お気に召すまま 
《6》









そう言って立ち上がると、忍足の身体をぐっと抱え上げる。
「ちょぉ…ッ!」
所謂お姫様抱っこ、というのをされて忍足は仰天した。
男の時ならまず想像もつかない事だ。
なにしろ忍足は身長も体重も跡部よりある。
そんな男を抱っこしようとなどさすがの跡部でも思わないだろう。
だが、今は-----どのぐらい縮んだかは分からないが、身長は低くなっているし、きっと体重も軽くなっているのだろう。
跡部に軽々と持ち上げられて、忍足は非常に複雑な気分になった。
(なんや………変な気分やな……)
大きなダブルベッドに降ろされて、ふんわりとした布団に沈みながらそう考える。
「忍足………」
灰青色の瞳を細めて上から見下ろしながら、跡部が囁いてきた。
「ゆっくり、楽しもうぜ?」
「…………」
言われると、まだ背中がぞわぞわする。
恥ずかしいというか、なんだかどうしたらいいのか分からないような気持ちだ。
(ま、まぁ、取りあえず、俺は別に寝とるだけでええんやし……考えると頭変になるわ…)
忍足は頭を振った。
ベッドに仰向けに横たわったままで跡部を見ると、跡部はベッドサイドで着衣を脱ぎ始めていた。
制服のジャケットを脱ぎ、ネクタイをしゅる、と外し、シャツのボタンを外す。
ズボンのベルトをカチャ、と軽く音をさせて外してジッパーをジ、と下げ、優雅な動作でズボンを脱ぐ。
下着毎脱いでしまったのか、忍足の目には、後ろを向いて脱いでいる跡部の、形の良い引き締まった尻が見えた。
(いつ見ても、鍛えていてええ身体やなぁ…)
自分だって鍛えているし、体格的には跡部より逞しいのだが、跡部は無駄のない鍛え方で、筋肉一つ一つが張りつめているようである。
(俺はちぃと負けるかな……)
などとぼんやり考えて、忍足ははっとした。
(今は女やから、筋肉ないやん……)
思わず跡部と比較するように、バスローブをはだけて自分の身体を見てみる。
たわわに盛り上がり揺れている乳房。柔らかくふっくらとした下腹。
むっちりとした太腿。
(俺の筋肉、どこ行ってしまったんやろ………)
性転換しただけでこんなに身体も変わるものなのか。
忍足は些か哀しくなった。
「……おい、なに見とれてるんだよ、自分の身体によ……まぁ、俺から見てもすげぇいい女だけどよ…」
不意に頭上から声が降ってきて、忍足ははっと上を向いた。

















