法悦 《4》
乾は父親が公務員であることもあって、都内の大きな公務員住宅の一角に住んでいた。
「こんばんは」
そう言って入ると、乾は一人だった。
不二しか来ないと思っていたらしく、手塚を見てぎくっとする。
「どうぞ……」
と言われて、乾の部屋に通される。
「誰もいないんだね?」
「……ああ、オヤジとお袋は旅行中でね」
「それは好都合かな」
不二がにっこりする。
乾の部屋は八畳程度の大きさで、パソコン関係の機材が壁一面に並んだ、いかにも乾、という感じの部屋だった。
「で、なんか用なのか?」
手塚の方をちらちらと伺いながら、乾が不二に話しかけてきた。
「うん。……この間の事、覚えてる?」
びくっと乾の肩が揺れる。
「あの話、続きをしにやってきたんだ。ねえ、手塚?」
「ああ……」
「続きって……手塚、おまえ……」
乾が半信半疑といった感じで手塚を見る。
「いいでしょ、データもらえるよね? ほら、手塚、乾に奉仕してあげてよ?」
乾がぎくっとして手塚を恐る恐る見た。
手塚は、不二の言葉だけが頭の中に渦巻いていた。
乾に奉仕する。
---------そうだ。
乾をできるだけ喜ばせて、不二の頼みを乾が承諾するようにさせなければいけないのだ。
ソファに座った乾の前に、手塚はふらふらと近付いた。
乾はスェット素材の上下を着ていた。
そのズボンに手を掛け、中から乾自身を引き出そうとする。
「や、やめろよ!」
乾が狼狽して、手塚の手を押さえてきた。
ここで乾に拒絶されると、困る。
乾がその気になるように、嫌がらないように、うまく持っていかなければ。
手塚は機嫌を取るように乾の頬に手を伸ばすと、乾の唇に、自分の唇を押し付けた。
「俺に任せとけば大丈夫だから……」
説明するように乾に言って、乾の唇の感触を確かめるように口付けする。
何度も軽くキスをして唇が離れたときに、手塚は、
「乾………」
とできるだけ乾を刺激しないように呼びかけた。
それでも乾は強張った表情のまま、手塚を必死で押しのけてきた。
「乾………」
乾があくまで拒絶する様子を見て、手塚は途方に暮れた。
「乾、恥ずかしいのかな?」
後ろで見ていた不二が助け船を出した。
「そうだよね、突然押し掛けて襲われたんじゃ、嫌だよね。じゃあ、最初はボクの方でやってみせるから、乾、見ててよ。……手塚、こっちに来て?」
不二に怒られるかと思ったが、不二が意外に穏やかななので、手塚はほっとして一旦乾から離れた。
「悪いけど、ベッド借りるよ? 見る分には構わないよね、見てて? 手塚、じゃ、服脱いで」
不二に言われて、手塚は急いで服を脱いだ。
全裸になると、不二が手塚にベッドの上にあがるように指示してきた。
「どう、乾? 手塚、綺麗でしょ?」
乾が表情を凍り付かせて、自分を見ている。
乾の視線が自分の身体に注がれているのを感じて、手塚はかぁっと身体の温度が上がった。
羞恥心を共にに、自分を見た乾を興奮させなければ、という焦りにも似た気持ちがわき上がってくる。
「手塚はね、すっごく締まりがいいんだよ、乾、したくならない? 手塚、乾によく見えるように、足を開いて」
ベッドに腰を掛けた手塚に、不二が言ってきた。
手塚は乾の方を向いて、少しずつ足を開いた。
さすがに乾が見ていると思うと、足が震える。
「ほらね? キミに見られてるって思っただけでこんなになってるんだよ、手塚……」
確かに手塚の性器はもう勃起していた。
天を向いてびくびくと脈打ちながら、頭から透明な涙をこぼしている。
乾がごくり、と唾を呑み込む音が聞こえた。
「手塚、自分でやってみて。乾によく見えるように………」
乾を見つめながら、手塚は自分の性器にそっと左手を絡めた。
乾が信じられない、といったように自分を穴が空くほど見つめてくる。
その目の前で、そっと握った自分のものを根元から先端まで手で扱く。
「手塚…………」
乾が掠れた呻き声を出した。
愕然として半開きになった唇を、無意識のうちに乾が舐める。
桃色の舌が覗く。
乾が驚きつつも、自分から目を離さず興奮しつつあるのが見て取れて、手塚は更に乾によく見えるように足を広げた。
両手で自分自身を包んで、その手を動かす。
「……まだその気にならない?」
不二がくすくすと口の中で笑いながら、すっと立ち上がり、手塚に近寄った。
「じゃあ、ボクが先にやって見せるね?」
不二がそう言って、手塚の身体を俯せにベッドに押し倒した。
ギシッ。
ベッドが軋んで、不二が手塚の背後に回ってきた。
「ぅ……………ッッ」
乱暴に性器を握り込まれて、手塚は思わず柳眉を顰めた。
乾がびくっと身体を震わせる。
「もうこんなに大きくして、でもちょっと我慢してね、手塚……」
手塚の先端から溢れ出た先走りの液を指に絡めると、不二はその指を手塚の後孔にずうっと差し入れた。
途端に重い快感が脳天まで突き抜けて、手塚は背中を仰け反らせた。
乾の食い付くような視線が更に強くなる。
体内で不二が指をぐいぐいと動かしてくる。
手塚の感じる点を的確に突いてくる。
「ぅ……う………ッッ」
不二の愛撫に慣れた身体はたちまち淫蕩ろけて、手塚は乾の視線を感じながら、全身を震わせた。
「じゃあ、お先に……」
乾ににこやかに笑い掛けると、不二はおもむろにズボンのジッパーを下げ、下着の中から怒張した自分自身を出し、無造作に手塚の後孔にそれを突き入れた。
乾は常識人という事で^^