譎計 −kekkei- 《4》
手塚の頬が紅潮して、噛み締めた唇が震える。
------怒り出すだろうか。
馬鹿なことを言うな、と一喝して、出ていってしまうだろうか。
いや、彼はそうできないはず………。
なぜなら、手塚はこうやって俺に命令されて、自分の恥ずかしい姿を晒すのを、心の底で望んでいるのだから。
自分の裏を誰かに見せてしまいたい。
晒け出して、容赦なく責められたい。
そう思っているはずだから。
手塚のようにいつも品行方正で、他の見本にならざるを得ないような人間。
自分の弱さを他人に見せることが出来ない人間。
そんな人間ほど、反対に、心の底の底では、弱さや醜さを思いきり見せてしまいたい、自分を貶めたいという欲望が渦巻いているはずだから。
乾はじっと手塚を見上げながら、待った。
数分、手塚は紅潮させた頬を青ざめさせたり、視線を落ちつきなく彷徨わせたり、机の端を掴んで指を震わせたり、さまざま心の中の葛藤と戦っているようだった。
が、やがてあきらめたように瞳を伏せると、のろのろとした動作で、ズボンを脱ぎ始めた。
ジャージの上を脱ぎ、下に穿いていたハーフパンツを脱ぐ。
最後の一枚、トランクスにかけた手がしばし止まって、もう一度、乾をすがるように見てきた。
乾は表情を全く変えず、手塚を冷徹な目で見つめた。
手塚の目に、狂おしい色が浮かぶ。
手塚は唇を噛んで、トランクスを引き下げた。
「机に乗って、足を開いて、俺によく見えるように尻を上げるんだ」
手塚がトランクスを脱いだ所で、乾はすかさず次の命令を下した。
ぎくり、と肩を震わせて、手塚が刑場に引かれていく罪人のように項垂れて、机に座る。
部室には、ミーティング用の大きな机が中央に設置されていた。
その机は人が一人寝転がることができるくらい広さがある。
自分の目の前で、手塚がゆっくりと足を開いていくのを、乾はたとえようもない高揚感とともに見つめた。
引き締まった腹に、形のよい細長い臍。
臍の下に艶やかな茂みが上品に生えており、その茂みの中で、重たそうに手塚の性器が垂れ下がっていた。
乾の見ている間にも、そこにはどんどんと血流が流れ込んでいくらしい。
びくびくと左右に頭を振りながら、見る見るうちに勃ち上がっていく。
先端が綺麗な桃色に張り詰め、その一番先の小さな口から、透明な粘液が滲み出てとろりと滴り落ちる。
見た途端、乾は自分も全身に電流が走った。
羞恥に頬を紅潮させ、手塚が潤んだ瞳で乾を見上げてくる。
こんなあられもない恥ずかしい格好をして、どんな気持ちでいるのだろうか。
手塚の表情を見ると、彼はどこか茫洋とした目つきで半ば酩酊しているようだった。
乾は、唇の片方だけを吊り上げて笑った。
あきらかに、手塚は悦んでいる。
このような格好をさせられて、恥ずかしい所を見られて、気持ちがいいのだ。
「肛門をもっと良く見せて」
乾の言葉に従って、手塚が両脚を限界まで開いて、尻を上げた。
興奮で張り詰めた双果の下に、可愛らしく桃色に綺麗な襞を描いて、小さな入り口があった。
乾の目に入ると其処はひくひくと動いて、まるで自分を誘っているかのようである。
乾は頬を緩めた。
机に肘を突いていた手塚の左手を掴むと、その手をそのまま手塚の肛門に導く。
「自分で指を入れてごらん」
手塚がはっとしたように潤んだ瞳を瞬かせた。
涙の粒が目尻にたまって、睫毛の先について透明な水滴となる。
それが揺れて震える。
赤い唇を舌で舐めて、ごくり、と唾を呑み込む。
手塚の白い喉の動きが淫猥だった。
「入れるんだ」
もう一度冷徹な声音でそう命令する。
手塚はくっと小さく喉を鳴らして、それから恐る恐る人差し指を肛門に差し入れた。
乾いたままだから、引き攣れて痛いのだろう。
手塚が秀麗な眉を歪める。
「指を3本入れるんだ」
乾が畳みかけるように命令すると、手塚が顔色を無くして乾を見上げてきた。
「……無理だ……」
掠れた小さな泣きそうな声。
乾は、自分のロッカーからクリームのチューブを取り出した。
擦り傷などに塗る、市販の薬だ。
それを手塚の目の前に突きつける。
「これでよく準備をすればいい」
息を呑んでそれを見つめ、それから虚ろな視線で乾を見ながら、手塚がチューブを受け取る。
震える身体を宥めつつ、手塚がチューブからクリームを押しだし、左手にたっぷりと塗る。
大きく息を吸って固く目を閉じて、乾の眼前に秘部を思いきり晒して、その中心に指を射し込む。
乾は食い付くように観察した。
「ぅ………」
乾の命令通り、手塚は3本の指を同時に挿入した。
苦しげに眉を顰めて、喉を鳴らして、ゆっくりと指を内部に沈めていく。
白い額にうっすらと汗が浮かび、半開きになった唇から白い歯が覗く。
指を根元まで突き入れて、ふ、と深く溜め息を吐いたところで、乾は言った。
「指を動かすんだ」
ぐちゅ、という湿った音ともに、手塚が指を動かし始める。
「ぅ……はッ…くッ………ッ」
手塚の息がどんどん荒くなって、瞳は幕が掛かったように虚ろになる。
乗っている机ががたがたと軋む。
ピンク色の襞が捲れ上がって、指が抜かれるとともに、目も鮮やかな粘膜が乾の目に飛び込んでくる。
びくびくと脈打つ性器も、手塚の腹に突くほど天を向いており、先走りの液で手塚の腹が濡れる。
「…試合、どうなったかな?」
乾は、そんな手塚などまるで気にしていないように、しれっと言ってみた。
途端に手塚がぎくっとする。
つ、と立ち上がって、窓を細めに開けて外を見て、振り返って乾は笑った。
「大丈夫だよ、まだまだ。みんな試合に夢中のようだね」
おどおどとした小ウサギのような視線が自分に向けられる。
乾は薄く笑った。
「さ、続きをして?」
そう言って乾は手塚の目の前に座り直すと、手塚を見ながら、ズボンから自分自身を引き出した。
乾のそれも手塚に勝るとも劣らないほど勃ち上がっており、手塚同様、それは先端から既に透明な粘液を滴らせていた。
手塚がぎくっと身体を強張らせ乾のソレを見る。
それから乾の意図を伺うように、おどおどと見上げてきた。
「キミに触ったりしないから、気にしないで」
そう言って、乾はソファにゆったりと腰掛け治すと、手塚の見ている前でゆっくりと自身を扱き始めた。
「見ているだけでいいよ、俺は。だから、キミも続けて」
一言一言、区切るように言って、にっこりと笑う。
手塚の目が自分のものに注がれているのを見て、殊更それを強調するように扱いてみせる。
手塚がごくり、と唾を飲んで、苦しげに目を伏せた。
なんだか手塚が可愛いな…^^