「べ、別に見とれていたわけやあらへんけど…」
跡部がいつの間にかすぐ近くに来ていたので、忍足はどきん、とした。
常時着けている香水の匂いだろうか、清涼な匂いがする。
引き締まった身体と整った顔立ち。
(………モテて当然やな………)
などと思ったが、考えてみれば、自分だってそんなに遜色があるとも思えない。
(俺かて、結構イイ線いっとる思うんやけどな……)
だが、自分は今まで女性と付き合った事もない。
勿論、童貞だ。
それに比べて跡部は百戦錬磨。
食った女の数も数知れない、という話だ。(忍足が人づてに聞いた話ではあるが)。
(どこがちゃうんやろ……)
などと少々真面目に考えてみて、
「おい、何考えてんだよ、忍足………ほら、こっち向けよ」
と跡部に言われて忍足は物思いから我に返った。
「忍足…………綺麗だぜ……」
(……………はァ?)
声と共に、ふっくらとした唇が降りてきた。
ちゅ、と一度軽く口付けられ、思わずぱちぱちと瞬きした所に、今度は深く唇が合わされる。
舌がぬる、と入ってきて、自分の舌を捕らえてくる。
強く吸われ、舌が痺れて忍足は瞳を閉じた。
「すげぇ、綺麗だぜ、忍足…。女になったお前がこんなに美しいとはな…。お前がこのままずっと女だったらな、俺は他の女など全て忘れて、お前だけを抱くんだがな…」
(………調子いいやっちゃ………)
なるほど。
こういう歯の浮くような台詞がいくらでも出てくる所が跡部がモテる理由なのかもしれない。
忍足は不言実行型。
軽い台詞など口にしたことがなかった。
(まぁ、確かに……言われて悪い気分やないけどなぁ……)
しかし、普段の跡部を知っているだけに、忍足には歯が浮いて浮いて仕方がない。
思わずくす、と笑ってしまい、跡部に眉を顰められた。
「あ、すまんなぁ……いや、俺にそういう台詞言うてもな、あんま効果ないで?」
それよりもくすぐったくてかなわない。
忍足は唇が触れ合ったままで笑った。
「…おい、人がせっかくムード出してやってるのに、それはねえだろうが…」
跡部がむっつりとした表情になった。
「そう言われたかてなぁ……普段の跡部を知っとるだけに、なんやくすぐったくてなぁ……」
「なんだよ………ンな口叩けねぇほどよがらせてやるぜ…」
口惜しそうに跡部が言い、再びねっとりと唇を合わせてきた。
「……ンッ……」
舌を吸われ、甘噛みされる。
口付けに意識が集中している所に、跡部の大きな掌が、忍足のたわわな胸を包むように押し当てられた。
微妙に強弱をつけて胸を揉まれ、乳房を掴まれたかと思うと指が乳房をこねるように揉み、ふっと手が離れ、指の腹で繊細に盛り上がった部分を刺激される。
そのたびにくすぐったいような、背筋が総毛立つような微妙な快感がして、忍足は思わず身震いした。
下半身がじぃん、と熱くなってくる。
男の時の快感とは違って、腰から下が蕩けたような、広範囲な熱感だ。
(な、なんや、変な気分になってきたわ……)
ぞくぞくするような、ぼおっとするような、表現しようのない感覚。
「忍足…………乳首、勃ってきたぜ…」
跡部が唇を離して吐息だけで囁いてきた。
「結構、乳首大きいんだな、忍足………感触いいぜ…」
桜んぼより些か小さいぐらいの乳首をくり、と親指と人差し指で挟み、こね回すように跡部が愛撫を加えてくる。
「…ちょ、……な、んや………分からん、わ……」
痛いようなむず痒いような感覚に忍足は身を捩らせた。
「こっちはどうだよ……」
跡部の右手がすうっと忍足の滑らかな肌を探り、くびれた胴を這い降りて、ふっくらとした下腹をまさぐり、その下------ふっさりとした茂みに到達する。
茂みを掻き回した手が谷間に降り、陰毛を掻き分けてくい、と侵入する。
「………なんだ、……濡れてるじゃねぇか……」
指の先がバターを溶かしたような熱い粘膜に迎えられて、跡部は思わず口許を緩めた。
「…ッン…な、なんや、そこ……ちょぉ…や、やめぃや…」
跡部の指が局部に入ってきた途端、ずきん、と痛いような、なんと表現していいか分からない衝撃が走って、忍足は思わず呻いた。
明らかに、男の時の快感とは違う種類の…だが、快感だ。
もっと触って欲しいような…いや、もうそれ以上触られたくないような、微妙な感覚。
「………なんだ、俺の指が嬉しいようだな。ますます濡れてきたぜ…。それに…」
そう言って跡部が指をぐい、と押し進め、蜜の溢れる入り口に指をくい、と差し入れてきた。
「…くッ…ッ!」
途端に今度ははっきりと痛みがそこから脳天まで瞬時に走り、忍足は瞬時目を閉じて腰を引いた。
「……おっと、すまねえ……処女なのに、つい乱暴にしちまったぜ…。それにしても、とろとろだぜ、忍足……俺の指を離さねえって感じで、アソコが吸い付いてくるぜ…?」
「……やらしい事、言うなッ……」
跡部が嬉しげな声を出してきたので、忍足はかっと羞恥で頬が赤くなった。
「あのな…跡部がいろいろ弄るから、勝手に身体が反応してるだけや……」
「へぇ、そうなのか?それにしちゃぁ、随分と感度がいいぜ………」
言いながら今度はゆっくりと指を埋め込む。
蕩けそうに柔らかくぬめった粘膜が指を歓迎して絡みついてくる。
ぞくぞくと背筋に快感が駆け抜け、自分のペニスがみるみるうちに堅くなるのが分かる。
血が血管を駆けめぐり、下半身に濁流のように流れ込む感じだ。
「…っちょ、痛いて…って、跡部……何押しつけてんのや……」
忍足は、はだけたバスローブを肩に引っ掛けた格好で仰向けになっていた。
上から跡部が裸でのし掛かってきているため、自分の身体と跡部の身体が密着している。
そのため、自分の太股あたりに、跡部の堅く熱く張りつめた太い肉棒がびくびく当たっているのである。
眉間に皺を寄せながら顔を上げて、自分のたわわな胸越しに下半身を覗き込む。
(…で、でかいわ………)
びんびんに勃起した跡部の性器が眼に飛び込んできて、忍足はぎょっとした。
(あんなもん、入れられたら、痛くて死ぬわ………)
なんだかよく分からなかったが指が入ってきたような感じがしただけで痛いのに。
(…………裂けたらどないするんや……。血ぃ、出るんやない……。って、処女なんか、俺……?)
「忍足………」
忍足がびびっているのを知ってか知らずか、跡部はねっとりと濡れた声で忍足の名を呼びながら、盛り上がった乳房に顔を埋めてきた。


















跡部が嬉しげ(笑)