仮眠室は、8畳程度の広さで、折り畳み式のパイプベッドが置かれ、壁面にある小さな扉の向こうに簡易ユニットバス、出入り口とは反対の壁面に簡易キッチンの設置された部屋だった。
そこで一晩を過ごすこともできるものだ。
こういう部屋がきっと立海大の部室棟にはいくつもあるのだろう。
カーテンが引いたままで薄暗い室内は、応接室からの扉を閉めると、一層薄暗くなり、一種淫靡な雰囲気を醸し出した。
昼なお暗い部屋に、ベッドに掛けられた白いシーツがぼぉっと浮かび上がる。
そのベッドに腰掛けて、真田が自分を見つめてきた。
顎を心持ち上げ、瞼を少し下ろした半開きの、それでいて鋭い眼光が、井上を射抜いてくる。
ごくん………。
唾を飲み込む音が、頭の中まで響き渡る。
「服は、脱いだ方がいいですか?」
これから何をするのか、本当に分かっているのだろうか。
本当に、して、…いいのか。
井上が固唾を呑んで見守っていると、真田が、着ていた立海大テニス部のシャツの裾にゆっくりと手を掛けた。
筋肉の盛り上がった太い腕を交差させてシャツの裾を掴むと、一気にたくしあげていく。
薄暗がりに慣れた井上の瞳に、引き締まった腹筋が呼吸に合わせて動く様と、形の良い臍、それから厚く胸筋のついた胸板が飛び込んできた。
小麦色に日に焼けた艶やかな肌と、その肌の下で動く、ぴっちりとしやなかについた筋肉。
薄茶色の乳首が、微妙な陰を作る。
-------------眩暈がした。
「……どうしたらいいんですか?」
シャツを脱いで、ベッドサイドに几帳面に畳んで置いた真田が、井上に問いかけてきた。
「あ、あぁ。……下も、脱いでくれ…」
硬直していたらしい。
言葉を発すると同時に緊張が解けて、井上は詰めていた息を大きく吐き出した。
「全部、脱いでくれよ…」
重ねて言うと、真田が、ぴく、と身動ぐ。
が、特に反論はせずに、ベッドに腰掛けたままで僅かに腰を浮かせると、ジャージを下着ごと一気に引き下ろし、穿いていたスニーカーもろとも脱ぎ捨てた。
「…脱ぎましたよ…」
挑戦するような、言葉。
井上は再度息を大きく飲み込んだ。
真田は、ベッドに腰掛けたまま、少し脚を開いていた。
両手をベッドにつき、引き締まった裸身を惜しげもなく井上の目に晒している。
カーテン越しの仄暗い光に、真田の筋肉の凹凸が陰になり、えもいわれぬ淫靡な身体つきに見えた。
暗い蔭になって、彼の局部が僅かに見えた。
引き締まった下腹の、形の良い臍の下に生えた黒い茂み。
脚を開いているので、井上の目には、その陰部が飛び込んできた。
茂みの中から、ほんの少し光を受けて、赤黒く濡れ光っているようにも見える、重く膨れた大きな彼自身。
その大きさ、長さは、とても中学生のものとは思えなかった。
井上が凝視しているのが分かったのか、そこがぴくり、と蠢いて、少しずつ頭を起こしてくる。
剥きたての果実のように赤く熟れた先端と、大きくエラの張った頭。
ひゅ、と呑んだ息が思いの外脳内に響いて、井上はびくっとした。
口内にみるみるうちに唾が溜まっていく。
こんなに大きく立派なもので、彼は自慰をしていたのか。
アレを擦り、声を上げて……。
いや、声は出さないか。
眉を顰め、声を殺して、ひっそりと……。
じっとりと自分のペニスが下着を濡らしているのが分かった。
歩くとペニスが擦れて痛いぐらいだった。
真田の前まで進み、跪く。
目の前に、瑞々しく熟れた真田自身が、そそり勃っている。
「真田君……」
井上には、男性相手の経験などない。
出版社勤務で、そこそこにマスクも甘い彼は、相手の女性に事欠かなかったし、女性の柔らかな身体に欲望は覚えても、男性の硬い身体を抱きたい、ましてや、性器を愛撫したいなどと考えたこともなかった。
-----------それなのに。
今、真田の性器を前にして、井上は今までに感じたこともないほどの興奮を覚えていた。
全身がかっと熱くなる。
無意識に舌舐めずりをし、息を詰めて、井上は、真田のそれを口に咥えた。
途端に、真田の身体が震えた。
「………ッ……」
微かな息の乱れ。
ぞくぞくと歓喜が背筋を駆け上る。
彼が-------『皇帝』が、俺の愛撫で感じている。
倒錯した喜びが、井上を揺さぶった。
もっと、彼をいたぶってやりたい。
感じさせて、自分の意のままに身悶えさせ、誰も見たことのない彼の姿を見たい。
恥ずかしい姿を、曝してやりたい……。
