お気に召すまま 
《8》









「待てって言われて待つ男がどこにいるよ……」
くすくすと笑いながら、跡部が言ってきた。
「そ、そう言われたかて…」
「いいじゃねえか、俺とお前の仲だろ?」
「って、仲の意味がちゃうやん…」
「いちいち細かい事言うなよ……それより………」
忍足の太腿を両手で掴み、その中心---秘唇を眺めて跡部がごくり、と喉を鳴らした。
「……綺麗だぜ…」
「綺麗って………そうなんか?」
実は忍足は自分の変化した部分をろくろく見ていなかった。
元々女性とも付き合ったことがないのだから、全く未知の領域である。
「なんだ。……見てねぇのかよ?」
「……見るか、そんなとこ……」
「おい、折角女になったのに、自分のを見ねぇってのはねぇだろ?」
「別に……見たないし……」
「全く、つまんねぇ奴だな……」
呆れたように肩を竦めながらも、跡部が可笑しそうに笑った。
「まぁいいぜ……俺がじっくり見てやるからよ……」
「……跡部も見なくてええんやけど……なんや、恥ずかしいやん……」
「恥ずかしいのか……?可愛いぜ、忍足……」
また『可愛い』と言われて背筋が気持ち悪くて総毛立った。
思わず身体が震えた。
その震えが伝わったのか、跡部がくっと笑った。
「いい感じで濡れてやがる……とろとろだぜ……感じてたのか、忍足…」
卑猥な言葉を言われて、忍足は思わず赤面した。
「跡部っ……よう、そんな恥ずかしい台詞、言えるもんやな……」
「別に恥ずかしくないだろうが?本当の事だぜ……ほらな…」
---------クチュ。
ビクン……と一瞬忍足の背中が仰け反った。
なにか非常に柔らかくてとろっとした身体の一部に、堅い異物が触れてきたような感触。
例えて言えば、柔らかい生クリームケーキに指を入れて舐めようとした時のような。
「…な、ん……ッ」
「……感じてるじゃねえか、忍足……」
跡部が低い笑いを含んだ声で言ってきた。
「お前、自分のここ見たことねえんだろ……ほら、見ろよ……」
「え、ええって……見ないでええ……」
跡部が顔を上げて忍足の顔を覗き込むようにしながら言ってくる。
忍足は慌てて頭を振った。
自分でも自分のそこ---性器がどうなっているのか、---興味がないわけではないが………やはり怖い。
なんだか見たらショックを受けそうな気がする。
それに、どうせ数日女性の身体なんだし、今見なくても………。
…などといろいろ理由を付けて、忍足は跡部の視線から逃れるように目を閉じた。
「ちぇ、……純情なやつだな……」
跡部がくす、と笑った。
「まぁいいか……今日はとりあえず俺が見てやるからな…」
そう言うと、忍足のそこに指を伸ばし、ぴったりと閉じた綺麗な花弁を指で押し開いていく。
桃色の美しい花弁は、内部に蜜を滴らせながらゆっくりと開いた。
「それにしても、……さすが処女ってか……穴が見えねぇ…」
「…………いちいち説明せんでええって……」
余程局部の近くでしゃべっているのだろうか。
跡部の吐く息までもがなんだか敏感な部分にかかってきていそうで、忍足はもぞもぞと居心地悪く脚を動かしながら赤面した。
卑猥な言葉にかっと体温が上昇するような気がする。
「穴は見えねぇが、さっきからとろとろとよく涎を流すぜ……淫乱だな、忍足……こっちもか……?」
突如、まるで皮膚が剥けて傷になった部分を擦られたような、そんな激烈な感覚が忍足を襲った。
「なっ…ッ!」
思わず背筋を仰け反らせ、跡部が押さえている脚を突っ張らせて忍足は呻いた。
「はっ……いい反応だぜ、忍足……それに、ここも結構でけぇ……やっぱり元々のものがでかかったから、女に変化してもでけえのか…」
くすくす笑いながら跡部が更に忍足の花弁の先端の花芽に舌先を伸ばす。
先ほど、剥き出しにさせて、軽く舌でつついてみたのだ。
ほんの少し触れたぐらいなのに、びくっと全身が震えるぐらい反応してきたのが、跡部にとっては予想外である。
「忍足、………ますます抱きたくなったぜ…」
「…ッッ!」
突如、電撃が走り抜けた。
忍足は背筋を仰け反らせて足指をピン、と突っ張らせた。
この感覚は……。
自分でペニスを扱いている時の感覚に似ていなくもないが…。
だが、それよりもずっと繊細で研ぎ澄まされた感覚だ。
びりびり震えるような、痛いような。
「あと、べッ…ちょぉ待てや…ッッ!
