺は、長太郎に身体を擦り付けていた。
「ふふ、効いてきたみたいですね、宍戸さん……」
長太郎の嬉しそうな声を聞いてはっとする。
「く、そっ、……なんだよ……ッッ!」
「そう恥ずかしがらなくても、……ね、宍戸さん?」
長太郎の大人ぶった物言いに、かっとなった。
乱暴に長太郎の手をはね除けて、睨み上げる。
「そんなふざけた口聞いてっと、やんねえぞ?」
「またそんな無理を言って、宍戸さん……」
「おい、そんな口聞いていいと……うぁッッ!!」
俺の抗議も遮って、長太郎が突然俺の下半身を握ってきた。
ズボンの上からだったが、俺は息を呑んだ。
目の前が霞む。
激烈な快感が背筋を駆け昇って、俺は息もできなかった。
「う……そだろ………」
やっとのことで掠れた声をあげたとき、もう俺は長太郎に抵抗する事なんて忘れていた。
こんなに気持ちが良かった事なんて、今まで一度もなかった。
どうしたんだ、俺。
薬って、こんなに効くものなのか?
「ぁ……ぁ………ッッ!」
長太郎がぎゅっとソコを掴んでくる。
その度に身体がびくんびくんと揺れ、腰が疼いてどうしようもなくなる。
ぞくぞくと戦慄が駆け抜けて、下半身に熱いモノが流れ込んでいく。
「駄目ですよ。まだイかないで下さいね?」
それなのに、長太郎のヤツ、俺がイきそうになってるのがわかったのか、さっと手を離しやがった。
「てめっ!」
「じゃあ、ズボン脱ぎましょうね、宍戸さん?」
長太郎はえらく機嫌が良さそうだった。
俺のズボンのベルトを外して、すぽっと下着毎引っ張ってくる。
俺は………とにかくアソコが疼いて、もう羞恥も何も吹っ飛んでたから、そこが露になったのを幸い、両手でそれを掴んで手を動かし始めた。
「く………ぅ……ん……ッッ!」
長太郎がにやにやしながら見物しているのが分かったが、そんな事に気を取られている余裕はなかった。
もう、身体中を沸騰した血液が駆けめぐっている。
あっというまに昇り詰めて、俺は激しく手を動かしながら、背中を仰け反らせた。
「………………ッッ!!」
宍戸ったらまんまとチョタの思惑通り