井上はすっぽりと真田の怒張を咥え込んだ。
それは、厚く、堅く、歯で押すと、張り詰めた肉の弾力と、血流が逆巻く血管の蠢きが舌に伝わってきた。
淫猥な水音を立てて吸い上げると、真田の堅く筋肉の張り詰めた内股が、井上の顔を挟み込んで、細かく震えた。
鼓動に合わせてびくびくと脈打つ肉棒が、井上の口の中で跳ね回る。
舌を伸ばし、味蕾でざらりと裏筋を擦り上げ、亀頭の括れを舌先を尖らせてつついていく。
口の中に、唾液とは違う、生臭いような味が広がった。
真田の、先走りだ。
無我夢中でそれを強く吸い上げると、真田の内股が更に頭を挟み付けてくる。
その両脚をぐい、と広げて、井上は更に顔を股間に埋めた。
陰毛が鼻腔を擽ってくる。
苦み走った樹木のような体臭が更に濃くなって、汗の匂いが微かに混ざり、それは井上の背筋を痺れさせた。
顔を大きく上下に動かし、湿った水音を響かせて、真田の肉をねぶりあげる。
「……ぅ……ッッ……」
微かな、呻き。
ぞくぞくと全身が燃え上がった。
常に周囲を睥睨し、一段高みから、涼しい顔で尊大に見下ろしている皇帝の、あられもない、声。
真田の身体の震えが、大きくなる。
腹筋が蠢き、臍の形が微妙に変わる。
「………ッッッ!」
真田の手が井上の頭を掴み、短髪を引き抜くかのように引っ張ってきた。
鋭い痛みに顔を顰めながらも、歯に引っかかった雁首をがりり、と噛み、亀頭を喉奧まで吸い込むように強く吸い上げる。
口の中で、それが弾けた。
びくん、と脈打ち、次の瞬間、どくどくと咥内に青臭い濃い粘液が充満する。
思わず噎せて吐き出しそうになるのを抑え、井上は無理矢理にそれをごくり、と飲み込んだ。
数度勢いよく迸る白濁を、その度に飲み込む。
鼻につん、と精液特有の臭いが突き刺さり、口の中が粘つく。
もう、頭の中は理性など欠片もなかった。
湧き上がる欲望のままに、真田の脚をぐっと押しつけ、ベッドに押し倒す。
欲望を吐き出して幾分柔らかくなったペニスをねぶって口から離すと、舌を陰嚢に這わせていく。
真田が、息を飲むのが分かった。
ぱっつりと張り詰めた双球を舌で転がし軽く咥えてねぶると、更に舌を奧に勧める。
内股を広げたまま両腕に力を込めて、真田の胸に足がつくぐらい折り曲げると、ソコは井上の眼前に可憐な姿を見せた。
ひく、と微かに蠢き、井上の視線が分かるのか、恥ずかしげにほんの少し緩んだかと思うと、きゅ、と引き締まる。
濃い茶色の、綺麗に整った菊花。
井上はそこに唇を押し当てた。
口の中に溜まっていた精液と唾液の混ざり合ったねっとりとした体液を、菊口に流し込んでいく。
舌を尖らせて、きつくしまった肉の輪をつつき、体液を舌先に乗せて送り込む。
「…いのうえ、さん……」
初めて真田が、余裕のない声を上げた。
興奮が、一気に押し寄せてきた。
「黙って…」
自分が僅かでも優位に立っている、そう思うと、ぞくぞくと嬉しさが込み上げてきた。
もしここで、真田が冷静な声で、やめろ、と言ってきたら。
そうしたら、井上は即座に辞めただろう。
その辺の上下関係は井上にも分かっていた。
自分の負けだ。
あくまで、真田は『皇帝』。
彼の一声で、自分は支配されているのだ……。
が、真田の声は聞かれなかった。
唾液を十分に流し込み、舌先を無理矢理に押し込むと、そこはぬるり、と舌を迎え入れた。
微妙に蠕動する、熱い、粘膜。
(…………)
舌が痺れ、疼きが脳まで突き刺さる。
股間が、ズキン、と鋭く痛む。
これ以上、我慢できなかった。
顔を上げると、井上はもどかしげにスーツのズボンのベルトを外した。
カチャ、という音に、びくっとして真田が固く閉じていた瞳を開けた。
その視線を意識しながら、井上は前立てを開け、ズボンを下着事脱ぎ捨てて、腹につくほど反り返った赤黒く剥けた大人のペニスを晒した。
真田が、井上のそれを見た。
彼の内股が瞬時震えた。
視線が一瞬絡み合う。
こんな体勢にもかかわらず、真田の瞳は、猛禽類のように鋭かった。
僅かに乱れた前髪が、はらり、と瞳に掛かり、忙しく息をしながらも、瞳だけは深い氷のような色を湛え、それでいて、奧に欲情の潤みを見せていた。
欲情が一瞬、瞳の奧で燃え上がる。
真田は、視線を外した。
間髪を入れず、井上は真田にのし掛かっていった。
…真田も結構その気ですv
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