言い終わらないうちに更に激烈な刺激が襲って、忍足は喉を詰まらせた。
「敏感だな、忍足………ちょっとつついただけで、もうこんなに濡らしてやがる…」
蜜壺からとろりと愛液が溢れ滴り落ちてきたのを至近距離で眺めて、跡部が満足げに笑った。
「ンなに濡れてるなら、…痛くなくできそうだぜ……」
そう言うと跡部は右手の人差し指を花弁の間にすぅと滑らせて、蜜壺の入り口付近をまさぐった。
柔らかく濡れた粘膜を丹念に指で押し、狭く閉じた入り口を突き当てる。
「…指が蕩けそうだぜ、忍足……」
くす、と笑いつつ、濡れた蜜を指に絡めてくちゅ、と軽く水音をさせつつ、指をすう、と蜜壺に挿入していく。
「……………」
跡部が自分の局部のあたりで何か盛んにやっているのは分かったのだが、実際何をしているのか分からず、忍足は眉間に深く皺を刻んで足を開いたままシーツをぎゅっと掴んでいた。
どうやら感じる部分をかなり刺激されているようなのだが。
どこをどうされているのか分からずかなり心許ない。
(や、やっぱり見た方がええんかな…)
自分の身体の一部なのだから、知らないというのもへんだ。
(でも、見るのいややな……ショック受けそうや……)
男の時のものならいやというほど見ているのだが、そうでない部分というのは……。
「……痛いか?」
その時跡部が顔を上げて話しかけてきたので忍足ははっと我に返った。
「い、いや、痛くないけど……」
「指が1本ぐらいならもう大丈夫ってわけか…」
「……指、入れてるんか?」
「なんだよ、随分気楽なやつだな、お前…」
跡部が肩を竦めた。
「さっきは随分痛がったからな、慎重に優しくやってやってるんだぜ? まぁ、痛くねぇってのはいいことだぜ」
「痛ないけど……へんな感じや…」
「そりゃそうだろ……指入れてるんだからよ…」
笑いながら言うと、跡部は一旦人差し指を抜き、濡れそぼったそれをぺろり、と舐めた。
「……美味いな…」
「な、跡部っ…」
とろりと濡れた指を跡部が舐めたのを見てさすがに忍足は頬を赤らめた。
なんだか跡部がものすごくいやらしいというか……少なくとも、いつもの跡部とは違って見える。
考えてみると、忍足と跡部は親友とは言え、性関係の話題は今まで一度もしたことがなかった。
跡部の方で持ち出してこなかったというのもあるし、忍足も興味がなかったというのもある。
跡部の派手な女性関係についても、回り回って自分の耳に入ってくる噂で聞いているだけだったりする。
だから、実際、こういう場面の跡部がどういう風な行動をするか、とか。
どんな言葉を言い、どんな感じで迫ってくるのか、など、想像したこともなかった。
(……やっぱプレイボーイなんやな…)
いちいちこっちの反応を見たり、恥ずかしがらせようとするあたり、小憎らしいが慣れている、と思わざるを得ない。
面白がっているというか、楽しんでいるというか…。
頬を赤らめ視線を逸らして忍足がそんな事を考えていると、不意に跡部が身体を起こし、ベッドを回って忍足の背後に来た。
「……な、なんや?」
自分の脚の間で動いていた身体がふっといなくなって忍足が戸惑っていると、背後からベッドに再度上がった跡部が、忍足の身体を抱き起こし、背中からぴったりと抱きしめてきた。
脚を広げ忍足を挟むようにして密着してくる。
自分の背中と跡部の胸が密着し、どきどきと熱く規則正しい鼓動が伝わってくるような感じがする。
「……なにするんや?」
なんとなく不安になって忍足が心細い声を出すと、跡部がくす、と笑った。
「別に…気持ちいい事しかしねぇから、そう心配するなよ」
笑って言いながら、す、と掌を動かして、忍足の滑らかな肩から脇腹、脇腹を通って腹へと回してくる。
重く垂れたたわわな乳房を下から掬い上げるようにして掌を当て、柔らかく揉みしだいてくる。
「……ン、ッ…」
乳首を親指でくり、と転がされて、甘い疼きが体内を走り、忍足は思わず唇を噛み締めた。
跡部は器用に左手で乳房を揉みながら、右手で忍足の両足を太腿を掴んで開いてくる。
「……これ見てみろよ…」
不意に大きく開かされた脚の間にきらり、と光るものが差し出された。
「……なんや?」
目線を向けて、忍足は息を呑んだ。
