修学旅行
 《4》












「………え?」
まさか手塚が泊まりたいと言うなど予想もつかなかったのだろう。
不二がきょとんとした顔をした。
「で、でも今日はおうちの人も待ってるんじゃない?」
「……駄目か?」
不二が消極的なので、手塚は内心焦った。
どうしても、このまま不二の家に行きたかった。
今を逃したら、もううまく行かないんじゃないかという不安があった。
「…迷惑か?」
「う、ううん、大丈夫だけどさ、うちは。……ほら、今うち親も旅行中で姉さんしかいないし。誰か来てくれた方が嬉しいんだけど」
「じゃあ、構わないよな」
「うん。でも、……どうしたの?」
不二に覗き込まれて、手塚は瞬時赤面した。
自分の考えていることがろくでもない内容なので、羞恥を覚えたのだ。
今日は、不二とちゃんとしたセックスをしたい、などと思っているなんて。
「べ、別に、なんでもない……」
頬を赤らめてそう言い訳すると、不二が目を丸くして手塚を見て、それからくすっと笑った。
「まぁ、いいや。なんだか今日のキミ、いつもと違うよ。そうか、旅行中ずっと会ってなかったからかな? 僕のこと、恋しくなったりして?」
「……なに言ってるんだ…」
「ふふふ、でも、嬉しいな…」
不二がふんわりと笑う。
それを見ていると、手塚は胸の中が苦しくなるような、甘いような、不思議な心持ちがした。


















