スキー 《4》
沈黙が辛い。
手塚はそっと不二の手を押し戻して、離れようとした。
と、その時、不二が急に手塚を引き寄せてきた。
(………?)
ドサッ。
そのまま不二が体重を掛けて、手塚をベッドに倒してきた。
「………不二?」
恐る恐る目を開くと、身体の上に不二が圧し掛かっていた。
「あのね、手塚……僕怒ってるの、分かる?」
不二が茶色の瞳を眇めて言ってきた。
「……すまない……その……」
とうとう嫌われられたのか、と瞬時背筋が冷たくなる。
不二の目に耐えきれなくて視線を逸らすと、不二が突然、噛み付くように口付けをしてきた。
「………?」
突然の事に、頭が真っ白になる。
自分の唇に、暖かな弾力のある唇が覆い被さっている。
--------なぜ?
呆然とした表情がおかしかったのか、唇を離した不二がくすくすと笑った。
「あのね、手塚………キミって自分の気持ちばかりで、僕がどういう気持ちだったかとか、全然分かってないよね。……鈍感……」
「……えっ?」
「全く、……そこが可愛いけどさ……」
「…ふ、不二?」
「あのねぇ、僕もキミのこと、好きなんだけど?」
「……………えっ?」
「……分からなかった?」
「………………」
全然分からなかった。
というか、今でも信じられない。
俺は不二の事を好きだが、不二も………?
--------まさか!
「そんな、幽霊見たような顔しないでよ」
不二がくすっと笑った。
「そんなに意外だった?」
「………いや、その……」
「ねえ、手塚……」
不二が不意に語調を変えて、しっとりとした声音で言ってきた。
「僕さ、今回の旅行、すっごく楽しみにしていたんだ。キミとずっと一緒にいられるって…………でも、キミがどう思っているか、不安だった。キミが昨日から怒ってるのは分かったけど、でも何に怒ってるのか、分からなくて………」
「……俺は……」
「もしかしたらね、僕とあの女子大生とのこと、嫉妬してくれてるのかな、なんて思ったりもしたんだけど、でも……本当のところは分からなくて………僕のこと嫌になったのかもしれないとか、いろいろ思って……」
「……………」
「でも、僕のこと、嫌いになったりしてないよね、手塚。………ねぇ、僕のこと、……本当に好きなの?」
不二が窺うように聞いてくる。
少々不安げな言い方に、手塚は胸が切なく疼いた。
「あぁ、好きだ………」
不二に言い聞かせるようにゆっくりと言うと、不二が安心したように微笑んだ。
「良かった………」
暖かな唇がまた降りてくる。
手塚は目を閉じて、その唇を受け入れた。「ぅ……不二………」
夢見心地のまま口付けを受けていると、不二が右手で手塚の身体をまさぐってきたので、手塚ははっと覚醒した。
「………ね、………いい、手塚?」
不二が唇を離して、押し殺したような、せっぱ詰まった息づかいをした。
--------ドキン。
鼓動が大きく跳ねた。
「キミを抱きたい………」
「ふ………じっ………」
突然の展開に、手塚は狼狽した。
「ちょっと、待て………」
「駄目、もう僕我慢できないよ。……だって、二人きりで一緒に泊まれるなんて、今日しかないんだもの………」
「不二………ぁ…ッッ!」
不二の手が、手塚のショートパンツの中に入ってきた。
直に性器を握り込まれて、手塚は驚愕した。
「ふ、不二、ちょっと待てッッ……」
きゅっきゅっと扱かれて、忽ち血が逆流し、痺れるような快感がそこから湧き上がってくる。
「嫌がらないで………」
不二が説得するような口調で言ってきた。
「ね、手塚………お願い………」
不二を押しのけようと上を見ると、不二と視線が合った。
縋るような、せっぱ詰まった不二の瞳に、手塚は息を呑んだ。
「ふじ………」
甘い眩暈がした。
まさか、こんな風に突然に。
こんな事まで考えていなかった。
不二と、----------これは現実なのか?
「………うッッ!」
不二に握り込まれた器官が、現実だと訴えてくる。
手塚は微かに呻いた。
「ね、いいでしょ、手塚………僕にキミを抱かせて………」
しっとりとした甘い声。
その声だけで、ぞくぞくと背筋が痺れた。
無意識に手塚は頷いていた。
「手塚………好き…………」
不二がゆっくりと手塚の服を脱がせてくる。
こんな事を、不二としているなんて……………。
………したかったはずなのに、手塚にはまだ信じられなかった。
本当に、不二が、俺を………?
不二が服を脱ぎ、それからバスルームに行って戻ってきた。
そうして、手塚を窺いながらベッドに上がってくるのを、手塚は呆けたように見上げた。
不二が恥ずかしげに笑った。
「そんなに見ないでよ。……やっぱり恥ずかしいよ………あんまり自信がないんだ。……うまくできなかったら、ごめんね………」
「………ッッ!」
突然、不二が頭を屈めて、自分のものを口に含んできたので、手塚は驚愕した。
「や、不二……ッッ!」
くちゅ、と濡れた音がして、不二が自分のそれを口で愛撫している。
蕩けるような痺れが背筋を駆け昇ってきて、手塚は思わず呻いた。
「あ………あ……ッッ」
他人にそういう事をされるのは、勿論初めてだった。
自分で機械的に処理するのとは全く別次元の途轍もない快感に、手塚は目の前が眩んだ。
ドキドキ初体験(笑)