それは手鏡だった。
ちょうど、自分の局部を映すようにかざされる。
忍足の目には、鏡に映った自分の局部が-------すっかり隠れる所もなく飛び込んできた。
「……わッッ!」
急に見るのには刺激が強すぎた。
ぎょっとして忍足は黒い切れ長の瞳を見開いた。
「な、なんや…って、ちょぉ、やめいやッ!」
鏡を見せられ、そこに映った自分の股間の、黒々とした陰毛の茂みを視界に一瞬入れ、すぐに顔をぱっと背け、忍足は叫んだ。
「なんだ、自分のだぜ? ンなにいやがる事ねぇだろうが…」
とは言うものの、忍足の反応はある程度予想していたのか、跡部がにやりと笑った。
「ほら、見ろよ………綺麗だぜ?」
顔を背けていたのに、無理矢理左手で顎を捕まれ、力を込められ、前を向かされる。
背後からねっとりと耳朶を舐められ、ぞくぞくと総毛立つ。
「……見ろよ、忍足……」
眉を顰めたまま、忍足はしぶしぶ鏡を見た。
そこには、見慣れない局部局部が映っていた。
確かに、自分の身体の一部ではあるけれど、見知らぬ未知の場所だ。
柔らかく黒いふっさりと茂った陰毛。
そして、その下。
大きく脚を開いているせいか、ぱっくりと花開いている柔らかな桃色の肉襞。
目を見開いたままで、ごくり、と忍足は唾を飲み込んだ。
「俺がよく教えてやるからよ…見てろ…」
耳元で跡部の低く響く声がする。
「……………」
答えられず、忍足が硬直していると、跡部が鏡を左手に持ち替えて、右手を忍足のソコに進めてきた。
「ほら……お前の気持ちいい部分はこれだな…」
--------ビクッ!
右手の人差し指が、花弁の先端をつついてきた。
途端に忍足の身体が電流が流れたように震えた。
「ここが感じる部分だが……分かるか、忍足……気持ち、いいだろ…?」
「…………ちょ、やめ……ッッ」
「ふふふ、……悪くなさそうだな?」
そこをつんつんとつつかれるたびにびくびくと身体が跳ね、じんじんと疼いて息ができない。
忍足は顔を振り、目を固く閉じ、唇を噛み締めた。
「……どんな感じだよ、言ってみろよ……」
「ど、どんなて……へんな感じや……」
「へんなのか……?じゃぁ、やめるか?」
跡部の手がすっと離れた。
「……………」
どっと緊張が解けて、詰めていた息を、忍足ははぁ、と吐いた。
身体がじんじんする。
跡部に触れられていた部分から、じんわりとした熱が広がって、腰全体に伝わっていくようだった。
「…………」
なんとなくじれったい感じがする。
中途半端に感じる部分を擦られたせいだろうか。
痒いような、じっとしていられないような疼きがして、忍足はもぞもぞと腰を動かした。
もっと……してもらいたい気がする。
中途半端にやめられると、なんというか……うずうずする。
「………跡部………」
「……なんだ?」
跡部がしれっとして答えたので、忍足は思わず振り返って跡部を睨んだ。
「はは……どうだよ、…もっと触ってもらいたいか、忍足?」
「………分かっとるんなら……意地悪せんといて…」
羞恥で顔がかっと熱くなった。
うつむいてぼそぼそ言うと、跡部が灰青色の双眸をにんまりと細めた。
「じゃぁ、ちゃんと鏡、見てろよ…」
そう言うと跡部は、離していた指を再度忍足の花芽に触れさせた。
指を細かく震わせながら、ぷっくりとした芽を擦り上げていく。
「……ン、ッあ…ん、な、んやっ、へん……あ、あん……」
「いい声だぜ、忍足……しかも、こっちも…ほら、見てみろ…」
鏡を見ろと言われて、眉を顰めながらも視線を合わせる。
鏡の中のソコは、ピンク色に濡れそぼり、跡部の指を飲み込むように開いていた。
「ンなにとろとろだぜ。さっきから洪水みてぇに溢れてくる……淫乱だな…」
指が花弁を押し開いて下に移動する。
蜜の溢れる泉の部分にくちゅ、と淫猥な音を立てて沈み込み、指にねっとりと愛液をすくい上げる。
「ほら、凄いぜ、忍足……」
とろり、と糸を引いて垂れる液体に、忍足はかぁっと赤面した。
「いい女だぜ……俺も我慢、できそうにねぇ…」
自分の尻に堅く漲った男根が押し当てられているのを感じて、忍足はびく、と身体を跳ねさせた。


















さらにオヤジ化。