今日は不二の家に泊まってくると自宅に電話して、不二の家に行って、いつものように風呂に入らせてもらうと、手塚はやはり緊張が高まってきた。
不二が風呂に入っている間に、バッグから薬を取り出して、目を閉じて思い切って一粒飲み込んだ。
ペットボトルの水で飲み干して、深く溜め息を吐く。
-------どうだろうか。
本当に、ちゃんと効くのだろうか?
買った時は絶対効く、と嬉しくなったにも関わらず、いざとなると、手塚は自信がなくなってきた。
考えてみると、この薬は、男女間での性行為の障害を軽減させる薬だ。
自分の場合………。
手塚は眉を寄せた。
身体機能を活発にする薬なんだから、別に男女間じゃなくても大丈夫なはずだ。
(ちゃんと俺が勃起して、不二が気分を害しないで、それで……)
いけない、また考え込んでしまっている。
手塚ははっとして頭を振った。
こういうふうに、事前にいろいろと考え込んでしまうのがいけないのだ。
もっと自然に、感情とか身体が感じるままにしているばいいんだ。
---------でも。
やっぱり、恥ずかしい。
いくら不二を好きでも、やはり足を広げたり、恥ずかしい場所を舐められたりするだけで、手塚は竦みあがってしまう。
そんな所を……という、常識的な考えから離れられないのだ。
(…………)
過去の事を思い出して顔を顰めていると、
「…どうしたの?」
いつの間にか不二が風呂から上がってきていて、声を掛けてきた。
「あ、ああ、…いや……」
………ドクン。
不意に、体温が2度ぐらい上昇したような熱さが、手塚を襲った。
目の前が瞬時霞んだような気がする。
突如、心臓が早鐘のように打ち出して、ドクンドクン、と血流が全身に送り出されていくのが感じられる。
もしかして。
薬がもう、効いてきたのだろうか?
『即効性、ベッドインの前に一錠』
効能書きにそう書いてあったのを、手塚は暗記していた。
あまりにも早い効き目に狼狽しつつも、しかし手塚は、理性が興奮に取って代わられるのを感じていた。
不二の身体に目がいく。
風呂上がりのしっとりとした首筋や、ボタンの外れたパジャマから覗く胸。
先日、不二に愛撫されたときの感触をまざまざと思い出して、手塚は自分の性器が重たく脹れてくるのを感じた。
痛いぐらい血が集まって、ズボンの中で凶悪にそそりたってくる。
「手塚……」
手塚が赤い顔をして息を荒く吐いている様子に、不二が不審げな声を出した。
「気分悪いの?」
不二に頬をそっと触られ、手塚はそこから稲妻が走ったような衝撃に囚われた。
こんなに興奮するなんて。
身体が、不二に触ってもらいたいと悲鳴をあげている。
頬だけじゃなくて全部。
特に、痛いほど膨れ上がった所を……擦って欲しい。
いつもなら恥ずかしくて絶対に考えつかないような台詞が、頭の中に次々と浮かんでくる。
「不二……」
堪えきれなくなって、手塚は自分から不二の身体を引き寄せた。
「…手塚?」
びっくりしている不二を絨毯の上に押し倒して、上から覆い被さって、唇を押し付ける。
「ど、どうしたの?」
あまりにも驚いたのか、反応してこない不二に焦れて、手塚は自分からパジャマを脱いだ。
「不二……早く……」
「え、……あ、うん……」
呆気に取られている不二の手を取って、自分の胸に導く。
不二がおずおずと手塚の胸に手を這わせてきた。
「ふッ……んッッ…」
不二に触れられただけで、手塚は眩暈がした。
身体の奥に、どうしようもない疼きが生まれる。
もっと、強く触って欲しい。
痛いぐらいに、ねぶって欲しい。
びっくりしていた不二が、手塚が興奮しているのを悟って、嬉しげに微笑んだ。
「…手塚?」
甘く囁いて、手塚の胸の突起を口に含んでくる。
「あ……は、ッ……」
「今日はどうしたの? …なんか、すごいよ、手塚……キミじゃないみたい……」
確かに、いつもの自分ではない。
こんな淫らなことを、自分からするなんて。
でも、気持ちがいい。
興奮して、好きな人に身体を触られるのが、こんなに気持ちが良かったとは。
「不二……」
興奮に掠れた声で呼ぶと、応えて不二が身体を反転させて、手塚を自分の身体の下に抱き込んできた。
「こっちも、すごい。……・こんなの初めて……」
「………!」
ぎゅっと温かい手で、勃起しきった自身を握られて、手塚は脳が爆発するような快感を覚えた。
「もう、こんなに濡れてる…」
「あッ、…あ、不二…ッッ」
くちゅ、と先端の鈴口を指の腹でこねられて、手塚の脳理で閃光が飛び散った。
「ねぇ、どうしたの、手塚…? どうしてこんなになったの?」
「…そんな事、聞くな」
「…でも、あんまり違いすぎて、僕怖いよ…」
「いいから……」
不二が心なし臆しているのが分かって、手塚は焦れったくなった。
手を伸ばして、ズボンの上から不二自身を掴むと、不二がびくっとした。
「手塚…ッ」
指の中の弾力のある肉塊の感触に、手塚は頭が霞んだ。
……早く、欲しい!
そういう強烈な欲望が噴き上がってくる
じれったさの余り、手塚は自分からパジャマを脱ぎ始めた。
「…て、手塚?」
驚いたような不二の声に構わず、勢い良くズボンを下着毎脱いで、上もボタンをもどかしげに外す。
「不二も」
「あ、う、うん……」
さすがにびっくりしたのか、不二が戸惑ったような声を出しながら、服を脱いだ。
不二の、ひきしまった身体と下半身の淡い翳りを見て、手塚はごくり、と唾を飲みこんだ。
眩暈がして、身体がかぁっとなる。
これが、興奮するという事なのか。
手塚は、自分の身体の変化に、ただただ驚いていた。
好きな人の裸を見るだけで、こんなに、身体が燃えて、蕩けそうになるなんて。
思わずむしゃぶりつくように不二に抱き付くと、手塚は興奮のままに不二の胸に顔を埋めた。
胸の突起が、桃色に自分を誘ってくる。
唇を寄せて、それを軽く噛むと、柔らかく、それでいて弾力のある歯ごたえがした。
「だ、だめだよ、手塚ッ」
不二が本当に狼狽した声をあげた。
「僕が、するから……ね?」
不二が手塚の足を掴んで、ぐっと広げてきた。
今までだったら、ここで恥ずかしさのあまり、手塚はいつも萎えてしまっていた。
が、今日は違った。
不二に見られているという認識が、手塚を更に燃え立たせた。
脚の中心で、これ以上ないほど勃起し、先端からとろりと透明な涙を滴らせている性器を見て、不二が目を見開いた。
「すごい……ね、手塚……」
「不二、……早く……」
譫言のように言って、それから手塚ははっとして赤面した。
恥ずかしい。
けれど、恥ずかしいと思うと一層身体が燃える。
尻を心持ち上げて、手塚は後孔を不二に晒した。
「て、手塚……ッッ」
呆然としたような不二の声に、なんでいつまでも驚いているだけなんだろう、と苛立つ。
手塚は、不二の手を取ると、後孔に導いた。
「ここ、…挿れるのだろう?」





















非常に積極的な手塚……ってのも新鮮でいいかな、と(笑)